２位・府中の印象と、ドゥダの誓い/Fリーグ12節

　前節、無敗でひた走っていた名古屋に"土をつけた"、２位・府中。
　勢いに乗って敵地・大阪に乗り込み、先制点を奪ったが、追加点をあげるのにもたつくと、立ち上がりのリズムを失い、「チャンスを逃していると、こうなってしまう･･･」(府中・中村監督)という試合で、大阪に逆転負けを喫した。

　今季の府中には何が起きて、チームが変わったのだろう―。

　キャプテンの小野は「自信を持ってプレーできている」ことを挙げた。試合の立ち上がりは小野の言葉どおり。府中の恐ろしいほどの余裕のあるプレーが、大阪ディフェンスの裏を取っていく。

　[15:37]ピヴォの12.小山が背負ったところに、ディフェンダーが１点集中した刹那、小山が横に流したボールに、フリーで走り込んだ28.ベッチーニョが反応。ほぼ"がら空き"となっていた正面のゴールに、ベッチーニョが確実に蹴り込んで府中の先制。ピヴォ当てのお手本のような、完璧に崩してのビューティフルゴールだった。

※[]内の数字は、場内のタイマーが示す、残り時間です。

　１週間、ディフェンスを重点的に練習してきたという大阪だが、その後も府中の流れるようなパスワークに翻弄される場面も。マークが乱れて、ゴール前、一番危険なエリアの選手をフリーにしてしまい、１.イゴールから怒号に近い、注意の声が飛ぶシーンも。府中は特に、ダイレクトパスを積極的に使ったスピーディーな展開と、６.ルーチャイ、28.ベッチーニョのシンプルにゴールに近いプレーを選択する判断の良さが素晴らしかった。

　ただ、個人的には前後半通じて、ルーチャイやベッチーニョのゴール前へのパスに反応できる、"感受性の強い"受け手が居たら、もっと府中の決定機は増大していたと思う。

　立ち上がりは府中の良さが"際立った"が、チャンスを逃しているうちに、大阪が息を吹き返していく。22.佐藤や、24.村上の積極的なミドルシュートは、好調２.村山に虚しいまでに弾き返されていたが･･･、[02:21]大阪は24.村上がサイドで、縦に思い切ったドリブル突破。中へのシュートがディフェンダーに当たってこぼれたボールを、22.佐藤が押し込んで、１－１。大阪が、やや"ラッキーな形"で、同点ゴールをあげる。前半はこのまま１－１で終了。

　後半に入ってもペースは大阪が掴んだ。

　府中の立ち上がりの良さは"どこへやら"―。７.上澤は「サポートが遅く、大阪のプレスにはまってしまった」と指摘。「ボックスの形になっていたけど、個人的には後ろ３枚で回して攻撃を組み立てたい。ボックスだと、ディフェンダーに前に立たれたら、いいボールを前につなぎにくい」と振り返った。

　府中戦を２試合しか見ておらず。好調な府中を目の当たりにしていないので恐縮だが･･･。この日の試合内容を見る限りでは、個人的には府中は"アンバランスなチーム"という印象が残った。
　６.ルーチャイ、７.上澤、12.小山、28.ベッチーニョというファーストセットに比べ、後発の選手はやや"迫力不足"な印象。ファーストセットに違う選手が混じった場合は、そこがボールの"取られどころ"と化す場面も見受けられた。さらに前半、攻撃で大阪の"脅威"となり続けた28.ベッチーニョは、後半、"軽い守備"で大きなピンチを招く場面が一度では無かった。核となる選手が"諸刃の剣"では、監督も起用に頭を使いそうだ。

　府中の変化について。中村監督は、「花巻戦のときから。選手だけでなく、スタッフも含めて、チームが一枚岩になったとき力を発揮できるように、徐々に今のチームになっていった。ただし、まだ固まったモノではなく、不安定で、全員で戦うという意識が試合を通じて行われないと、今日のようにパフォーマンスは出ない」と説明した。

　[08:52]追加点を上げたのは、大阪。

　左コーナーキック。ピンポイントで登場した３.吉成がマークをうまく外して、利き足の左足でシュート。ジャストミートはしなかった(？)が、これが府中16.伊藤のオウンゴールを誘って、２－１。逆転のゴールとなった。大阪はまたも、ラッキーな要素のあるゴールでの追加点。

　しかし[05:20]今度は"文句なし"の形で、大阪に、決定的な追加点が入る。

　左サイド、19.瀬戸からの縦パスを受けた11.ドゥダが、ディフェンダーのプレッシャーを受けつつも、うまく、軸足の裏を通すトリッキーなパスを、ダイレクトで中央に流す。
　ここに14.林がフリーで走り込んだ時点でゴールが約束されたようなパス。林が確実に決めて、大阪のリードは"２点"に広がる。
　後半、"ほぼペースを掴めていない"府中にとっては、重い追加点となった。

　結局その後も府中の攻撃よりは、大阪のディフェンスの良さが目立つばかりで、試合は３－１のまま、ホーム大阪が勝利を飾った。

　試合を決定付ける３点目をアシストした大阪の11.ドゥダは「花巻戦後、選手たちで、早く２位まで順位を上げようと誓い合った」と話す。素晴らしいアシストについては「(他の選手を)休ませるだけの控え(選手)ではなく、チームを助けるための一員で居たい」と、言葉に力を込めた。

　「ゴールでも、パスでも、ディフェンスでも、何でもいいから･･･」
　かつては『スーパーブラジル人』と呼ばれ、どのチームに入っても"スペシャルな選手"であり続けたドゥダから飛び出した、チームの黒子に徹する宣誓―。

　ドゥダがまた違った意味での、『スーパーブラジル人』と呼ばれる日も近そうだ―。

レポート：北谷仁治

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