上位らしい勝ち方、下位らしい負け方/大阪×湘南レポート

　湘南はべったりハーフより下がって守る立ち上がり。１分、10.岸本のファーストシュートは湘南ゴレイロ12.阿久津が足でセーブ。

　湘南も出だしはカウンターからチャンスを掴んだ。３分、カウンターのカウンターから、中央９.江藤から左に流して、１.ボラのシュートはコースを逸れる。
　湘南はピヴォで張る１.ボラが、試合を通じて圧倒的な存在感を放った。５分、ボラが左サイドを破って折り返したボールは９.江藤が浮かしてしまう。６分にも左のボラから右のシニーニャにいいパスが通ったが、シニーニャがもう一度ボラに返そうとしたボールをディフェンダーにカットされてしまう。この場面、受けた７.シニーニャは前を向いてシュートに行った方が状況は良かった。ややボラに"頼り過ぎ"るにも映るシーンだった。

　大阪は７分に、24.村上から中央の３.吉成へ。吉成が中央のディフェンダーをブロックしながら、うまくヒールで後方に流したボールを９.奥田がシュートに行くが、湘南ゴレイロ阿久津が反応。

　大阪の先制ゴールは９分、24.村上が得意のミドルシュートを叩き込む。村上はこれがまだ今季２ゴール目だが、強烈で、かつ枠を的確に捉える村上のミドルは、大阪の大きな武器のひとつになってきている。代表でもファーストセットを担っているが、日本人でこうした精度の高いパワーシューターが育ってきたのは嬉しい限り。

　11分には９.奥田が追加点。右サイド、ボールの奪い合いに競り勝った奥田が縦に突破して、思い切りよくミドルシュート。これがバーの下を弾きながらもゴールに収まり、２－０。湘南はゴレイロが３人登録されているが、正GKが定まらないのが下位低迷の要因のひとう。冨金原の出場停止もあったが、この日は大阪に、遠目からのシュートも果敢に狙われてしまった。

　14分には30.松宮が左サイドを破って、折り返しを14.林がゴール。松宮は、対峙するディフェンダーの股下を通して、縦に鋭く突破すると、中で待つ14.林の足元にピシャリと通す、キレイなゴールだった。

　最後尾でボールを奪われるなど、ボールの失い方もまずい湘南は前半だけで、３点のリードを許してしまう･･･。

　一方的な試合になるかと思われたが、後半序盤は湘南が盛り返す。

　後半開始30秒後から、７.シニーニャをゴレイロに入れてパワープレー開始。22分、そのシニーニャが中央が開いたところ、シュートを決めて、１－３。さらに23分には大阪13.一木のハンドで得たPKを１.ボラが決めて、２－３と１点差に迫った。

　しかし湘南が１点差に迫っても、"大阪危うし"の風は吹かなかった―。

　28分、大阪は７.エビーニョが右サイドを破って、折り返しを９.奥田がスライディングで合わせて、４－２。サイドが変わっただけで、３点目の同じような形。湘南は１対１のディフェンスに"簡単に負けすぎた"のと、折り返しをカバーに行ったゴレイロ阿久津が振り返って、怒りをあらわにしたように、カバーリングがあっさりマークを外してしまっていた。湘南はボラも試合後「ゴレイロはもっと努力して欲しい」と語ったように、GKがひとつの穴となってしまっているが、このシーンのように、ゴレイロだけを責めれない場面も目立った。最初の１対１をかわされるミスに、カバーリングが遅れるミスが重なっては、失点もいたしかたないところだ。

　大阪は32分に30.松宮がミドルシュートを決めて、５－２。この日先発のゴレイロ藤原からのパスがつながらない時間帯もあったが、35分には右コーナーキックから、逆サイドに浮かせた球を22.佐藤が決めて、６－２とリードを広げていく。佐藤は嬉しいFリーグ初ゴールで「嬉しい。やっと。ホッとした」と言葉を残した。

