vol.16 「欧州クラブ王者も“王国”抜きには語れない」

文■座間健司

 UEFAフットサルカップ決勝ラウンドが4月24日から26日に開催された。UEFAフットサルカップは各国のリーグ戦王者だけが参加できる大会で欧州ナンバーワンクラブを決める。サッカーで言うUEFAチャンピオンズリーグのフットサル版だ。

 決勝ラウンドはその前のラウンドを各グループ首位で抜けた4チームがひとつの都市に集まり、3日間で準決勝、決勝をこなす。決勝ラウンドに残ったのは昨シーズンの王者カザフスタンのカリアット・アルマティ、ロシアのディナモ・モスクワ、スペインのバルセロナ、そしてアゼルバイジャンのアルサの4チームだ。今シーズンの決勝ラウンドはアルサの本拠地、アゼルバイジャンの首都バクで開催された。

 決勝はディナモ・モスクワ対バルセロナという2012年と同一カードとなった。2年前はバルセロナが勝利し、クラブ史上初めて欧州王者となった。一方のディナモ・モスクワは2006年に王座を勝ち取っているが、それ以来、欧州王者に返り咲けていない。ロシアリーグ王者は3シーズン連続で決勝の舞台に立っており、3度目の今回こそトロフィーを持ち帰りたいと意気込んでいた。

 実力が拮抗する両者の決勝は40分では決着がつかず、2-2のまま延長戦へ。延長前半に1点を決めたバルセロナが、延長後半もディナモ・モスクワのパワープレーを封じるだけではなく逆に2点を決めて、5-2で勝利した。バルセロナが2012年に続き、2度目となる欧州王者に輝いた。ディナモ・モスクワはバルセロナよりも決定機が多かったが点に結びつけることができなかった。3シーズン連続で決勝で敗退した。

 決勝ではスペイン、ロシアという欧州を牽引する2大国のビッククラブが相まみえたが、決勝ラウンドに参加した選手の国籍を集計すると欧州以外の国の名が浮かび上がってくる。

 ブラジルだ。

 各チームの登録メンバーは14名で決勝ラウンドには合計56名の選手が登録されていた。その中で最も多く登録されていた選手の国籍はブラジルだった。18人だった。次に多かったのはスペイン、ロシア、イタリア、グルジア、アゼルバイジャンのそれぞれの国籍を持つブラジル人で15人いた。二重国籍を持つブラジル出身者だ。3番目に多かったのはスペイン国籍で8人、次にロシア6人、カザフスタン4人、アゼルバイジャン2人と続く。56選手のうち実にブラジル出身の選手は33人もいた。

 バルセロナにはブラジル出身のスペイン国籍を持つフェルナンダウがおり、イタリア国籍を持つサージがいる。さらにガブリエル、イゴール、ウィルデ、ディエゴの4人の国籍はブラジルだ。

 ディナモ・モスクワにはゴレイロのグスタボ、ピヴォのシリロ、アラのプーラがロシアの2重国籍を持つブラジル人で他にロムロ、ナンド、タトゥー、パウリーニョ・ヤマダ、フェルナンジーニョと4人のブラジル人が在籍している。

 カザフスタンのアルマティは自国人間が4選手だけで、ブラジル人選手は8人だった。アゼルバイジャンのアルサも自国出身者が2選手でアゼルバイジャンの国籍を持つブラジル人が6、フォーリアらイタリア国籍を持つブラジル人が2人いた。

 欧州クラブ王者を巡る戦いも南米にあるこのスポーツの“王国”抜きには語れない。


バルセロナに所属する24歳のブラジル人アタッカー、ディエゴ。2014年1月にバルセロナに入団。UEFAフットサルカップ決勝では貴重な逆転ゴールとなる2点目を決めた。



プロフィール
座間健司(ざまけんじ)
1980年7月25日生まれ、東京都出身。2002年、東海大学文学部在学中からバイトとして"フットサルマガジンピヴォ!"の編集を務め、卒業後、そのまま"フットサルマガジンピヴォ!"編集部に入社。2004年夏に渡西し、スペインを中心に世界のフットサルを追っている。"2011年フットサルマガジンピヴォ!"休刊。2012年よりフットサルを中心にフリーライター&フォトグラファーとして活動を始める。

 

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