代表に見る成長と課題

1年間の集大成となる試合

2011年6月11日、フットサル日本代表がチェコを迎えてオーシャンアリーナで対戦した。国内では約1年ぶりだが、その間、AFCフットサル選手権、ポルトガル&スペイン遠征、中国での4カ国トーナメントなど、精力的に活動してきており、この日と14日に行われる2試合が日本代表のこの1年間の集大成となる。

昨年の欧州選手権で3位となったチェコだが、今回は主力の半分が来日せず1.5軍程度なだけに、「この程度ならばしっかり勝たないといけない」と星翔太が語るように、昨年のロシア戦のような結果になってはならなかった。

露見した2番手の課題

この日のスタメンは星、高橋健介、上澤貴憲、小宮山友祐、藤原潤の5人。星と高橋の前の2枚と上澤と小宮山の後ろの2枚が一緒に出る事はこれまでほとんど無かったが、川原永光、北原亘、木暮賢一郎ら名古屋組が招集されていないこともあり、現時点ではこの5人がベストだろう。

開始直後は星と高橋がアラからピボへポジションを入れ替えて敵陣奥深くに入り、それに合わせて上澤らが前線にピボ当てをする。前線で星や高橋は勝負に出ることもあれば、後方から上がってきた小宮山らに落としてシュート、もしくは逆サイドへ展開して新たに攻撃を組み立てる。テンポの良い攻撃で立ち上がりは日本がペースをつかむ。

そして、前半4分、上澤からのゴール前に入った高橋へのパスが相手DFに当たるも、そのこぼれ球にいちはやく星が反応し、ゴール左へシュートを決めた。綺麗に崩したわけではないが、ボールを前へ供給できた事と、ゴール前での攻守の勝負ができていた事がゴールに繋がった。

しかし、次に出場した、渡邉知晃、仁部屋和弘、滝田学、村上哲哉のセットでは、前のセットとは異なり、前線での的が渡邉しかおらず、他の3人も渡邉へのフォローも遅い。幸運にもチェコも引いた守備のため、日本は中盤でパスを繋げて主導権を握っているように見えたが、シュートまでなかなか持ち込めない。 もたついた状況を変えられないまま時間が過ぎ、前半17分には小曽戸允哉の不用意なパスをカットしたペトル・オリバにドリブルで持ち込まれ同点に追いつかれてしまう。

成長した星と逸見

それでも、「前半に追いつかれたが、以前ならあっさりさらに失点していた」とミゲル監督が試合後にチームの成長を誉めたように、前半を1-1で終えたのは大きい。後半になると一方的な日本のペースになる。その原動力となったのが、若手の逸見勝利ラファエルだった。

「チェコは1対1のフォローが少ないから、縦に仕掛けろ」と監督から指示された逸見は、中盤の左サイドで1対1を積極的に仕掛ける。前半に仕掛けた1対1はチェコに止められたが、後半1分に仕掛けた2度目のドリブルは見事に抜き去りファーサイドの高橋へ決定的なスルーパスを送った。この突破でチェコは逸見のドリブルを過剰に意識してしまい、その後、逸見はキックフェイントやパスでチェコを手玉に取り、試合を完全に支配した。

「先に2点目を入れた方が勝つと思っていた」と試合後にチェコのトーマシュ・ノイマン監督が語ったが、チェコは移動の疲れが出て、後半は日本の一方的な展開となった。

26分には上澤がドリブルでGKと1対1となり、28分にはCKからファーサイドでフリーの渡邊がボレーシュートを放つなど、日本に決定的なチャンスを作っていた。32分には、左サイドの上澤から右サイドの仁部屋へ、そしてゴール前ファーサイドでフリーで待ち構えていた小宮山へ綺麗にパスが通るも、小宮山が綺麗に外してしま。 なかなかリードできない日本だが、均衡を破ったのもやはり星だった。中央で相手ボールをカットした星は1人で持ち込み左隅に決める。このゴールのわずか30秒後には、GKからのスローで飛び出した星が前線の上澤に送ると、上澤がGKとの1対1を絶妙なループシュートで勝負を決めた。

スペインではチーム事情もあり思うような活躍ができなかった星だが、前線でのキープ力や力強さ、そしてゴールへの貪欲さなど、スペインでの経験が良い方向に出ていた。

終盤、チェコもパワープレーで反撃に出るが、パスコースを探しながらで左右の揺さぶりが遅く、シュートも少なかったため、「淡白だった」(星)と日本は完全に抑え、逆に自陣でボールを奪った高橋がロングシュートを決め、4-1で勝利した。

不在の木暮と北原にかかる期待

「今日の選手のパフォーマンスには満点をあげたい」とミゲル監督は語った。確かに、この試合スタメンだった4人はどの国と対戦しても勝負になる程度の力を持っていると思わせる出来で、同点に追いつかれた後も引きずらずに後半につなげられた点ではこれまで見られなかった成長が伺える。

しかし、前半の2番目に出たセットのようなミゲル監督がこれまで構成してきた、ピボ、ドリブルできるアラ、攻守のバランスが取れるアラ、相手のピボに力負けしないフィクソの4名で戦うには課題が残った。

「監督から『小宮山と一緒に出るときは、アラぎみにプレーするように』と言われているが、最近そういうプレーをしていないので前に絡む事を意識しているが、難しい。」(上澤)と攻守の両方がこなせるアラが日本には不足している。村上や滝田も守備では小宮山に、攻撃では上澤にそれぞれ及ばない。その点、今回召集されなかった北原亘にかかる期待が大きい。

さらに、この試合で星とともに最も活躍した逸見だが、彼が活躍したのにはドリブル突破だけでなく、パスやゲームを組み立てる力があったからだった。ライバルとなる仁部屋や小曽戸も突破力では引けを取らないが、この部分では逸見に劣る。

星と高橋をセットとして考えた場合、渡邊という日本には珍しい前線で力負けしないピボを生かすにも、相棒が必要だろう。この試合だけで判断するなら逸見が他を寄せ付けないほどリードしているが、やはり今回召集されなかった木暮と比較すると、突破力では逸見だが、攻撃を組み立てる点では木暮の方が数枚上手である。


結果は完勝で多くの選手が持てる力を出せた良い試合だった。しかしながら、良い意味で課題が浮き彫りになった試合でもあった。