原田１ゴール１アシスト！申し分ない勝利/神戸×府中レポ

Fリーグ 2009 第11節デウソン神戸×府中アスレティックFC

日時：2009年11月１日(日)
会場：グリーンアリーナ神戸

フィールド８人で挑んだ府中。総合力の差が現れてしまった

原田の復帰戦を勝利で飾った神戸。反撃開始なるか･･･

　287日ぶり。神戸のエース・原田浩平が返って来た。チームも原田の戦列復帰を祝うかのように４－１で府中に快勝。先発した原田も１ゴール１アシスト。いきなり結果を出した。神戸の勝利に―。原田の復帰に―。この日ホームに集まった2,055人(今季最高入場者数)のファンが酔いしれた。

　「今日は原田がすべてです。勝ってホッとしています。それだけです」試合後の記者会見。泰澤監督のコメントは過去最短だった。それだけこの日の勝利は申し分なかったのだろう。ケガにより長期戦線離脱させていた原田を先発起用した試合で、無事結果を残した安堵感と、さらには原田がアシストとゴールまで記録したことで、神戸にとっては"これ以上ない勝利"という充足感があったのかもしれない。
　記者からの「原田選手が入ってチームが変わったところは何ですか？」という質問に対し、「お客さんがよく入ることです」とすかした答えをした後、自ら泰澤監督が吹き出すと、横に居た伊藤キャプテンもふざけ気味(？)の泰澤監督を横目に見て、笑みを浮かべた。試合後の神戸の記者会見は"安堵感"に満ちていた･･･。

　府中のキックオフで始まった試合。神戸のファーストセット(７.原田、11.山田ラファエル、14.西谷、15.伊藤、ゴレイロに２.村山)は"ハーフ"が基本の慎重な立ち上がり。この日も14.西谷の動きがよく、積極的なシュートが効果的だった11.山田ラファエルとともに、チャンスを掴んでいく。戦列復帰の７.原田は右サイド高めのポジションでボールを受けたのがファーストプレー。ノールックで縦パスを狙ったがディフェンダーに引っかかってしまった。いきなりの"トリックプレー"は原田らしいが、"試合勘"という面ではやはりまだまだ。その分"完全復帰"という楽しみは今後に持ち越されたと言って良い。

　府中の先発(３.森、８.皆本、11.清水、12.小山、ゴレイロに１.富澤)はピヴォの小山をターゲットにするもチャンスらしいチャンスは掴めず。セカンドセットに代わっても、ゴレイロからのスローをゴール前で４.安川がコースを変えたのがわずかに神戸ゴールを脅かしたシーン。前半通じて"決定機"というチャンスはつくれず。頼みの７.上澤もパスの意図が合わずに首をかしげるシーンが象徴的だった。

　ちなみにこの日の府中は、小野が出場停止。鳩野と永島が日本代表として、アジアインドアゲームスに出場中。難波田がケガで、ベンチは入りゴレイロ３人を入れて11名。フィールド８人という苦しい戦いだった。

　試合が動いたのは８分。セカンドセット(４.山元、８.三井、16.須藤、19.山蔦)に代わった神戸は、山蔦を中心に積極的に前からプレスを仕掛けていた。８分、そのプレスがはまってクリアボールを体に当てた19.山蔦が、相手のチャージにも押し負けず、ボレーでこぼれ球を押し込んだ。
　選手層の厚い神戸はファーストセットからセカンドセットに移行するまでに、７.原田に代えて９.岡崎チアゴを投入。先制点の後も、山蔦と岸田、三井と岡崎チアゴを次々と交代するなど、余りあるベンチの駒をフル活用していたのが苦しい府中とは対照的だった。特にピヴォに関してはこの日復帰したエースの原田、岡崎チアゴ、三井の３人に加えて、５.岸田がピヴォで張る時間もあった。この日出場停止の脇、アジアインドアゲームス出場中の藤川を加えると神戸は５人の個性的なピヴォが顔を揃えることになった。ポジション争いは高いレベルで激化しそうだ。

　府中は７.上澤、４.安川らが遠目からのシュートも狙うが、前節から好調をキープする２.村山が確実にセーブ。

　神戸は20分、岡崎チアゴがペナルティライン際で倒され、ポイントが"内か、外か"言い合っているうちに、素早くリスタートしたが、４.山元のシュートはポスト。カウンターから９.岡崎チアゴがうまくディフェンダー２枚の間を浮かせてサイドに送ったボールを、受けた５.岸田が中に切れ込んでシュート。ディフェンダーに当たってこぼれたボールをもう一度シュートに行くが、外れて、前半は１－０のまま終了する。

　後半に入ると、「フィジカル・メンタル両面が落ちてしまった」(セルジオ・ガルジェッリ監督)という府中がミスから失点を重ねていく。「前回の神戸戦とまったく同じ形･･･」と８.皆本、７.上澤ともに悔やんだのが２失点目。24分、自分たちのコーナーキックを中途半端に下げたボールをさらわれたカウンターから決められてしまう。ちなみにカウンターのボールを受けたのは神戸７.原田。原田が右サイドをドリブルで進むにつれ、『復帰ゴールだ！』と場内のボルテージが上がったところで原田は大きく左へボールを振る。ここに駆け上がった11.山田ラファエルがフリーで合わせて２－０。「速攻なので確実に決めないといけないと思った。ラファエルがフリーでなければ自分で打とうと思った」という原田の冷静な判断が追加点に結びつく。復帰戦で早く結果を出したいであろう中、またサポーターからゴールの期待が高い中、チームプレーに徹したエースのプレーの選択に、逆に"成長"を感じ取ったサポーターも多かったのではないか―。

