王者の理由

主力の安定性

3年目のFリーグも名古屋の3連覇となりそうだ。過去2シーズンと比べ、得点数は少なく、失点数は多くなっている。さらに3点差以上の勝利数を比較しても'07シーズンは10試合、'08シーズンは9試合なのに対し、今シーズンは21節までで6試合と、数字からは圧倒的な強さは見られない。 しかし、それでも強いのには理由がある。

1つ目は主力の安定さである。今シーズン、各チームのFPの出場試合数上位10人の平均出場試合を見ると名古屋は20.0試合とリーグで最も高い値だ。これはすなわち選手の欠場が少なく、安定した戦いができる事を意味している。もちろん選手層が厚ければこの数値が高い必要は無い。事実、上位の町田は18.5、大阪は19.2で高くない。しかし、一番良いのはエースをはじめ、中心選手がシーズンを通して戦える事である。名古屋は北原亘、完山徹一、森岡薫、木暮賢一郎の主力4人がフル出場しており、彼らだけで44得点も決めている。ブルノも21試合、サカイも20試合出場しており、6人で63得点も稼いでおり、チーム総得点でこの点数を上回るのは町田と北海道の2チームしかない。

セット分けからの解放

2つ目の原因はセット分けをしなくなったことにある。シーズン序盤は5人ずつのセットに分けて約5分毎に交代を行ってきた。そのため、調子の良し悪しにあまり関係なくプレーせざるをえなかったり、試合の流れが分断してしまったりとデメリットが多く見られた。
しかし、シーズン中盤に怪我や病気でメンバーを欠いた事がきっかけでセットを崩した事が選手たちにとって大きな転機となった。
元々、セットを好まなかった選手も多かったため、これを機に、調子の良い選手が重宝されるようになり、試合中のリズムも良くなった。

選手のポリバレント化

そして3つ目は選手のポリバレント化だ。セットによる交代をやめたことでそれまで以上に選手に求められる役割が増えた。以前から各選手がどのポジションでもこなせるように練習はしてきたものの、セット分けで戦ってきたときは前線の選手が後ろに回ることは多くなかった。しかし、出場メンバーが固定しないことで状況によっては森岡や木暮が守備をリードしなければならない事もある。実際、22節の浦安戦では、ウィルソン、森岡、木暮、ブルノという攻撃的なセットになり、フィクソではない木暮や森岡が最後尾に回る場面もあった。
そのほかにも丸山哲平は以前からアラとピボを器用にこなしたり、北原やサカイもチャンスとなれば積極的に攻撃参加して、プレーの幅が広がった事が得点数にも現れている。

王者にしかない自信と余裕

最後は余裕と自信である。今シーズン、名古屋は先制されても、焦る事無く自分達の戦い方を淡々と続けられる。それは自分たちの強さに根拠がある自信を持っているからだ。 以前は攻守の切り替えが遅かったり、お互いがミスを擦り付け合ったり、外国人選手のミスは許されたりと規律が守られなかったために、苛立ち思うように試合を運べなかったが、今では規律を守るだけでなく、思うようにプレーができないときには試合中に意見をぶつけ合って修正する事で戦い方を共有できることで、自信につながり、結果も出ていることで余裕も生まれている。

今の名古屋は数字には現れていないが、もしかしたら3シーズンで最も強いチームかもしれない。