２つの代表を１つに。2016ワールドカップへの挑戦がスタート

アジアインドアゲームスなどに挑んだ若手主体の代表と、従来の代表と、"２つの代表を１つに"というのが、前回(静岡)と今回(神戸)の合宿のテーマの模様。ミゲル監督のコンセプトは変わらない。前からの積極的なディフェンス。セットプレー。ポゼッション。これを新しいチーム(メンバー構成)で精度を上げて行く。

　10月22日から、ブラジルで開催される国際大会・グランプリ・デ・フットサルに出場。その後は、11月にベトナムでの親善試合、春にはヨーロッパ遠征が予定されている。その後は５月のアジア選手権(ベトナムで開催予定)が当面の目標となる。次のアジア選手権は、ワールドカップ出場権はかからないが、その次のアジア選手権の１次予選を免除となるために、上位３チームに食い込んでおきたいところ(確定ではないが、これまで通りなら、上位３チームは一次予選免除となる)。
　少し前の日本なら、アジアベスト３は難しい目標ではなかった。しかしタイの成長・躍進に象徴されるように、中国、ベトナム、台湾など、成長著しい国は多い。アジアクラブ選手権を見ても、各国の差は"急速に縮まってきている"というのが、スタッフ陣の認識のようで、日本もうかうかしていられない。
　
　
　この日のトレーニングも"いつもの感じ"で始まった。ストレッチをして、ハーフコートでのアップが始まる。村岡フィジカルコーチの下、「２足す２」などのコールされた数でグループをつくる。漏れた人は腕立て伏せの罰ゲーム。シュライカー戦で負傷したのか？ここから吉川は別メニュー。
　
　いったん給水した後は、ボールを使ってパス回し。いつも通り、仁部屋がひとりで(パスをほとんど回さず)ボールタッチの感触を確かめている姿が印象的。ぜひ次回のワールドカップでは躍動して欲しい選手のひとり、だ。
　
　その後はミゲルの下、２グループに分かれて、５対３のパス回し。最初は２タッチ、ハーフを超えるときは浮き球だけというルール。途中から、ハーフ越えはグラウンダーのみ。手で持つボールを増やして、手で持っている人はオニにタッチされる。と条件が変わっていく。足のボール、オニ、手のボール、フリーの選手、あらゆる状況確認が求められる、"頭のアップ"も含まれるメニューだ。
　
　給水後はいよいよ戦術トレーニング。ここからは選手の集中度・本気度も一気に増す。この日は"３人のローテーション"の確認が行われた。

　後方の３人でパスを回しながら、ピヴォ当てをメインに、前への展開を図る。
　
　中央からサイドにパスを出した後、出した選手がサイドの選手のマーカーの前を横切る。古くはブロックに入って、受け手をフリーにしていたりしたと思うが、前を横切ることでも、ボールへのプレッシャーを遮ることができる。また今はあからさまなブロックはファウルを取られてしまう。在原氏の著書『フットサル個人戦術バイブル』でも『コルテポルデランテデアラ(アラの前のカットイン)』として紹介されている、個人戦術のひとつだ。そこからの、主な形は３つ。
　
　１つ目は、横切ったあと、ボールホルダーにプレッシャーがかかってしまったら、前に抜けず、下がってサポートに入る。もう一度(サイドへのパスを)繰り返しても良い。ディフェンスがフラットになって(水平に並んで)、中のディフェンスが逆サイドへのパスを切ってきたら、ターンして、サイドの裏を狙う。裏を狙う動きにディフェンスがついてきたら、アラコルタ(カットイン)が狙える。
　
　２つ目。逆サイドへのパスコースを切られ、２回、３回、同サイドでのパスを繰り返した場合は、相手の逆アラのディフェンスが中に絞ってきやすいので、逆サイドの選手が大裏を走る。
　
　３つ目。押し上げてハーフまで来た。あるいは相手が引いている。そしてピヴォが入っているときは、アラの前をカットインすることで、ピヴォへのコースをつくりやすくなるので、ピヴォ当てを狙う。パラに入ってあげて、ディフェンスがついてきても、ピヴォへのパスコースが空きやすい。
　
　という説明が入ってからスタート。ハーフライン手前で、３対３の状態からスタート。ハーフを肥えたところにもディフェンスが１人。ハーフを超えたら、３対１で、ダイレクトパス７本以内でフィニッシュまで持っていく。途中からは、ディフェンスの代わりにピヴォ(渡邉)を入れて、行われた。

　ミゲルからは途中、「２回、３回同サイドでパスを繰り返したら、逆アラが高い位置を取る(裏を狙う)ことを忘れないで」「ピヴォがいることを考えて(縦を狙おう)」「縦パスのコースが無かったら、もう一度やり直していい(無理に狙わない)」「シュートは上」と言った声が飛ぶ。
　
　ディフェンダーが逆サイドへのパスコースを切ってきて、サイドに追い込まれた時がうまく行かない。と思っていたら、やはりストップがかかって、アドバイスが送られた。「ターンを早く」という指示。「今はコースを切られてからターンまでが遅い。切られたと気づいたら早くターンする。今は遅くて中央の選手まで近づいてしまっている。そこを早くターンすれば、サイドで２対１の状況がつくれる。ターンに対し、アラの選手も早く反応してあげること」給水中も、レクチャーは続いた。
　
　
　その後は３チームに分かれ、５球交代で４対４。チーム分けはビブス無しが、渡邉、西谷、滝田、仁部屋。青が稲葉、小曽戸、北原、皆本。白が白方、村上、室田の３人(に助っ人が１人)。
　
　ゲームが止められて指示が入ったのは、まず、ファーストディフェンスのパスコースの切り方。相手が中央からサイドに出し、中央を前線に抜けていく。ファーストディフェンダーの一人は逆アラが降りてくるので、抜けていく選手を離した(受け渡した)。その時、ボールを受けたサイドの選手に対する守備について。いい状態でボールが入って、中央(ななめ前)へのパスがあるなら、蹴り足をもっとケアすること。この場合はドリブルよりも、パスを止めることで、相手の攻撃を遅らせることができるからだろう。相手の利き足についても触れられ、(ドリブルで振り切られないために)体は正対しつつも、足でななめ前のコースを切るような素振りを見せることで、パスコースをケアすることができる。ということだった。
　
　セットプレーのブロックの仕方についてもアドバイスが。「マークにつこうとしている選手に、無理やりブロックに入る必要はない。離しておいて、セカンドポストに入れば良い」
　
　相手の「エントレリネアスに対してはベタ付きしない。ウォッチだよ」これは２列目のディフェンダーが一緒についていって、１列目と３枚並ばないためだろう。３枚並んだ状態で１列目を突破されると３人いっぺんに突破されてしまう。エントレリネアスした(中央に降りた)選手はファーストディフェンスに任せ、２列目は浮いた(余った)状態で、状況を見る。
　
　後ろの選手のコーチングについて。ファーストディフェンスが抜けた選手について行っていた。でも(抜けていく選手と)入れ替わりでサイドを降りる選手が居た。「一言、『残って』で高いラインが保てる」
　
　「コンセプトは変わらない」ということで、やはり細かい指示が目立つ。ミゲルが伝えるべきことは、"ディティール"の領域に入ってきているようだ。そして、こうしたアドバイスは室田や白方ら、若手に向けてのことが多かった。ワールドカップ経験組は、ミゲルのやりたいフットサルが、すでに頭に入っている。そうしたメンバーが大半居ることで、またミゲルもチームがつくりもやりやすいハズ。"次のワールドカップ"に向けては、前回よりもハイペースで、チームが成熟していきそうで、非常に楽しみだ。