　神戸は26分、コーナーキックから、19.山蔦がダイレクトシュートで２点目を決めて３－０。このシーン、府中は逆サイドで待つ山蔦のマークがポッカリ空いてしまっていた。「どうしても集中が切れる時間がある」(セルジオ・ガルジェッリ監督)、「ちょっとしたミスでやられてしまう」(８.皆本)と嘆くのがこのあたりだろう。何人かの選手が抜けていて、人数が少なかったこと、連携が乱れたことは推測できるが･･･、「人が少ないことは言い訳にできない。それも含めた競い合い。それで力が落ちてしまうなら、力の無いチーム」とは７.上澤。「１点差のゲームも多かったので、キッカケがあれば浮上できると思っていたが、ちょっとの部分を大きな差と認識してやっていくしかない」と重い言葉を残した。

　神戸は３点をリードしてもなお前からプレスをかけ、積極的に勝利を奪いに行く。39分、府中はゴールスローを受けた４.安川が神戸４.山元をかわし、縦に突破。角度の無いところから強引に放ったシュートが、神戸ゴレイロの村山に当たりながらもゴール内に転がって１点を返す。

　しかし神戸は残り１分を切って、再び７.原田を投入。すると残り27秒。左サイドからのキックイン。16.須藤が後に戻すと見せて、中央のスペースに出したボールに反応した７.原田がダイレクトシュートを叩き込む。神戸は最後に７.原田の復帰ゴールまで決まって、府中に快勝。"これ以上はない"と思える、原田の復帰戦となった。

　府中・セルジオ・ガルジェッリ監督は「今日の試合に関して、多く言うつもりはない。前半のデキからいい結果が出ると思いましたが、後半は違った結果になりました」と力を落としたコメント。「いい試合をしながら結果が出ない点を早急に変えないといけない」と課題を上げ、「ひとつ結果を出せれば自信ができて飛躍していけると思う」と答えた。神戸に対しては「終始プレスをかける」これまでの戦い方を踏襲したが、うまく行かなかったようだ。人数が少なく「難しい状況に合った」と嘆く場面もあったが、果たしてそこだけに敗因を持って行ってしまってるとしたら、チームは変われるだろうか･･･。

　８.皆本は"ボール回し"に課題を挙げた。「考えながらやってしまっている。ボールを持っている選手以外が止まってしまっているので、相手は守りやすいと思う。もっと動いてサポートする必要がある」(８.皆本)。７.上澤は「引いて守る相手に対してどう攻めるかが課題だった。サイドに振って、振って、同サイドのピヴォに当てる狙いがあったが、うまく意図が合わない場面もあった」と話す。サイドでの勝負と、ピヴォ当てに府中の攻撃のポイントがあるようだが、ピヴォ当てはまだしも、サイドで勝負できていたのは８.皆本ぐらい。サイド勝負に関しては、１対１の精度を上げるとともに、ドリブル勝負の場面でも、皆本の言うようにサポートをつくっておいてから、(パスの裏をついて)ドリブル勝負する工夫が必要になってきそう。ピヴォ当てに関しては12.小山、４.安川らに"収まる"ところまでは行っているので、その後の展開の広がり・共通イメージなどが大事になってくるのではないか･･･。

　一方の神戸は前節・大阪に痛い敗戦を喫しながらも「今週は浩平が戻ってくることでテンションが上がった」(泰澤監督)と、特にメンタルの回復は難しくなかった様子。原田に関しては「正直キレは戻っていない」としながらも「ボールは収まるし、点も取りましたし、アシストもできる。全てできる選手」と復帰を喜んだ。
　伊藤キャプテンも「今日は特にありません。原田くんに聞いてください」と原田へのインタビューを促した後「すでに次の花巻戦に向けて、気持ちは切り替わった。前回の屈辱は忘れていない」とし、「次の花巻戦に原田を使うかは微妙」とも明かした。自身のブログで原田選手の復帰はチームにとって『ギフト』と表現していた伊藤選手(この場合はコーチの敬称を使うべきか･･･)。ある意味、この試合の出場は長期間、ケガに負けず頑張ってきた原田選手にとっても『ギフト』だったのかもしれない。原田選手が真のエースとして、再び実力で戦列復帰し続けるには、プレーで"完全復活"を見せつける必要がありそうだ。

　当の原田は試合直後、「チームのみんな、サポーターのみなさんのおかげでこの舞台に帰って来れたと思います」と感謝の言葉をサポーターへ送っていた。先発出場については「伊藤さんのブログで知りました」という原田。久しぶりの試合については「気持ちいい。でも昨日は寝れなかった」ようで、「まずはチームが勝てたこと。ケガをしなかったこと」を喜んだ。まだこの日に向けても試合は「練習試合を３試合ぐらい」しただけのようで、最初は「キープできない。ドリブルできないで、これはヤバイと思った」と言う。「一週間ぐらい前からキープが徐々にできるようになった。試合勘は少しずつ。これから」と話す。外から見ていて(名古屋も含めて)「勝てないチームは無い」と感じていたと言う原田。神戸に、Fリーグに、"足りないピース"が戻ってきた。この日の快勝は文句のない内容だったとしても、神戸にとっては勝点『３』ということに変わりは無い。この日の勝利を大きなものにするかどうかは、(原田を加えた)神戸の、今後の戦いぶりにかかっている。