低迷と復活の大分

低迷の原因は攻撃力の低迷

今シーズンのFリーグは、開幕から3連勝しスタートダッシュに成功したと思われた名古屋と浦安が4、5節と揃って連敗し、逆に3節で1勝1分の大阪が首位に立ち、同じく3節で1勝だった府中が名古屋を得失点差で上回り3位に浮上した。

上位が変動する一方、昨シーズン3位の大分が開幕から3試合未勝利で、3節終了時で最下位に沈んだ。だが、その後2連勝し、順位を6位まで上げてきた。

昨シーズン、大分は開幕から4連勝と好調だった。このときの好調の要因は攻撃力で、1試合当たり5.75点と高い得点力と4試合中3試合で先制していた。逆に、その後4連敗を喫したが、その4試合ではすべて先制され、平均得点も2.25と、連勝中とは顕著な違いがあった。シーズン通して分析しても、先制した場合の勝率は78.6%とリーグ2位で、前半をリードして折り返した場合では90.9%とリーグトップだった。

今シーズンもこの傾向は変わらず、開幕3試合では平均1得点ですべて先制された。しかし、その後の当時首位の浦安と2位名古屋との連戦では平均3.5得点で先制して勝利している。

勝てない4つの理由

つまり、先制すれば強い大分だが、今シーズンそれができなかったのには4つの理由がある。

1つ目はメンタルコンディション。定永らベテランが加入したとはいえ、キャプテンが仁部屋であることからもわかるように、チームを牽引する精神的支柱がいないのが大分の欠点である。だからこそ、選手全員でカバーして盛り上げようとするチームワークの良さが大分には備わっているのだが。そのため、劣勢に立たされるとどうしても手堅く消極的になっていた。

それに影響していたのがパス回しだ。ボールキープ、コントロールに長けた選手が多い大分だが、それが仇となり消極的になって足元へのパスが多くなり、相手の裏を取る動きが減ってしまった。そのため、低い位置でのポゼッションになってしまい、シュートチャンスが少なくなった。

シュートが少なくなれば、チャンス時に焦ってしまうのが自然の流れ。決定機でフリーな選手がいるにも関わらず、無理にシュートを打ったり、逆に難しいパスを出したりする場面が多く見られた。

最後の4つ目はポジショニングである。昨シーズンまで小檜山譲(現府中)や西村竜司(引退)ら守備のスペシャリストがいたためにポジションがずれることが少なかったが、今シーズンはディドゥダやチーニョ、奥田亘らが前線に飛び出すため、小曽戸允哉や仁部屋和弘が後方に回る場面が多い。このときに失点を招くケースがあり、オーシャンアリーナカップの準決勝の大阪戦ではカウンターを食らい小曽戸がペナルティエリア内でエビーニョを倒してPKを取られ、3節の町田戦では自陣ゴール前で金山友紀のマークを外して失点された。町田戦での失点はその前にディドゥダが横江怜に抜かれるなど、小曽戸の対応の前に問題もあったが、守備が得意でない選手を後方に持ってくるにはリスクが高い。

改善の兆しが見えた町田戦

町田戦で3連敗となったが、この試合では終始大分が試合をリードし、シュートチャンスもかなり作り、改善の兆しが見えた。それが次節の浦安戦に生きた。浦安が前からプレスをかけ、間に入った選手にはフィクソが前に詰めて止めるため、裏のスペースがかなり空いていた。これまで裏をあまり使えなかったが、浦安の積極策で大分は裏を狙う事を意識してできた。

これまで浦安には相性が悪かったものの、先制できた事で、「オーシャンアリーナカップの時のような雰囲気で戦えた」(奥田)と大分は必勝パターンに持っていくことができた。

この勝利で選手たちに勢いがつき、名古屋戦では体を張ったプレーで守り抜き、昨シーズンの26節以来、公式戦では11試合ぶりの無失点となった。

先手必勝とバランス、体を張った守備が鍵

大分が今後、上位進出を狙うには、先制点を取って前半をリードして折り返す事が必要で、そのためにはテンポ良くパスを回しながら、相手の裏を取れるかにかかってくる。オーシャンアリーナカップで好プレーを見せた新加入の中村友亮や奥田、アンドレらの飛び出しで相手を後ろに押し込んで中盤にスペースを作れれば、仁部屋や小曽戸、ディドゥダらのドリブル突破でチャンスを広げられるだろう。

そして、守備では名古屋戦で見せたチーム全員のカバーリングを継続できれば、失点も減らせる。 実力は昨シーズンで実証済みなので、「今シーズンの大分に注目」というフレーズは失礼だが、上位陣が混沌とする中に大分が食い込んでくるのは間違いない。