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「ファベイラでの恐怖の一夜

2008/12/26(金)  


ブラジルのファベイラ

サンバやリオのカーニバルに比べれば認知度は劣るかも知れないが、知っている人は知っている。

ただそれは行ったことがないのに、ブラウン管やインターネットからの情報で先入観を持ち危険だ!止めておけ!と皆口々にいう。


しかし何を持って自分をそういう気持ちにさせるのかはわからないが、いくなといわれればいきたくなるし、危険だといわれれば何が危険か・・・なんで危険なのか知りたくなる。

そして、自分の足で現地へ赴く。
そこには確かに下界とは変わらない人々が生活している。

子供から年寄りまで千差万別に。


いつの間にか辺りが暗くなっていたのだが、写真に夢中だった俺は警戒心の薄れから危険な区域に足を踏み入れていた。

狭い路地裏の道、そこには逃げ場のない空間が存在していた。
そこで後ろから突然カメラを取り上げられ腕も引っ張られる。

一瞬何が起きたのか分からないのだが、次の瞬間振り向くと後ろには若い男たちがいる。
きたなっ、と思った瞬間にはもう遅い。

最初のうちは英語とジャスチャーで応戦するものの、ここはブラジルでありそしてファベイラである。英語が通じるどころか、まともに取り合う様子は見受けられない。

今まで生きてきた中でも一番の身の危険を感じた俺は、一瞬の隙をつきありったけの馬鹿力を出しそこを振り切る。

相手は数名で油断もあっただろう、それに対しこちらは命がけだ。
捕まったら最後と思えば普段発揮できないはずの身体能力も出るし、ありえない場所を通ったり駆け上ったりもできたりする。

普通なら痛くてしゃがみこむくらいのアクシデントでも、不思議と足は動く。
やっとの思いでそこを振り切り抜け出し街へ出る。

今でも背筋が凍りつくような思いをした恐怖の一夜・・・・
ワールドカップでの名シーンがかき消されてしまうほどの衝撃。

今になれば一番の衝撃的な思い出であり、後悔もしていない。
むしろ命がけの経験というものは一生かかっても一度あるかないかなわけで、やっぱりいってよかったと思う。それもやっぱり生きて無事でこそなんだけどね・・・


伊藤大和














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