手負いの神戸、それでも北海道に勝利/Fリーグ11節

　「どちらが勝ってもおかしくなかった」接戦は、試合巧者ぶりが感じられた、ホーム・神戸に軍配が上がった。

　ケガ人の多い神戸は、１.山田マルコス、４.山元、14.西谷らがベンチアウト。アスピランチ上がりの５.田村、10.加藤らを登録させたが、慎重な比嘉監督がこの日、彼らを使うことは無かった。

　フィールド８人で回す神戸は、後半、フィジカルが落ちることが心配されたが、逆に運動量が落ちたのは北海道。「前からプレスをかけ続けた影響はあったと思う」(９.菅原、11.神)というのが、その一因のようだ。

　先制点は北海道だった―。

　[16:28] 北海道11.神がななめ前、左サイドに送ったボールを、20.仲村がタッチライン沿いからシュート。この日先発の神戸12.田中の脇をかすめて、逆サイドネットに収まる。

※[]内の数字は、場内のタイマーが示す、残り時間です。

　一方の神戸はカウンターから。[11:54] 16.須藤が左サイド、縦に行くと見せて後ろへ切り返し、マーカーを一瞬外して、中に送ったグラウンダーを走り込んだ８.畠山フランキが決めて、１－１。流れるような攻撃から奪った、ビューティフルゴールで、神戸が同点。

　[09:01] 北海道は11.神が、神戸16.須藤を倒して、イエローカード。神はその後も判定に対し、抗議するなど、イライラした様子も見せていたが･･･、自分のシャツを引っ張られ、相手のファウルが取られた際には、イエローカードを要求しながら、リスタートを速くするなど、クレバーな一面も見せる。

　前から積極的にプレスをかける北海道。相手にボールを持たせて、引いて守ることの多い神戸。必然的にボールをキープする時間が長くなる、北海道がペースを掴んで行くが、追加点は生まれない。

　スコアが動いたのは、[02:38]。キックインのボール。チョンドンと見せて、走り込んだ11.山田ラファエルがヒールで下げたボールを、16.須藤がシュート。このシュートが、北海道ゴレイロ12.関口のニアを抜いた。

　正直、この失点は北海道に重くのしかかったと思う。６節から北海道の先発ゴレイロの座を射止めている19歳と、若い関口。
　「守備範囲は伊藤より広い。前からプレスをかけるときに、裏のスペースをカバーしてくれる」(北海道・小野寺監督)ということで、起用されている関口だが、このシュートは対応して欲しいところだった。

　前半は２－１。ホーム神戸がリードして折り返す。

　後半、北海道はゴレイロを１.伊藤にスイッチ。

　[16:00] 神戸２.鈴村のパスミスをさらった北海道は、11.神 → ２.高山とつないでゴール。２－２。再び試合を振り出しに戻した。２点目を上げた高山は当たりの強さと、意表をつく細かい切り返しで、神戸７.原田から体を入れてボールを奪ったり、その後奪いに返しに来る原田を切り返しで振り払ったり、随所に好プレーを見せていた。

　しかし北海道は１分と持たずに失点。[15:36] 右サイド、９.岡崎チアゴに渡り、チアゴが後方に落としたボールを、11.山田ラファエルがシュート。これまたキレイな形で、神戸が再び勝ち越しに成功する。

　ルール改正でスライディングタックルも解禁されたフットサル。筆者は10節・セントラルを取材できていないが、この試合に限れば、危険なプレーも無く、懸命に戻ってきたディフェンダーがスライディングでピンチを防ぐなど、むしろ球際・局面をエキサイティングにするように感じた。

　後半10分を過ぎると、北海道にパスミスが目立ち出す。足が止まっていたり、ボールに対する出足が鈍ったり。その一因は"スタミナ切れ"のように個人的には感じたが、「個人的にはそういう評価はして居ない」と北海道・小野寺監督は否定。
　一方、８人で回した神戸は少ない人数で戦うことにあたり「特に気をつけたことはない」(神戸・比嘉監督)と言うが、ハーフに引いて守る戦い方が、体力のセーブに役立ったことは間違いなさそう。

　ルール改正の影響について、あと２つ。

　残り２分を切ったところで、パワープレーに出ていた北海道は、交代ゾーンから出たゴレイロが自陣でボールに触れたので、これはバックパスのファウルだったハズ。
　またその後、北海道のカウンターで、20.仲村のボールを後ろからスライディングしたプレーは流された。「後ろからでもうまくボールだけに行っていたので･･･」と、北海道の菅原は審判をかばったが、逆にスタンドで見ていた神戸の選手は「あれはサッカーでもファウルやね」とコメントしていた。やはりわかっていても一瞬で判定を下すのは、審判にとって難しい作業となりそうだ。

　もう１つ面白かったのは、北海道が残り１秒でコーナーキックを得た時のこと。
　これまでであれば、残り１秒なら、速い球をゴール前に蹴って、誰かが合わせるしか、"１秒間"でゴールする方法は無かった。

　神戸もこの時「オレ(９.菅原)も学(20.仲村)も左利きなのに、ゴール前を固めていた」(９.菅原)。対して北海道は緩く後ろに下げて、シュートを打った。ゴールにはならなかったが、ブザービーター(終了と同時に打ったシュートのゴール)が認められるための、新しいプレーだった。

　タイムアウトを取って、残り３分から、９.菅原をゴレイロにパワープレーに出た北海道。シュートチャンスもつくったが、同点ゴールは奪えず。神戸が逃げ切った。

　「ベストゲームはできなかった」としながらも、「いい試合をしても負けたら意味は無い。大事なのは勝点３。今日は良かった」とは、神戸・比嘉監督。
　キャプテンの７.原田も「個人的なパフォーマンスは良くなかったが、勝ったことで次につながる。次のアウェイに勝って、ホームに名古屋を迎えたい」とコメントを残した。

　「やっと体調は戻りつつある。チームの状態は上向き」とは、北海道の11.神。次の名古屋戦に向けては「物議をかもしたが、開幕戦のような戦い方はアリだと思う。次はどう戦うかわからない」とコメント。

　９.菅原は、「失点の仕方が悪かった」とこの試合を振り返り、「個人的には得点も失点も２点にこだわりたい。２点以上(チームとして)得点したいし、失点は２失点以下に抑えたい」ようだが、この日のように、「２－３での敗戦が去年から目立つ」と言う。それでもこの日の菅原のパフォーマンスは上々。柔らかい浮き球で神戸ディフェンスの裏を狙いまくった。「パスは日本人で一番うまい」という、日本代表監督・ミゲルの言葉に納得できるパフォーマンスで、菅原の"配球"を見ているだけでも、このゲームは楽しかった。
　次節の名古屋戦に向けて、菅原は「ロッカールームでも、冗談で、『40分間パワープレーしようぜ！』という声が飛んでいました。どう戦うかは楽しみにしていてください」と、菅原スマイルで締めた。

レポート：北谷仁治