vol.25 2020年ワールドカップ優勝プロジェクト

文■座間健司

 

 2014年12月18日、20日に日本代表はクロアチアと2試合の親善試合を行い、1勝1分で終えた。僕はホームで戦う日本は今後のためにも、きっちりクロアチアに2勝しなければならなかったと考えている。

 2014年、日本はアジア選手権連覇を果たした。10回試合をすれば、まだ負ける回数が多いであろうイラン相手に決勝という一発勝負の舞台で勝利した。日本は2012年、ワールドカップ3回目の出場にして、決勝トーナメント進出を果たした。日本は世界の強豪国の一員になろうとしている。元ブラジル代表監督マルコスいわく「日本は強豪国の入り口に立っている」。しかし、今の日本は真の強豪国に似つかわしくないナイーブさを内包している。クロアチアとの第1戦ドローという結果がまさにそうだ。勝ち切れない。

 クロアチアは近年欧州で躍進する新興国だ。2012年自国開催の欧州選手権4位、2014年欧州選手権準々決勝敗退という戦績を残している。だが、彼らは決して強豪国ではない。2013年の欧州選手権予選ではスペインに0-10と大差で敗れ、2014年欧州選手権本大会ではグループリーグ初戦で3-3と引き分けた。パフォーマンスに波があり、力を安定して発揮できない。まさに新興国だ。ましてや今回来日したメンバーは絶対的なエースのダリオ・マリオビッチら2人の攻撃の軸を欠いていた(日本も逸見勝利ラファエルを欠いていたの事実だが)。欧州からの長距離移動もあり、コンディションも悪かった。1戦目も2戦目のように点差をつけて勝つべきだった。忘れてはならない。日本は2012年東京でブラジルと引き分けている。その結果からすれば、クロアチアでのホームでのドローは後退ではないだろうか。

 正真正銘の強豪国になるためには勝ち癖をつけなくてはならない。内容がどうでもいいとは言わないが、チームとしてどんな低調なパフォーマンスでも勝利する。きっちり試合を締める。そういう勝ち方を知っているチームに日本はそろそろ変貌しなければいけない。自分たちのスタイルを貫いて、最低限必ず勝利をおさめる。特に自分たちよりも力が劣る相手に対しては絶対だ。そうならなければ「強豪国の入り口」から前には進めない。

 今の日本はとにかく勝利を積み重ねて、絶対に揺るがない自信と信頼をその青いユニフォームに縫いつけなければならない。次のワールドカップでベスト8を目指すというのなら、ホームで2試合あるとはいえ、欧州新興国とのゲームに負けていられないのだ。

 日本は2020年に自国開催が有力なワールドカップが控えている。2016年のワールドカップを終えた頃に強豪国の地位を確実なものとしなければ、その後の4年間でこのスポーツをリードする2大国のブラジル、スペインの牙城を崩すという"挑戦"をスタートすることはできない。

 2007年、Fリーグが開幕時に当時のFリーグの大仁邦弥COO(最高執行責任者)は開幕から10年後の「2016/2017シーズンを、10年目のマイルストーンとして、具体的な目標を設定をして」と話し、こう挨拶を締めくくっていた。

「目標のひとつは、2016年までにフットサルの愛好者を400万人に増やすということ。ふたつめは、2016年FIFAフットサルワールドカップを日本で開催することを目指し、その大会で日本は優勝を目指すこと」

 2014年に万全ではない新興国にホームで引き分けているようでは、2016年でのワールドカップ制覇は限りなく難しい(僕の間違えであれば、もちろん幸いなことだ)だろう。当時の大仁COOが発した挨拶からは全てが4年遅れとなるが、2020年に名古屋での開催が有力なワールドカップでの優勝は現実的な目標として代表チームだけでなく、その周りの全ての人が揺るぎない共通認識として共有しなければならないのではないか。それゆえに2015年は「2020年ワールドカップ優勝プロジェクト」という5ヵ年計画をまずはミゲル・ロドリゴ監督を音頭をとって、始まることを期待したい。まずは2016年のワールドカップイヤーの具体的な目標を設定し、その道筋を明確につけてもらいたい。

 日本が名古屋で2020年にワールドカップを掲げる。そんな美しい光景を見たければ、厳しいなって思うくらいに日本代表に各々が要求をぶつけていかなければ強くならない。そういう環境が人を変え、チームを変えるのだから。




プロフィール

座間健司
1980年7月25日生まれ、東京都出身。2002年、東海大学文学部在学中からバイトとして"フットサルマガジンピヴォ!"の編集を務め、卒業後、そのまま"フットサルマガジンピヴォ!"編集部に入社。2004年夏に渡西し、スペインを中心に世界のフットサルを追っている。2011年フットサルマガジンピヴォ!休刊。2012年よりフットサルを中心にフリーライター&フォトグラファーとして活動を始める。ブログ(http://blog.zamakenji.com)でもスペインフットサルの情報を発信中。電子書籍『スペインフットサル 2013-2014シーズン総集編 戦術・戦略・セットプレー徹底解説』好評発売中。また有料メールマガジン(http://www.worldfutsalmagazine.com)も配信中。twitterアカウントは『@KenjiZama』。

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