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2009/03/18 11:24:19

「ブレなし」フウガ、ついに満願成就!/全日本決勝レポート


 自陣センターサークル付近にいたFUGA MEGURO(以下、フウガ)星翔太が、天井に向かって突き上げた右手の指を折っていく。
 3、2、1……。
代々木第一体育館に渦巻く悲鳴のような歓声に合わせて最後の指が折れた瞬間、タイマーは00:00を表示し、偉業は達成された。6対4フウガ勝利。名古屋オーシャンズ(以下、名古屋)を退けて全日本選手権初制覇。もう一方の当事者である“プロチーム”の面々は一様に色を失っていた。
 
第14回全日本フットサル選手権決勝は、異様なムードの中キックオフされた。スタンドは完全にフウガびいき。Fの2位(浦安)、3位(神戸)を撃破したフウガが、ついにF最後にして最大の牙城を崩すか。観衆の興味はそこに集約されていた。
 名古屋は北原亘、木暮賢一郎、マルキーニョス、シジネイでボールキープする。正確無比なパス回しはプロとしての矜持を誇示するかのようだ。フウガのスタメンはゴレイロ石井秀樹、太見寿人、関健太朗、田中良直、金川武司。須賀雄大監督が「このメンバーでゼロにおさえて行けば、必ず流れが来る」と、そのディフェンス力を信頼して送り出した5人だ。

 フウガの選手たちにはある狙いがあった。「名古屋は切り替えが遅い。1次ラウンドで対戦してみてそう思ったし、準決勝の大阪戦の映像を見てもそうだった。だからカウンターで点が取れるんじゃないかと」(星翔太)。ゾーンで守るファーストセット、積極的にプレスをかけに行く星兄弟、荒牧太郎、佐藤亮のセット。ボール支配は名古屋だが、チャンスの数は互角のまま時間が進んでいく。


先制は名古屋だった。10分、右サイドからのマルキーニョスのキックインが、フウガ・関に当たってゴールに吸い込まれる。不運とも言える失点。しかし「あれはむしろ相手のミスキック。狙って取った点ではない」(須賀監督)と、フウガの選手たちに下を向く様子はなかった。
 ダメージなし。ゲームプランに変更なし。フウガは先制された1分後にあっさり追いつく。ペナルティエリア左で太見が粘り、最後は金川がゴールに蹴りこんだ。さらに14分、高い位置でボールを奪った荒牧がゴレイロ定永久男との1対1を制して右足トウで逆転弾。その30秒後にはフリーキックから佐藤が決めて3点目。「切り替えの早さ」を活かした狙い通りの3ゴール。フウガベンチのみならず、会場全体が蜂の巣をつついたような騒ぎだ。
 前半はこのまま3対1で終了。「関東最強」が「F最強」を凌駕する!? そんな歴史的瞬間を予感させる内容に、場内はざわめきがおさまらなかった。

 後半キックオフ。名古屋は前半とは異なり、森岡薫、上澤貴憲、丸山哲平、ボラでスタート。フウガは前半同様太見、関、田中、金川。この大事なゲームでも「難しいことはそぎ落とす。できるだけシンプルなプレー選択で失点をしないように」(佐藤)という、今大会のフウガのやり方は徹底されていた。かさにかかって攻め込む名古屋の裏をついて22分、太見が金川とのパス交換からループシュートを決める。これで4対1。名古屋が後半に3点リードを許すのは今季初めてのことだ。
 まさに非常事態。23分、名古屋は北原をゴレイロに据えてパワープレーに打って出る。

 24分にシジネイ、25分にマルキーニョス。名古屋が狙い通り、キャノン砲2枚の強烈シュートで追い上げる。28分には右サイド完山から、狭いスペースを縫ってファーの木暮にパスが通り、ついに4対4。やはり名古屋か。会場内の期待感がしぼみつつある中で、須賀監督は勝利への確かな道筋を見出していた。
「パワープレーというのは必ずほころびができる。僕はそう思っています。今日もこちらが対応するまでに同点にされてしまったが、名古屋はその後もパワープレーを続けてきた。絶対に(ゴールを)とれると思いました」
 
