はじめまして、今月からコラムを書かせていただくことになったライターのタカダです。
えー、ワタクシ、涙もろく、暑苦しい人間です。
酒の席では語ります。
酔ったフリをして語ります。
相手がゲンナリするほど、語ります。
だから普段の原稿では控えているんですが、ここでは熱く書きます。
あまり得意ではありせんが、あえてポエム風、エッセイ風に書きます。
よろしくお願いいたします。
では、本題。

第1回「チケットの値段」

これは、とあるプレシーズンマッチでの出来事。

そのゲームの前半は、とにかく退屈な内容だった。

たしかに、40分プレーイングタイムのフットサルでは、前半はこう着状態になることは少なくない。

しかも、プレシーズンマッチ。

大事なのは、結果よりも内容である。

プレシーズンとは、チーム作りの期間なわけで、ほとんどの監督がプレシーズンマッチを本番に向けたテストだと位置づけている。

いろいろな戦術やセットでトライして、完成度と修正点を確認し、収穫と課題を得てチーム作りにつなげるのがプレシーズンマッチの本分だ。

選手も選手で、試されていると感じているだろうし、ケガはしたくはない。

フィジカルコンディションも、まだまだだ。

試合内容が退屈だったことを、無理矢理にでも納得できないわけじゃない。

しかし、残念だった。

かなり、残念だった。

それは、その試合に、感情がなかったからだ。

後半になり、アウェイチームのキャプテンが試合に感情をもたらしたことが、わずかな救いだった。

だから、聞いた。

そのキャプテンに聞いた。

「今日のチケットいくらか知っていますか?」、と。

底意地の悪い質問だ。

でも、その選手は… 「1,000円」。

と、即答した。

知っていたのだ。

そして、熱を込めて続けた。

「やっぱりね、そういうことも考えないと。練習試合で無料ならいいけど、お客さん呼んでお金払ってもらってやっているんだから。

 僕も前半は、すごくもどかしかった。Fリーグも3年目になって選手ももっとそういうことにこだわらないといけない。上手い部分とか、すごい部分を見せるのもそうだけど、何よりも最初は選手が一生懸命やることだと思うんですよ。

 取られた戻るとか、そういうところで一生懸命やるから、1点2点が価値あるものになってくると思うんですよ。適当にミスって『あー入れられちゃった』ってやってたら、絶対に誰も応援しないと思うし、お金払って見に来てくれているんだから、もっとやらないと。

 だから、『もっと戦えよ。遊びに来ているんじゃないから』ってハーフタイムに選手達に言ったんです。それが僕の役目だと思うし。 そういう機会でやっているんだから、それをやらなかったらレベル上がんないですよ、日本のフットサルの」

「見に来てくれる人の為に」と話すのは簡単だ。

しかし、それを言い続けることは難しい。

そして、もっと難しいのは、プレシーズンマッチのアウェイゲームが終わったあと、記者にチケットの値段を聞かれて、答えることだ。

それができたそのキャプテンは、価値のある選手だと思う。

10年足らず、アマチュアスポーツを観てきた僕には、本物のプロがなんなのか、おぼろげにしかわからない。

そのキャプテンの志が、真のプロフェッショナリズムなのかどうかもわからない。

きっと、クリスチャーノロナウドは、チケットの値段なんて知らないだろう。

でも、今のFリーグに必要なのは、そのキャプテンのような人材だと思う。

ロマンだと笑われるかもしれないが、僕は、全てのFリーガーにそうあってもらいたい。

で、かなり焦らしたが、そのキャプテン。

先の中国遠征でも、日本代表のキャプテンマークを巻いていた。

小宮山友祐。

器用ではないが、お金を払ってもいいと思える選手である。

高田 宗太郎プロフィール
1982年1月6日生まれ、神奈川県出身。2004年春、東海大学工学部を卒業。在学中にフットサルの魅力に取り憑かれ 、卒業と同時に当時唯一のフットサル専門誌だったフットサル マガジンピヴォ!の編集者になる。2006年春からは編集チーフを任され、2008年3月に4年務めたピヴォ!を退社。以降、フットサルライターとして活動中。モットーは「フットサルに対して謙虚であれ」。
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