退屈な35分と、激動の５分/大阪×神戸

Fリーグ 2009 第22節シュライカー大阪×デウソン神戸

日時：2010年１月24日(日)
会場：岸和田総合体育館

　大阪のホームゲームが面白い。

　この日は両チームとも決定打に欠け、ゴールネットが揺れない。35分間は"凡戦"に近い内容だったが、残り５分、シュライカーがエビーニョのパワープレーに出るとゲームは大いに動き、ラスト０秒まで両チームのゴールチャンスが行き来した。

　前半は完全に大阪のゲーム。

　７.エビーニョのオープニングシュートを皮切りに、15:29には、14.林のサイド突破からのシュート。こぼれ球を30.松宮が狙うが決まらない。その後も24.村上のミドル、30.松宮がトラップで上手くサイドを縦に突破してのシュートなど、ボールを支配しながら、神戸ゴールを脅かし続ける。
　しかし村山に代わって、この日ゴールマウスを守った12.田中が的確に防いでゴールを許さない。「守備から入った」(10.藤川)神戸が固く引いて守ったこともあり、シュートがディフェンスにブロックされるシーンも目立った。

　対する神戸は、12:49にようやく１本目のシュート。11.山田ラファエルのミドル。イゴールがはじいたが、こぼれ球は20.鈴村が押し込めず。02:01には、大阪３.吉成(この日のキャプテン)がスリップしたこともあり、ディフェンスが一瞬乱れたところを、17.千綿リカルドが足裏で押し出したパスを、20.鈴村がシュート。これはわずかにコースを外れて、神戸、前半最大のチャンスもゴールならず。「大阪がピヴォへのコースを切っていた。原田さんとも話しましたがボールが来ず、今日は『消化不良』です」と、10.藤川がコメントを残したとおり。頼みのピヴォへのパスコースも遮断された神戸は結局、前半は３本のシュートに留まった。

　大阪は01:50、11.ドゥダが完璧なトラップで中に切れ込んでシュートに行くが、これもブロックされてしまう。

　00:23 神戸は、大阪ゴール近くのキックインでタイムアウト。"セットプレーから点を取る"。神戸は狙いのあるタイムアウトを取るようになったところにも変化が見られたが、ここは上手くシュートまで行けず。前半は結局、０－０での折り返しとなった。

　後半立ち上がりは、大阪がボールを支配しながらも、神戸に再三のチャンス。

　18:54 飛んできたこぼれ球を11.山田ラファエルがシュートに行くが、大阪ゴレイロ１.イゴールが足に当てて防ぐ。この日も大阪はイゴールの壁が厚い。神戸も決定的なチャンスがいくつかあった。イゴールでなければ１・２点は入っていたかもしれない。
　17:29 神戸は20.鈴村の逆サイドへの折り返しが、15.伊藤と合わず。14:15 左サイドから15.伊藤のシュートもイゴールがセーブ。大阪11.ドゥダのボールがカットされてのピンチもイゴールが防いだ。

　06:41 大阪は24.村上がカットボールを持ち上がって、中へ折り返し。受けた11.ドゥダのシュートはポストを叩く。久々の大阪のビッグチャンスに場内は大歓声。(いつもながら、いい雰囲気の大阪ホーム)
　大阪は15:38にも、24.村上が神戸10.藤川を縦に振り切るが、ゴールならず。05:02、ついに７.エビーニョをゴレイロに入れて、パワープレーに出る。

　大阪のパワープレーはこの頃、"エビーニョ劇場"と化す。

　前回の岸和田の大分戦でも、相手の攻撃時にエビーニョとイゴールが代われそうで代われず。そのままエビーニョがゴールマウスに戻って、"チームと一緒に"サポーターもハラハラする場面があった。
　この日も神戸のカウンターを抑えたエビーニョが抑えるが、キャッチしたハズのボールをポロリとこぼして、場内の笑いとドキドキ感をあおる。
　神戸はパワープレーに対する守備でも"変化"を見せた。大阪のパワープレーに対し、機を見て前の２人が一気にプレス。パスコースに詰まったエビーニョが苦し紛れに24.村上へ。村上もつなげず、外に(クリアで)逃げるまで追い込んで見せた。