　パワープレーを続ける湘南だが、攻撃のパターンが無く、ひたすらディフェンスのズレを待つ単調な流れが続いた。
　39分、大阪はカットボールを自陣から、10.岸本が決めて７－２。最初のタイミングでは打たず、持ち直して、ゴールをよく狙いすまして決めた、コントロールショットだった。

　湘南も39分にカウンターから、９.江藤から、左の８.岡部へ、岡部がファーサイドポストの11.曽根田に送って、曽根田の落としを１.ボラが突き上げるシュートで、３－７としたが、反撃はここまで。キレイな形のゴールだったが、試合の中(勝敗が決する前)で、決めて欲しいゴールだった。
　大阪はホーム４連勝。岸本キャプテンの掲げる公約「ホーム絶対勝利」を守って３位浮上となった。

　「点差のとおり。力の差が出た。攻守すべてにおいて、負けてしまった」と正直な感想を漏らしたのは湘南・奥村監督。いまだ未勝利。いま最大の課題については「集中力」と答え、取るべきチャンスで点を取れていない状況、ひとつのミスが試合の明暗を分けてしまっている現状を嘆いた。
　神戸戦の後「個々のできること、できないことを確認して、チームとして助け合いながら、いい所を出して行こう」(大阪・アドリアーノ監督)と話したという大阪は「選手全員が高いモチベーションで、いい戦い方ができた」と振り返った。言葉の裏にはパフォーマンスをしっかり出せば、簡単には負けないという自信が伺える。
　この日のゴレイロはイゴールでなく藤原。「神戸戦ではキーパーのミスが明らかに出た。藤原にチャンスを与えるのと、イゴールに(反省を促し)モチベーションを上げるのと、両方の理由で藤原を起用した」と説明。40分間、ベンチから、チームメイトの活躍を目にしたイゴールに、再び闘志は漲っただろうか･･･。

　湘南の江藤は「やらなければいけないことは、たくさんある」と現状を分析。「個がいいのもわかるが、もっと組織の中で個を出すようにしていかないと。個では通用しない部分がある」と訴える。「内容はぐだぐだでもいいので、とにかく勝ちが欲しい」切実な願いは大阪まで応援に駆けつけたサポーターたちも、同じ気持ちだろう･･･。

　ひとりでチャンスメイクもフィニッシュも求められているような活躍ぶりだったボラも「決めるところ、決めないと･･･」と前半のチャンスを振り返る。「攻撃はいいが、守備がルーズ。あとGKはもう少し努力して欲しい」と訴えた。「３年間名古屋に居て５回しか負けていない」のに、８節終えて、６敗目を喫したボラ。「自分が点を取らなきゃ。という意識は強い。日々努力はしている」という努力が報われる日はいつ来るのだろうか･･･。

　一方の大阪は嬉しいトピックがいくつかあった。

　ひとつは９.奥田の復活。ベンチ入りに外される期間も長かったが、この日は２ゴールでMVPも獲得。「長かったけど、自分が招いたこと。満足はしていないが、ホッとしている」とこの日の試合を振り返った。
　22.佐藤には嬉しいFリーグ初ゴールが生まれた。「まだまだ足りていない部分もあるが、アドリとマンツーマンでビデオを観て確認するなどして、(大阪のパス回しの)イメージはつかめてきている」と話す。まだまだセカンドセットのボール回しはスピードも展開力もアドリブも弱いが、佐藤がピッタリはまってくれば、さらなるチーム力アップが期待できる。

　チャンスはありながらも、チャンスを逃し続けて敗れた湘南。決して高いパフォーマンスではなく、湘南の反撃も浴びながらも危なげなく勝ち切った大阪。下位に低迷するチームらしい負け方であり、上位をキープするチームらしい勝ち方のゲームだった。

　湘南は早く１勝目が欲しい。まずは次節、ホームで現９位の花巻を迎える一戦に全力集中か―。これまでにも接戦や引き分けも多いだけに、自信を取り戻せば混戦のFリーグ 2009に拍車をかけてくれるチームであることに期待しつつ、一時(いっとき)も早い復活を待ちたい。