課題も期待の表れ

ハイリスクハイリターン

サッカーでは試合時間残り15分で3点差くらいついていると、ほぼ勝負がついた雰囲気になり、スペインでは観客がぞろぞろと帰り始める。 しかし、フットサルでは残り3分でも3点差ならまだわからない。 フィールドの選手がゴレイロとなって5人でボールをまわすパワープレーは試合の主導権を握り、10秒で1点取れる可能性もあるが、ゴールをがら空きにするため、1つのミスが致命傷になる。 パワープレーはハイリスク・ハイリターンの手段だが、一発大逆転が狙えるからパワープレーが始まれば、おのずと試合は白熱し会場は盛り上がる。

変化するパワープレー

得点を取りにいくためのはずのパワープレーが、最近はかなり目的が変わってきている。以前、ここで浦安のパワープレーについてコラムを書いたが、それから引用すると、

浦安のパワープレーの目的は点を取る事ではなく、奪われない事、そしてペースを握る事と言えるだろう。つまり、むやみに取りに行ってはキープ力の高い浦安の思うつぼであり、逆に何もしない方が時間だけが過ぎていくので、浦安としてはリズムを立て直せる反面、反撃の時間が短くなる。そう考えると、浦安のパワープレーにはあえて消極的な守備をした方が良いのかもしれない。

浦安のパワープレーの独特さを書いたのだが、今シーズンのFリーグを見ると、パワープレーをするチームが非常に多く、しかも大分のように30分近くも以前の浦安のようなリズムを立て直すパワープレーを続けるチームもある。それだけやられてしまうと、相手チームは防戦一方となってしまい、フットサル特有のテンポの良い攻守の切り替えはほとんど見られず、観客も飽きてしまう。これがパワープレーが嫌われる主な原因だろう。

嫌われる原因

しかし、それはパワープレーをする側だけに問題があるわけではない。

パワープレーが始まると、対戦相手は失点をしないためにも守りにさらに力を入れるが、「守り抜こう」と受け身になってしまっているチームが多い。受け身になってしまったら最後、試合終了のブザーまで粘り続けるしかない。こうなると一方的な展開になり、前述のように観客に飽きられる。もし、守備側が「守り抜こう」ではなく、「パワープレーを崩しに行こう」と積極的な守備を行えば、攻撃側もそう易々とパワープレーができなくなるので、パワープレーが行われる時間も短くなる。

つまり、Fリーグ全体として、パワープレーの攻撃のレベルよりも守備のレベルが格段に劣っているから、このような現象が起きるのであり、守ってばかりいる守備側にもパワープレーが嫌われる原因があるとも言える。

ハイリスク・ハイリターンの真意を掴め

パワープレーにも攻略法はたくさんあり、特にFリーグでは強烈なシュートを打てる選手が少ないため、守備は本来やりやすいはずだが、機能していないチームが多い。たとえば、Fリーグで使われる後方に3人並べて、コーナー付近に1人ずつ配置する「3-2」の形では、強いシューターが後方の真ん中にいなければ、基本ボックスで守り、前のどちらかがパワープレーの3の真ん中(通常ゴレイロが担うポジション)の選手に追い込みをかけるだけで、このパワープレーの威力を半減させることができる。

こういった仕掛けをすることで、攻撃側も守備側の裏をかいたり、ポジションを変えたりする。今のFリーグではこういった作戦のやりあいが少ないから単調なパワープレーが続いてしまい、本来持つパワープレーの魅力が失われてしまっている。

パワープレーでの守備は守り抜くことではなく、パワープレーを続ける気を失わせるくらいの気持ちと策が無いと、Fリーグの質の低下につながる可能性がある。