 パワープレーについてのこの考え方こそ、フウガの進化の証だ。フウガは今季の関東フットサルリーグで序盤に2敗している。6月28日の第2節カフリンガ東久留米戦と、8月10日の第5節フトゥーロ戦。どちらのゲームもゴレイロ石井を上げてパワープレーに転じたものの、後手を踏んで苦杯を喫した。「パワープレーにはメリットがない。(リードされても)パワープレーをやればいいと思って、中途半端な気持ちが生まれるのが嫌」という須賀監督のメンタリティは、こうした苦い経験を確実に血肉化したことを物語る。
 Fリーグで外国人監督がさまざまなパワープレーのコンセプトを提示している中、自らのチームを見極めて、こうした哲学を貫くのはかなりの勇気が必要だろう。だが須賀監督はそれをやってのけた。相手パワープレーから決勝点を奪った浦安戦でもそれを実証した。

 話を名古屋戦に戻そう。
 名古屋パワープレー開始から、木暮の同点ゴールまでに費やした時間は約5分。「技術の高い選手がそろった名古屋のパワープレーは、慣れるまでに時間がかかった」(須賀監督)が、逆に言えば“たった”5分間でフウガは見事にアジャストした。向かって左のマルキーニョスは金川が潰す。右シジネイ、中央北原のパス交換は星翔太のシャトルランでチェックする。3ゴールという犠牲は払ったものの、監督の指示、選手の判断で何度も微調整を施し、フウガは4対4という均衡を保ったまま名古屋の封じ込めに成功。再度の逆襲に転じようとしていた。

 クライマックスは35分に訪れた。カウンターから星翔太がゴールに迫り、ペナルティエリア左外で相手ファウルを誘う。荒牧が蹴る。壁に入ったシジネイが猛然と前に出てブロックしようとするが、ボールは彼が動いてできたスペースを破ってゴールに突き刺さった。
 フウガ、ついに再度の勝ち越し。チャンスを確実に得点に結びつける決定力の高さが、ここでも発揮された。名古屋はその後もパワープレーで懸命に攻め立てるが、パス回しのリズムは単調なまま。フウガのディフェンスからはもはや余裕すら感じられる。
 残り時間7秒、ゴレイロ石井からのボールを左から金川がダイレクトで流し込んでだめ押し弾が決まる。生命線の「切り替えの早さ」をこんな時間帯でも表現できるとは。名古屋、最後のキックオフ。冒頭の星翔太によるカウントダウンの横には、敗戦を受け入れたように1人ボールをこねくり回すマルキーニョスの姿があった。

 名古屋・北原は試合後に「相手の方が気持ちが入っていた。すべてが上だった」と、かつてのチームメートに賛辞を送った。アジウ監督は「こういう試合は、集中して臨める状況でないと難しい。相手はひとつにまとまって戦っていたが、ウチはそうではなかった」とプロチームならではの“事情”を口にした。

 一方、プラン通りの試合運びで優勝を決めた須賀監督は、いつもより少し熱を帯びた弁舌だった。「いちばん一生懸命やったチームが勝っただけのこと。勝負は95%が気持ち、残りの5%が技術だと思っています。気持ちを常に出し続けられるチームはそうそうないけれど、ウチは選手全員が勝ちたい気持ちを出し尽くせる。技術より大事なものを持っている。それが結果に出たんだと思います」。
 新キャプテンとして、今年のフウガを引っ張った佐藤も言う。「今シーズンの目標は最初から全日本優勝。自分たちはFのチームに勝てる。それをずっと信じていました。そこがブレたらやっている意味がない。1年間ブレなかったから優勝できたんだと思います」

 全日本選手権でのフウガを「リーグ戦と戦い方が違う」と評する声もあった。だが彼らにとっては、目視できる「戦い方」など枝葉に過ぎなかったのだ。チーム全体に浸透した攻守の切り替えの早さと、パワープレー戦術への透徹した視点、そして己とチームメートに対する信頼。フウガはこの3つの武器を、須賀監督の巧みなチームマネジメント、佐藤の卓越したキャプテンシーで1年間じっくりと磨いてきた。そして、それを最高の舞台で、いつものように使うことができた。どんな時でもブレずに、自分たちのやり方を信じ続けた。彼らが頂点を極めた理由はそこにある。

 超・地域リーグの実力を満天下に示したフウガ。だが喜びに浸るのもつかの間。20日には地域チャンピオンズリーグが開幕する。「明後日から練習です」(須賀監督)。選手権優勝を決定させた30分後のミックスゾーンで、彼らは早くも次のタイトルへの意欲をみなぎらせていた。


レポート:橋爪 充





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