熱く盛り上げた名古屋

名古屋に対するライバル心

「名古屋に勝たなければ優勝はない」
浦安のシト監督は選手たちに去年から言い続けてきてきた。スター軍団の浦安をしても、プロチームの名古屋に力が及ばず、Fリーグが始まってから過去5度の対戦で勝てたのは全日本フットサル選手権の決勝だけだった。しかも、今シーズンの浦安でのホームゲームは名古屋に完敗を喫し、ここで負けたら名古屋のFリーグ連覇がほぼ決まってしまう。浦安にとって何が何でも勝たなければならない土壇場だった。

浦安の対策

普通に戦えば、今回のW杯に出場した日本代表を6人擁する浦安ですら、マルキーニョス、シジネイ、ボラら能力の高いブラジル人選手にやられてしまうだけでなく、フィジカル勝負でも日本人に負けてしまう可能性がある。名古屋のスタッフの1人が、「浦安の作戦にやられた」と悔やんでいたように、名古屋に勝つには彼らの長所を無力化する努力が必要だった。
その1つが、「1対1じゃなくて、1対2で戦うしかない」と市原誉昭が試合後に語っていたように、同時に2名しか出場できないブラジル人を4人がかりで止める事であり、もう1つが疲労させる事だった。

名古屋の真っ向勝負

「アジウの指示で僕らは常に前から守備を仕掛ける」と名古屋の選手が語ったように、この日の名古屋は下がることなく、高い位置からの前後に2人ずつ並ぶ守備を続けた。しかし、これは浦安からすれば予想通りであり、前線の稲田へのロングパスを狙い続けた。そうすることで、名古屋の選手たちは下がらざるを得なくなり、攻撃になれば上がるも、浦安のゴールクリアランスになれば、浦安は再び名古屋の裏を狙ってロングパスを送るため、名古屋は下がらざるを得なくなる。この繰り返しで名古屋は疲労度を増した。
翌日の花巻戦は、「内容よりも勝利が重要だったから」(アジウ監督)と後半はあえて下がってカウンターを狙いに行ったが、浦安との対戦では勝負よりも、自分たちのポリシーを貫いて浦安を叩きのめす衝動を抑えきれなかった。浦安の作戦にあえて真っ向から勝負した結果、自滅することになってしまった。

感動を生むのはレベルだけでなく熱さ

試合の終了のブザーが鳴り響いた瞬間、シト監督をはじめ浦安のスタッフたちはピッチ内に駆け込み、汗だくになった選手たちと抱擁し、7000人以上の観客のほとんどが歓声に沸いた。浦安の計画的かつ精度の高い攻撃は“華麗”という言葉がふさわしい。
しかし、これだけ観客が盛り上がった試合になったのは、浦安の攻撃を受けて立った名古屋の存在があった事も忘れてはならない。北原亘をはじめ、多くの選手が疲労が抜け切らず本調子でなかったが、それでも最後まで諦めずに戦い抜いた。その強い精神力がなければ、これだけ観客をひきつける試合にはならなかった。