vol.15 「ファウルは犯すものではなく、使うもの」

文■座間健司


 欧州選手権が1月28日にベルギーで開幕した。スペインは29日にクロアチアと初戦を戦い、3-3と引き分けに終わった。
 クロアチア戦の前半終盤、スペインのタイムアウト。17分20秒、クロアチアに2失点目を喫した直後だった。ベナンシオ監督が作戦ボードを使いながら、檄を飛ばす。そしてチームがベンチから離れる時、ゴレイロのラファが言った。
「ファウルが残っている」
 試合は1-2でスペインは負けていた。欧州選手権4連覇中の王者はパスを回し、主導権を握っていたが、フィニッシュにうまくつなげず。逆にクロアチアにカウンターから再三決定機をつくられ、しまいには2点も失っていた。自陣で待ち構え、ボールを奪った後にカウンターを仕掛けることだけに専念していたクロアチアの思い通りの展開だった。
 カウンターに手を焼いていたが、スペインは前半1度もファウルをしていなかった。だからラファは言った。もしカウンターを喰らったらファウルを使って止めればいい。まだ自分たちにはファウルが残っているのだから。ファウルを有効に使おう。
 ファウルは犯すものでなく、使うもの。そういう考え方がある。5回のファウルをいかに効果的に使うか。フットサルというスポーツはバスケット、ハンドボール同様にカウンターからゴールが生まれる可能性が最も高い。相手がカウンターを仕掛けそうになった時、後方からシャツを引っ張る。ファウルはひとつ増えるが、失点の可能性はなくなる。
 クロアチアがカウンター狙いなのは明確だった。ダリオ・マリノビッチら優れた個の力を最大限に活かそうとする。高いスキルと屈強な身体を持つクロアチアの選手がトップギアに入ってしまったら、いかにスペインでも止めるのは難しい。スピードにのらせてしまい、数的不利な状況となり、失点の可能性が高いのならば相手の攻撃機会を中断させるためにファウルを使えばいい。
 ファウルは犯すものではなく、使うもの。幼少期に戦略的ファウル、マリーシアとかそんな指導はもちろん不要だが、勝負にこだわるトップカテゴリーでは欠かせないインテリジェンスだ。トップカテゴリーのゲームを観戦する時は各チームのファウルに注視していただきたい。いつもとは違うアングルからゲームを見ると新たな発見があるかもしれない。経験がある狡猾なチームはファウルを有効に使っている。



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プロフィール
座間健司(ざまけんじ)
1980年7月25日生まれ、東京都出身。2002年、東海大学文学部在学中からバイトとして"フットサルマガジンピヴォ!"の編集を務め、卒業後、そのまま"フットサルマガジンピヴォ!"編集部に入社。2004年夏に渡西し、スペインを中心に世界のフットサルを追っている。"2011年フットサルマガジンピヴォ!"休刊。2012年よりフットサルを中心にフリーライター&フォトグラファーとして活動を始める。

 

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