２/１(月)～３(水) 日本代表候補合宿レポート６

２/１(月)～３(水)、静岡県のエコパ・アリーナで開催された、フットサル日本代表候補合宿のレポート。

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第６回は１日目、午後練習のレポートです。１日目は16:30～の練習のみ。Fリーグの試合の翌日と言うこともあり、軽めの、回復系のメニューが中心に行われました。

　小森コーチの下、軽快なテンポでアップメニューがこなされ、その後はピッチ内で、ゆったりとしたパス交換。パス交換は全員で。パスを出す人の名前を呼び、パスを出す。全員が動きながらなので、必然的にルックアップと、名前を呼ぶことでコミュニケーションが図られる。パスを出すと見せて止めるフェイントを入れて相手をからかったり、ブルノが松宮のことを「アドリアーノ！」と呼んでパスしたりとリラックスした雰囲気。ゆっくりと、体と頭がほぐされていく。

まずは全員でのアップから。リーグ戦の疲れもあるだろうが、呼ばれるのは「光栄なこと」とトレーニングに励む選手たち

　軽くアップで体を動かした後、円陣が組まれた。「昨日、名古屋オーシャンズの優勝が決まりました。選手の皆さん、おめでとうございます。優勝すると思われるのは簡単でも、実際に勝つのは難しいことです」まずはミゲル監督が、名古屋オーシャンズの優勝を祝福。その後「１日目は回復系のレクリエーションを重視したゲーム形式のメニューを行うこと。２日目、３日目でプレス回避。最近始めたものを含め、４－０からのプレス回避についてももう少し具体的に指示を出していくこと。センカイ(※)、ライン、クアトロ(４－０)、３つのクリアランスからのプレス回避の形。ディフェンスについても引き続き、前からのプレス(２－１－１)と、ハーフから押し上げていくディフェンスをやること」が説明され、練習が始まる。

※ミゲルの言う「センカイ」は、４人がグルグル回ってパスを回す「旋回」ではなく、プレス回避の１つの形。ピヴォが前線で１枚張り、残りの３人は自陣で「L」の形になる。自陣の３人が旋回する(回る)中で、パスコースをつくる動き。「センカイ」というより、「回転」といった方がしっくり来るか。タイムズでは「旋回」と区別するために、「ミゲル旋回」と記載しようと思います。

　１つ目のメニューは鳥かご。スペイン語では「ロンド」と言うようだ。ピッチ全面が３つに仕切られる。一番奥のエリアは「両足を使っていいが、ダイレクト」。２つ目・真ん中のエリアは「フリータッチだが、(利き足ではなく)逆足のみ」。一番手前のエリアは「利き足のみ、ダイレクト」。３グループに分かれて、４対２。「エリアを移動してもOK」で、「鬼はルールも監視する」。「１回目のカットは交代なしで、２回目で交代」。「鬼は奪った後、鬼同志でパスを１回交換しないと、カットは成立しない」。まずは以上がルール。

　ミゲル監督のトレーニングの特徴は、"頭を使ってプレーすること"が常に求められることだ。ルックアップして周りを見たり、状況を考えたり、味方のコーチングを聞いたりすることは、プレーだけに集中し過ぎてもできない。『今このエリアはダイレクトか、フリーか。足はどちらか』常に考えながら、頭を使いながらプレーすることは大切だ。フットサル選手は"足"だけではなく、"頭"も使わなければ、いい選手になれない。代表選手でも鬼(ディフェンダー)のプレッシャーがかかったり、速いリズムのパス交換のまま、エリアが移ると、ルールを一瞬忘れてしまうことがある。どんな状況でも冷静にプレーすることは意外と難しいものだが、常に考えることが要求されるトレーニングとなっている。

　しばらくすると、「鬼は手を使って、(浮き球パスなどを)カットしてOK」。さらに「リターンパスなし」など制限・ルールが加えられていく。15～20分ほどプレーしただろうか･･･。最初の休憩が入れられた。

　２つ目のメニューは、２グループに分かれてのゲーム。ゴールは４つ置かれている。ルールはさらに複雑になる。「基本、シュートはクロス(ナナメ)のみ。両足使ってOK。常に２タッチ」で、同サイドのゴールにシュートできる条件は「２タッチで、ボレーか、頭、胸でシュート。つまり浮かせてシュート。ボレーのときは、右サイドは左足。左サイドは右足」。「全員がGKしてOK。シュートだけ手を使って防げる。パスは(手で防いでは)だめ」以上がルール。代表選手でも一度聞いただけでは理解しきれない。ミゲル監督のルール説明後、選手間で確認、ミゲル監督に質問するのがお決まりだ。「GKはどこまで手を使っていいの？」ワンサイドにゴールは２つ置かれている。「(通常の)エリアだけ」と答えるミゲル。これだと外側はほとんど前に出て手を使えない状態だ。後ほどこのルールにより、ハンドが続出する。(笑)

