リーグを制すためのポイント

名古屋に勝つだけではリーグ制覇はできない

Fリーグ2010は名古屋が圧倒的な力を見せつけ、リーグ4連覇を達成した。しかも、日本王者に満足せずに、来シーズンに向けて、インテル(スペイン)から元ブラジル代表のマルキーニョ、花巻からは日本代表の渡邉知晃らを獲得した。

Fリーグを制するにはこの名古屋を上回る事が絶対条件になるが、最も重要な事は彼らに勝つだけでなく、1シーズン通してどのクラブにも勝ちきる事だ。これは大阪を見れば一目瞭然である。大阪は過去3回のオーシャンアリーナカップのうち名古屋に2度決勝で勝利し、連覇を達成した。それだけでなく、昨シーズンのリーグ戦でも名古屋に2勝1敗と勝ち越したが、最終成績は名古屋から勝ち点差19も離された5位に終わった。

このことからも、名古屋に勝つだけではなく、常に勝ち切り続ける事の重要性がわかるだろう。

ポイントは守備力、決定力、ポゼッションの3つ

リーグ戦を戦い抜く上で必要なのが、安定した守備力と攻撃における決定力、それと自分たちのペースで戦う時間を長く持つためのポゼッションの3つである。この3つをクラブごとで比較するには、守備力は失点数や被シュート数、失点/被シュート数で、決定力は全シュート数に対する得点数の割合、ポゼッションはシュート数からおおよその傾向がつかめる。

1試合当たりの成績と名古屋との勝ち点差と名古屋戦の成績

クラブ
シーズン
シュート数
得点率
得点/シュート
失点率
被シュート数
失点/被シュート
名古屋との
勝ち点差
名古屋戦の
勝ち点
名古屋
2007
31.7
4.7
14.7%
1.57
23.4
6.71%
浦安
32.9
3.8
11.4%
1.86
28.9
6.43%
6
1
名古屋
2008
33.1
4.7
14.1%
2
20.8
9.63%
浦安
28.2
4.0
14.2%
2.38
33.0
7.21%
2
6
名古屋
2009
28.3
4.0
14.1%
2.15
18.9
11.40%
町田
23.5
3.6
15.5%
3.11
31.3
9.93%
18
1
大阪
27.0
2.5
9.3%
1.85
18.9
9.81%
22
0
名古屋
2010
30.6
5.3
17.2%
2.07
20.4
10.13%
神戸
28.3
3.5
12.4%
2.93
24.9
11.77%
17
0
大分
28.6
4.0
14.1%
3.15
28.0
11.25%
18
3
府中
23.5
3.3
13.9%
2.52
27.2
9.26%
19
3
大阪
24.8
2.5
10.0%
2.48
19.8
12.54%
19
6
名古屋
平均
30.9
4.6
15.0%
1.9
20.9
9.5%

過去4シーズンを振り返ると、名古屋と勝ち点差が一桁以内だったのは1年目と2年目の浦安しかない。この2シーズンの数値を名古屋と浦安で比較すると、2007シーズンではシュート数や失点/被シュート数で、2008シーズンでは得点/シュートと失点/被シュートで名古屋を上回っている。浦安がこの数値を残せたのは、シュート数では個々の能力の高さに加えて、時間を使ったパワープレーが、決定力に関しては小宮山友祐や藤井健太(元町田)らの精度の高さ、失点/被シュートは、川原永光を中心とした守備力が原因と考えられる。

また、2009シーズンにおいては町田の得点/シュートと失点/被シュートで名古屋を上回ったが、これは当時の引いた守備からのカウンター攻撃の戦術がはまった事を証明している。大阪にいたっては、失点数と被シュート数、失点/被シュートと守備におけるすべての点で名古屋を上回っているが、これらは元々の組織的な守備力よりも、この年から加入したイゴールによるものが大きい。

浦安は2008シーズンで監督問題や選手を引き止められなかったために、志半ばで終わってしまったが、町田と大阪は、今シーズンも継続できればリーグ制覇も夢ではなかっただけに、両クラブとも監督がクラブを去るほど崩れたシーズンとなってしまったのが悔やまれる。

肉薄期間を一時期から全体に

今シーズンの上位クラブのこれらの数値を見ると、大阪は被シュート数、府中が失点/被シュート数で名古屋を上回るものの、シュート数や得点/シュート数、失点数などは大差がついているのがわかる。だが、これをさらに絞り、今シーズンの好調だった時だけで限定すると、失点/被シュートなどで名古屋を上回ったり、近い数値が見られる。

神戸に関してはシーズン前半、府中は終盤に調子を落としていただけに、かれにシーズン通してこの数値を保っていくことができたならば、名古屋を上回れた可能性もあるだけに、来シーズンはこの時期をどれだけ延ばせるかがポイントになるだろう。

1試合当たりの成績

クラブ
時期
シュート数
得点率
得点/シュート
失点率
被シュート数
失点/被シュート
神戸
3順目
27.1
4.1
15.1%
2.44
25.5
9.57%
府中
2順目
21.6
3.7
17.1%
2.22
26.4
8.41%
名古屋
全体
30.6
5.3
17.2%
2.07
20.4
10.13%

余談になるが、この時期の両クラブには偶然にもベッチーニョが在籍していた。彼がプレーしていた事が好調の原因と短絡的に結びつけることはできないが、可能性のひとつとしては十分考えられる。ただ、好調だった府中がわざわざ放出したのにも理由があるはずだから、取捨選択は難しいところだ。