一時代の終焉と変化

2極化

スペインは今、バブルがはじけているらしい。各地で新しく近代的なマンションや住宅が建てられ、「売り出し中」と看板がかけられているものの、今後買い手がつきそうにないというのがもっぱらの評判だ。
その影響はフットサルにも出ており、今シーズンの補強でお金をかけたのはエルポソとインテルビューの2強とバルセロナくらい。3位のセゴビアですら、「(スポンサーが集まらないから)少ない予算でここまでやれただけでも十分」と思っている。
多くのチームが不況にあえぐ中、着実に補強を行ったエルポソは今シーズン、磐石の強さを誇る。バカーロ、ヴィルデという攻撃の2枚看板を欠いているため相手を圧倒する攻撃力は見られないが、その分、絶対に負けない粘り強さが昨シーズンより際立っており、逆転勝利が多いのが今シーズンの特徴だ。

世界王者の意地

独走態勢のエルポソに待ったをかけたいのが、2強の一角で2位のインテルビュー。勝ち点差で10も離されているとはいえ、マルキーニョ、シュマイケル、ルイス・アマド、ネト、ガブリエルと役者はいまだ健在である。
シーズンも終盤に差し掛かった「フットサル・クラシコ」と呼ばれる直接対決では、負けられないホームのインテルビューが前半からエンジン全開。積極的にハイプレスを仕掛けて王者エルポソを苦しめる。エルポソの司令塔キケも1度はベンチに下がるも、組み立てられないチームを落ち着かせ、立て直すためにわずか1分でピッチに戻る。それでもインテルビューの勢いは止まらず、前半を2−1で折り返すが、内容は点差以上にインテルビューが押していた。後半も、心配されたスタミナが切れるものの、わずか1点のリードでもインテルビューは無理にカウンターを仕掛けずあえて遅攻を選択し、焦らない。元王者の老獪さといったところだろう。運動量は落ちても、シュマイケル、ロジェーリオのシュートで3点差をつけるのだから、王者に一矢報いたと誰もが思った。

スペイン王者の貫禄

ところが、1−4となった残り6分。現王者のエンジンがようやくかかり始める。シソとキケという世界屈指のフィクソの2人が同時にピッチに立つパワープレーは、ゴレイロのシソがセンターサークル付近に位置し、両サイドの低い位置に左にキケ、右にビニシウスが入り、コーナー付近には右にアルバロ、左にサウーがつく。 シンプルだが、正確にかつ少ないタッチで敵の周りを回し、敵の守備陣形がボックスから崩れてダイヤモンドに変わるとエルポソの攻撃は一気に加速し、シソからビニシウス、右コーナーのアルバロまでつなぎ、逆サイドからゴール前に走りこむキケへ低い弾道が送られる。インテルビューがキケを意識すれば、アルバロはファーポストめがけてシュートパスを送りサウーが飛び込む。たったこれだけだが、エルポソの的確な詰め将棋でインテルビューは手も足も出ない。残り15秒で4−4の同点に追いつかれて、慌ててネトをゴレイロにしてパワープレーを行うも、時はすぐに過ぎた。

一時代の終焉

前半から仕掛けたインテルビューは、その作戦を考えた時点ですでにエルポソに負けていたのかもしれない。若手が入ったものの主力にまでは育っておらず、フリオが引退し、ベルトーニはイタリアへ移籍し、ダニエルは長期離脱。さらに監督のカンデラスは今シーズンで契約が切れ延長はしていない。ブラジル人選手も契約が残っているとはいえ、これが最後の契約になると言われている。的確な補強と若手が台頭するエルポソに主役の座を奪われる時が来たようだ。