「密集せよ！起点をつくれ！」日本女子代表、新たなるチャレンジ

11/14(金)～16(日)、大阪にて、フットサル日本女子代表候補の国内トレーニングキャンプが行われた。１日目は午後のみ。２日目は午前・午後。３日目は午前のみの、ミゲル監督の男子と同じ流れの３日間４セッション。１日目の午前、２日目の午後のトレーニングに取材入りさせていただいたので、レポートします。まずは１日目午前、新生在原ジャパン記念すべき第１回のセッションのレポートです。

　まずはメンバーについて少し･･･。今回の召集メンバーは８人が初召集。中にはサッカーU-18代表にも選出されている、園田瑞貴(京都精華女子高校)など、サプライズ召集もあった。トレーニング後の在原監督の話によれば「パフォーマンスがわかっているベテラン組は呼びませんでした」とのこと。ほぼ当確メンバーは居て、関西と関東の２回の合宿で、幅広く選手を見たい、チャンスを与えたいという思惑があるようだ。「普段は14名のところ18名呼んだ」のは、１.アンダー世代の代表がない状況でいかに代表に選手を吸い上げるか、２.地方に情報を共有するか、という２つのテーマがあるようだ。

　そして驚きの合宿は始まった。

　まずは、選手たち自身の手で、コートに３本のラインが縦に引かれた。中央に１本、その両サイドに５m幅で。この"５m"が今回、在原監督が選手たちに求める、サポートの距離感だ。３人の選手が10m幅に"密集すること"。コンセプトは『サプライズ』だと言う在原監督が、世界と戦うために用意したコンセプトは、他に類を見ない、オリジナリティー溢れる、そして"奇抜"とも思えるスタイルだった。

　福角コーチのウォーミングアップでトレーニングはスタート。ストレッチの後は、間接視野を広げるため(？)、目の準備運動まで行われていた。

　10分ほどして、在原監督のトレーニングがスタート。技術もそうだが、「頭」を使うトレーニングが目白押しだ。まずは６人１グループ、３グループに分かれてのリフティング。タッチ制限は無し。一番近い人以外の名前を呼んでパス。パスをした後は外のコーンを回って戻ってくること。まだウォーミングアップの延長でもあり、コーンを回るときに手や股関節をほぐすことも求められた。

　途中から、コーンを２つ回ること、３つ回ること、リフティングした回数だけ回ることと、どんどんルールが変更されていく。

　しばらくすると「ハイ、作戦タイム！」とだけ告げられた。今回が初顔合わせのメンバーも多い。チームビルディングのため、どんどん選手たちにコミュニケーションを取らせる狙いもあるのだろう。
　「ボールの周りに何人必要？多い方がいい？少ない方がいい？」「仲間がリフティングしているのに、ジョギングで戻っていていい？全力で戻らないと！」と、ヒントも与えられていく。

　しばらくしてから、全グループで何秒続けられるか？というリフティングチャレンジがスタート。どこかのグループが落としてしまえば終わり。目標は、在原監督が所属する東急スポーツシステムのコーチ陣が出した"30秒"に定められたが、惜しくも届かず(この日の最高は27秒)。チャレンジは明日も続くこととなった･･･。

　休憩を挟んだ後は、再び３グループで、ダイレクトパスの連続。(パスする人ではなく)次にパスする人(３人目)を指名して、パスの繰り返し。パスを出したらコーンを回って戻ってくる。「目を合わせて！なんとなくじゃなく」という声が飛ぶ。途中からツータッチOKだが、ツータッチの連続は無しにルール変更。うまく行っているグループを見せる場面もあった。さらに途中からはボールが２個に。さすがの代表候補選手たちも頭がついていかなくなる。
　１回だけリターンありにまたルール変更。「次にパス出す人が見えていなかったら(リターンを受けに)サポートに入る。パスを出したらまず寄ってあげて、次にパス出す人が見えていたら、サポートを外してコーンを回ればいい」というアドバイス。ちなみに、この、"パスを出してサポートに寄る"は新しいコンセプトの中でも求められてくる動きだ。

　しばらくしてからは４対２。オフェンスはダイレクト、ツータッチ、ダイレクト、ツータッチと交互につなぐ。ディフェンスは奪ってからパス１本つなぐまで"奪った"と成立しない。奪われたオフェンスがすぐにボールを取り返せばOK。切り替えの速さも求めるパス回しだ。

　休憩を挟んで、少しシュート練習を入れた後は、いよいよ戦術を浸透させていくための実戦的なメニューに入った。ハーフコート(両面)で３対３。「世界は個で勝負してくる。ウチらは密集をつくる。１本のパスは５m。３人で10mをキープすること。ボールを取られてもすぐに奪い返すために密集をつくる」新生在原ジャパンのコンセプトが告げられた。
　オフェンスはボールをつないでゴールへ。ディフェンスは奪ったら(攻守入れ替わって)シュートへ。コーナーもあり。普通のゲームとしてプレー。両サイドにフリーマン。フリーマンは両側のパスを受ける。途中からパスを受けたフリーマンは３秒間、ゲームに参加できることにルール変更。

　途中で「ウチらは起点をつくりたい。ルックアップして前方を見れる選手にボールを当てたい」と２つ目のテーマが掲げられた。そして「ポイントはダイレクト、ツータッチ」だとも告げられた。ある場面ではゲームを止め、パスした選手に寄ることを求めていた。寄ることでワンツーや、オーバーラップを狙う。

　しばらくして休憩が入り、最後はゲームが行われた。ここでも人と人が広がるよりも、サポートを近くして密集を作ることが奨励されていた。飛ばしたサイドで４人目が受けた際「プレッシャーがかかっていないから、前が向けるよ！」と、起点になることも求められていた。練習の最後に「４分の１のスペースで回して、余らせている４分の３のスペースに走れる選手を走らせる」という全体のコンセプトが改めて告げられた。

　「攻撃はワイドに」というのがサッカーでもセオリーだが、面白いコンセプトだ。まだ"差がある"と聞く世界のトップチームと対戦したときに、どのようなゲームが展開されるのか、今から非常に楽しみだ。ゲームの中でもサポートが近いことで、１列目と２列目の間に当てたところから展開したり、スイッチやヒール、ワンツーが小気味良くつながったり、３人が密集してディフェンスも固まったところから大きくサイドチェンジして、フリーの選手が受けたり(おそらくこれが在原監督の理想の形の１つ)、面白い形ができていた。「ディフェンスが近いことで奪われてすぐにシュートされる場面が少なかった」ことも、メリットとして、確認されていた。