世界との差

手を抜いていても強い

カハ・セゴビアは開始1分にアンドリューがサイドからドリブルをしかけてファーサイドにシュートを放ったボールにゴール前で高橋健介が合わせてあっさり先制すると、その後はチャンスと思えば積極的にハイプレスを行って名古屋オーシャンズのミスを誘い、わずか7分間で4-0と突き放す。
セゴビアはFPは8人だけしかいなかったこともあり、全力を出す場面はここぞという一瞬だけでそれ以外はスローペースで、難しいこともしない。名古屋も全選手を均等に起用して本気ではなかったが、Fリーグ王者である名古屋を相手に余裕あるプレーで開始早々にリードを奪う。
名古屋も4点差をつけられてからようやく反撃するも、安全圏に引き離したセゴビアにとってみればしっかり守れば良いだけで、名古屋は彼らの手のひらの上で転がされているような、点差以上にスペインと日本の実力差を痛感させられた。

日本と世界を知る3人の意見

「世界レベルを感じてまだまだだと思った」とベンフィカを率いて世界の最高峰で戦ってきたアジウ監督はこの試合で世界レベルを改めて痛感しており、「スペインが最新のコンピュータなら、日本は古いコンピュータ」とセゴビアのミゲル監督はそう表現していた。
全てにおいてセゴビアが名古屋を上回っているのは事実だが、なかでも決定力と連動性について両者にかなりの開きがあると2人とも考えている。

「決めなくちゃいけない場面ではしっかり走って確実に決める。その判断を全員ができるのがさすが」
スペインで3年半プレーしてきた木暮の言葉を借りれば、「決定力」という個人の問題ではなく、いかにシュートを決めやすい状況をチームで作れるかが鍵になってくる。
この試合でもセゴビアが決めた6点のうち、5点がゴール前で数的優位となってGKを誘き出してから奪ったものだった。
「日本のGKのレベルは低く、失点してはいけない場面で失点してしまった」、とミゲル監督はGKのミスを指摘していたが、そういった部分も日本の攻撃力が劣っているがためにそういう難しい局面をGKが経験できずに、ミスを犯してしまうのだろう。

良いものは外から吸収

ミゲル監督は今シーズン終了後から日本代表の監督に就任する。浦安のシト監督の去就は不明だが、契約を延長すれば、シト、アジウ、ミゲルと世界トップクラスで指揮した監督が3人も日本にいることになる。しかも名古屋は戦力補強に加え、GKコーチを新たに招く予定だという。 「外から良いものを吸収すべき」とミゲル監督の言葉どおり、強くなるためには外に目を向けなければならない。
高橋が名古屋に対しても問題なくプレーできたのは、セゴビアというハイレベルな環境でプレーしてきた事が理由であるのは言うまでもない。誰もが彼のように海外へ渡れるわけではないが、海外の良い部分を取り入れることはできるはずだ。
スペインとブラジルという2大勢力と関係を持てる国はそう多くない。今回を機に積極的に外との交流をはかることが求められる。