２年目のミゲル・ジャパンは「攻撃」に着手/日本代表練習

２年目のミゲル・ジャパンは「攻撃」に着手／フットサル日本代表候補練習レポート

2010年10月４～７日静岡・エコパアリーナ
写真・レポート：橋爪充

　９月の千葉合宿に続き、ミゲル・ロドリゴ監督率いるフットサル日本代表候補が静岡でトレーニングキャンプを行った。千葉のメンバーから原章展（町田）、永井義文（大阪）が抜け、村山竜三（府中）、佐藤亮（大阪）が召集された。
　U21日本代表候補も10月６日～８日、同じエコパアリーナでトレーニングキャンプを行う。18人の新鋭が選出された。18歳の逸見勝利ラファエル（名古屋）は両方のメンバーリストに名を連ねた。

　筆者が取材に行った６日は、フル代表の合宿３日目。午後にはU21勢が到着することになっていた。午前にフル代表、15時からU21、17時から再びフル代表というタイムスケジュール。スタッフは大忙しだ。
　川原永光（名古屋）は不在。６日朝に第２子誕生間近の報を受け、奥さんのいる高知へ向かった。

　９時半にスタートしたフル代表のセッション。アップを終え、最初に用意されたメニューは変則３対４ともいうべきものである。ルールはこうだ。攻撃の３人は自陣でワンタッチパスを10本つなぐ。つながったらボールタッチの制限が解除され、ハーフラインを越えて良い。DFは「ワンタッチ」ハーフに１人、後方に３人。「ワンタッチ」ハーフに１人で入る選手は、相当な運動量が要求される。

キャプション：“３人ゾーン”に中央から入っていく北原亘（名古屋）

　小宮山友祐（浦安）、滝田学（町田）らが、“１人守備”で３人を相手にボールを追いかけまわす。横江怜（町田）が３本目で菅原和紀（北海道）からボールを奪う。「しんど」。横江がつぶやいた。

キャプション：キレの良い動きを見せた皆本晃（府中）

　次のメニューもルールが複雑だ。ハーフラインを挟んだ両側７メートルほどの位置にコーンが置かれる。この位置から攻撃２人、守備２人がスタート。反対側のハーフラインには村上哲哉（大阪）がいて、ボールを出す。ここからは２対２でゴールを狙うが、シュート後は局面が一変する。攻撃側だった１人以外の３人が反対側のゴールを目指す。２対２が３対１になる。

キャプション：左の２人が攻撃、サイドライン付近の２人が守備

　ミゲル監督は何度も村山、藤原潤（浦安）にスローイングの指示を送る。カウンターの起点として、FPが受けやすいボールの供給を要求する。FPに対しても「背中を向けて走るのではなく、サイドで受けられる体勢を作ろう」という声が飛ぶ。
　ここまでのメニューを見てきて気がついたことがある。これまでにないほど攻撃の指示が多い。「１年間は守備の整備に費やす」としていたミゲル・ジャパンは、ついに新しいフェーズに突入したようである。

キャプション：２対２の局面で勝負を挑む佐藤

キャプション：シュートを放つ横江。後方では藤原がスローのフォームチェックをしている

　藤原がスローで出したボールが右前方の北原につながり、ワンタッチで折り返したボールを仁部屋和弘（大分）がファインシュート。ミゲル監督から「パーフェクト！」の声が飛ぶ。
　最年少逸見は、ゴール前でヒールリフトを見せるなど、度胸のいいところを見せる。

キャプション：給水中も良い緊張が保たれていた。和気あいあいムードとは少し違っていた

　FP４対４のミニゲームは、プレス回避からピヴォにボールを供給することがテーマ。ルールを何度か変更したが、前方のピヴォはボールが入るまで守備側の干渉を受けない。攻撃側はいかにプレスを交わしてピヴォにボールを通し、ラインを押し上げられるか。守備側はいかにその道筋を絶つかが焦点となる。

キャプション：コーナー付近でバトルを展開する原田浩平（神戸）と小宮山

　３人のボール回しに対するミゲル監督の指示は主に２点。短い距離でサポート、ローテーションすることと、常にピヴォを視界に置くこと。メンバーによっては純粋なピヴォの選手がいないケースもある、として滝田や北原が指名される場面もあった。

キャプション：髪を切って精悍な顔つきになった滝田（中央）

　攻撃側はピヴォを使って押し上げる。守備側はすっかりおなじみになったYの陣形から的確な寄せでパスを寸断する。「１列目からボールを奪いに行くように」という指示も飛び、アグレッシブな攻防がそこここで見られた。

キャプション：ライン際で競り合う仁部屋と上澤貴憲（府中）

キャプション：前方でボールキープする渡邉知晃（花巻）。追尾する北原

キャプション：中央突破を図る小曽戸允哉（大分）

キャプション：指示を出しながら中へドリブルする木暮賢一郎（名古屋）

　午前のセッションは約１時間半で終了。明らかに攻撃にシフトチェンジした印象が強い。短いパスをつないでプレスを回避し、ピヴォに入れてラインを押し上げる。ミゲル監督が指向する「攻撃の形」が少しずつ見えてきた。