　04:01 パワープレーが思うように機能しない大阪はアドリアーノ監督が迷わずタイムアウト。後方の両アラがサイドに張っていた形から、中央に11.ドゥダを居れ、「ボックスの形でラインも下がっていた」相手に対し、ひし形になることでギャップを誘う。
　01:27 右サイドの10.岸本からゴール横、３.吉成にパスがつながったが、吉成のシュートはゴール上。

　神戸はピッチ上の20.鈴村の指示を合図に、大阪の変化に対応。神戸もひし形となって、ゴレイロにまでプレスをかける。それでもうまく大阪がチャンスをつくるが、３.吉成の逆サイドへのパスは13.一木と合わず。場内の歓声は大きなため息に変わる中、神戸のカウンター。数的有利になっていたが、ボールを持ち上がった11.山田ラファエルが若干プレーに迷ったか？シュートまで行けなかった。

　00:37には大阪のシュートをキャッチした12.田中から神戸のカウンター。しかし審判がアドバンテージを取らず、直前の大阪のファウルを取ったことにベンチの比嘉リカルド監督が「流せよ！！」と激昂する場面も。

　残り８秒、大阪は11.ドゥダが神戸20.鈴村をかわしてシュートまで行くが決まらない。逆に神戸のカウンター。７.原田がドリブルで持ち上がって残り２秒。打ったシュートを、ゴレイロ７.エビーニョが横っ飛びでキャッチしたところでタイムアップ。チャンスが一転ピンチになる、フットサルの醍醐味が試合終了直前まで詰まったゲーム。試合終了と同時にスタンドからは「こりゃ、スタンディングオベーションだよ」という声まで漏れ聞こえた。

　それでも欲を言えば35分までのゲーム展開でも"魅せて"欲しかった。

　この日キャプテンを務めた大阪３.吉成は「引いて守ってくると思った。深いポジションを取って高い位置でパスを受けることを狙った。相手の攻撃に対しては、個人技があるので、ドリブルに対して負けないように。あとはピヴォ当てで来るので、ピヴォへのパスコースを切るように」と語ったとおり。神戸に対する予想は全て言葉どおりで、予想外のことも、予想以上のことも神戸はして来なかった。後は大阪がゴールを奪うだけ･･･。だったが、その"１点"が奪えなかった。
　アドリアーノ監督は「神戸が守備をコンパクトにしてよく守っていた。監督も代わって、やり方もよくなってきたと思う」と相手を称えると同時に「いいゲームができた。結果に対しては残念だけれど、選手たちには感謝の気持ち」と味方も称えた。名古屋との勝点が離れて優勝の可能性は限りなくゼロに近い状況ではあるが、どこか勝利に対する貪欲さが感じられない、淡白な会見だった。

　一方の神戸は「ディフェンスは良かったが、攻撃ではパス回しが思うようにできなかった」という、比嘉リカルド監督の言葉が全てだろう。狙い通り、引いて守って、少ないチャンスから決定機もつくったが、まだまだ自分たちでボールを回して、ポゼッションを取ってという段階までは行っていない。シュートも前後半あわせて８本では"超攻撃的フットサル"を掲げる神戸でなくとも寂しい数字だ。

　神戸は会見で審判のジャッジについて、憤りのコメントを残した。

　15.伊藤キャプテンは「リーグ側も一緒に考えて取り組むべき問題。選手の努力だけに頼るのは限界」とし、比嘉リカルド監督も会見終了後、記者に向けて「みなさん、レフェリーのレベルはどうですか？」と逆質問する異色の会見となった。