ハードルを上げた男
ゴレイロの重要性をわからない日本
これまで日本のゴレイロといえば、川原永光(名古屋)が筆頭で、そのほかには反射神経が良い定永久男(名古屋)や長身を生かしたセービングが持ち味の石渡良太(町田)、足元に優れた青柳佳祐(大分)、キックとスローと笑いのセンスに優れた阿久津貴志(湘南)などがいた。
しかし、他のポジションは外国人が来日して日本人との違いを見せつけていたが、このポジションにおいては選手が来日することすらなかった。それはコミュニケーションの問題が大きいが、ゴレイロの重要性を日本人が理解していなかったとも考えられる。現にゴレイロコーチをミゲル現日本代表監督だけでなく、サッポ元日本代表監督も求めていたが、処々の理由でかなわなかったように、日本と海外で重要度の違いが伺える。
世界一の選手、ルイス・アマド
その結果、「世界との差が開きすぎる」と外国人監督やメディアが語っても、それが本当なのか、そして本当だとしても差はそれほど開いているのか、想像することができなかった。
ミゲルやタイ代表監督のプルピスが「世界一の選手はファルカンでもなく他の誰でもなく、ルイス・アマドだ」と言っていた。幸いにも彼のプレーを生で何度か見たことがあるが、残念ながら彼の凄さを表現することが難しい。しいて言えば、試合中にスーパープレーをあまり見せないというところだろうか。世界一ハイレベルなスペインリーグでも淡々とプレーし、強烈なシュートもあっさり止めるし、鋭い判断で飛び出しも的確すぎて、他のゴレイロならピンチになる場面もピンチと感じさせない。もちろん、1対1にも強く、左右に振られても身体がぐっと伸びてボールを奪ってしまう。
日本ではゴレイロの世界標準を感じる事ができなかったが、イゴールのおかげでようやくできるようになった。
Fリーグの流れをイゴールが変える
180cm以上の巨体、前に出る思い切りの良さ、左右に軽快に反応する俊敏性、精度の高いスローとキック、どれをとっても日本に無いスケールの大きさだったゆえに、噂はたちまち広がり時として誇大になりがちな噂も、彼の実力は誇大してもそれを上回るほどの驚きだった。
そしてイゴールは、FリーグのMVP、プーマカップのMIPとことしの日本フットサル界の話題をさらった。名古屋のゴレイロコーチは、「欧州でも通用する」とイゴールを評価したのに対し、ミゲルは「スペインには(イゴールレベルのゴレイロは)たくさんいる」と語るが、認めているのは間違いない。
彼の出現で、Fリーグにおけるゴレイロの価値観と評価基準が一気に変わった。ゴレイロの重要性が認知されただけでなく、試合に負けたくないなら優れたゴレイロを補強すべきという選択肢が優先される可能性がでてきた。
イゴールの登場で、今後Fリーグはどう変わっていくのか?