　ゲームが始まってもルールを理解し切れてない選手が居る。確認しながらのプレー。逆足で決めてしまった選手に「そっちサイドは左足だよ」ツッコミが入る。笑いが起こる。同サイドのゴールにシュートしようと浮かしたけれど、どっちの足で打てばいいか忘れてしまい、シュートが打てない。笑いが起こる。シュートに反応して手を出したが、エリアは弧を描いているので、外側は手を使える範囲が極端に狭い。ミゲル監督は容赦なくファウルを取り、PKをさせる。PKはGKが浮き球を出して、シューターがダイレクトボレー。「位置が悪い」シューターが何度も配球を選んで、また笑いが起こる。

　ミゲル監督のトレーニングのもうひとつの特徴は(頭を使うことにもつながるが)ルールが複雑なこと。そんなトレーニングを見ていて気づいたことがある。ルールが複雑だと間違ったり、ルールを一瞬忘れたり、迷ったり、必然的にミスが多発する。ミスが起こると笑いが起こる。ミゲルはルールを複雑化することで、トレーニングの中で判断力を養うだけでなく、ミス･･･いやミスから誘発される"笑い"を誘っているようだ。取材の中で「上下関係はぶっ壊したい。選手間のコミュニケーションを大切にしたい。そんな空気をつくれるよう、トレーニングも工夫している」というコメント通りだ。スポーツに(限らず)ミスはつきものだ。一所懸命やっていてもミスは起こる。ミスが起きたときに、ミスを追及する空気、許さない空気があれば、選手は萎縮してしまうだろう。トレーニングの中とはいえ、ミスを許容すること、失敗を笑いに変えてしまうこと、ミスが起きたときに、雰囲気を悪い方向ではなく良い方向に変えてしまうチームの空気は、こうしたところからもつくられていくようだ。

　３つめのメニュー。選手たちの給水中に、またゴールが"妙な形"にセットされていく。通常通り真ん中に置かれたゴールの前に、寝かしたゴールが設置される。「下のゴールに決めたら、次は上のゴールに決めること。上に決めたら下」というゲーム。「GKはシュートだけ防いでOK。ただし片手だけ。キャッチはだめ。エリア内は全員GKしてOK。プレーは２タッチ」

　シュートを上と下に打ち分ける狙いもあるのだろう。足を使えないが、GKの待つゴールにグラウンダーのシュートも難しいし、寝かされたゴールが距離感を狂わせて、上のゴールへのシュートも難しい。ここではGKの川原がゴール前に立って腰を落とした低姿勢から、手だけでファインセーブ連発の場面も。
　ふとしたキッカケでボールが寝かしたゴールのネット上に乗ってしまう。「これもうアウトでしょ？」言っているうちに攻撃側のブルノがネットの下から突き上げて、上のゴールに入れる。「ゴール！」ミゲルが認めて、守備側の選手たちが崩れる。このメニューでも笑いが耐えなかった。

　４つめ。この日最後のメニュー。今度はゴール２つが、センターラインを背にした状態で置かれる。両チームとも真ん中のゴールに向かって攻める格好になる。ゲームスタート前に、選手たちから作戦タイムが要求された。(笑)
　「GKはシュートだけ手を使って防いででOK。GKがキャッチしたら、攻撃交代。２タッチ」作戦タイム後、それぞれのポジションに散っていく選手たち。ディフェンスする選手、奪ったボールを(反対側の)攻撃側の選手に送る選手、ゴールを狙う選手、主に３つの役割に散らばる。時折、ゴールとゴールの間に入るボールを拾いに行く選手も出てくる。いきなり示されたルールに対し、臨機に考え、プレーすることが求められる。フットサルをやれば、フットサルの経験者、ベテランが必然的に幅(口)を利かせてしまうだろう。誰もが初めてやるゲームなら、誰がリーダーシップを発揮するか、誰がちゃんと意見や質問をするか、フラットな状態からどうグループがつくられるかもわかって、面白い。

　念入りなダウンが行われ、１日目のトレーニングは終始なごやかムードの中、終了した。

優勝を決めた翌日に合宿入りの名古屋・北原。これがあるから「はじけれなかった」とポロリ。息つく暇も無しだ

明るいキャラクターで雰囲気を盛り上げていた町田の滝田

トレーニングは終始、リラックスした雰囲気で進む。ルール間違いに突っ込む小宮山

まるで子どもを見つめる父親のような表情で、選手たちのトレーニングを見守るミゲル

ルールの確認をする木暮と小曽戸

「日本人ナンバーワンのパサー」ミゲルの高い評価を得る北海道の菅原。体調を崩し、２日目・３日目はお休みとなった

「居場所を感じる」代表に意地でも残りたいとコメントを残した町田の横江

ゴールが決まるごとに、歓声と笑いが起きる

ゴールに入り込んでしまった吉田がよじ登って外に出る。関西人らしく、常にツッコミを入れながら練習をこなす。声も良く出ていた

フットサル日本代表はこの後、３月下旬から４月頭にかけてスペインに遠征。スペインの数クラブと対戦後、４カ国トーナメント(日本、スペインとあと２カ国)に出場予定。ゴールデンウィーク明けには国内で壮行試合が予定され、５/23(日)～30(日)は、ウズベキスタンのタシケントで開催される、アジア選手権に出場する。

レポート・北谷仁治

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