ケンゴよ、わがままになれ!

「日本代表」の肩書のバーゲンセール――。ミゲル・ロドリゴ監督がアジア・インドアゲームスに連れていった日本代表選手を見ると、ついつい、そんな言葉が思い浮かんでしまう。所属チームで主力になっている選手は数えるほどで、ほとんどの選手が「まだまだこれから」の選手なのだ。

そんなダイヤの原石たちの今回の遠征をきっかけにして、一皮むけてほしいなと思っている選手がいる。それがバルドラール浦安の諸江剣語だ。どうして諸江に肩入れしているのかというと、彼を初めて見たときの印象があまりにも鮮烈だったからだ。

2006年の第6回地域チャンピオンズリーグで北信越代表のインディゴスコーピオン1969の一員として出場した当時18歳の諸江は、予選リーグで市原誉昭や岩本昌樹などがいた浦安の前身・プレデターを変幻自在のドリブルで面白いようにかわしまくったのだった。

「石川のチームにすごいのがいる!」と見ていた人みんなが口をそろえたほど、それはインパクトのあるものだった。とにかく、迷いがないのだ。ボールを持ったらドリブルでゴールまで一直線。浦安は今でもそうだが、この手の選手に弱い。諸江のドリブルに何度もピンチを招いたが、何とか勝利して面目を保った。

試合後に話を聞くと、「シズガク」こと静岡学園高校の出身だという。石川出身だがシズガクのセレクションを受けに行って、ドリブルが目に留まり合格。狩野健太(横浜F・マリノス)と共にプレーし、11番を背負ってレギュラーを張っていたという。

チームは予選リーグで敗退したのだが、視察していたサッポ監督が選んだ大会ベスト5に名を連ねた。諸江自身、高校サッカーが終わって、これからどうするか悩んでいたところだったため、プレデターに入団して、関東で本格的にフットサルをプレーすることになった。

このとき見せた諸江のポテンシャルだったら、プレデターでフットサルのイロハを覚えれば、すぐにでも日本代表になれるだろうと思われた――。

しかし、それからが長かった。プレデターに入団するものの、諸江はスター選手を次々に補強するチームで出番をつかめず、ベンチに入るのがやっと。Fリーグのメンバーに選ばれ、将来を嘱望されながらも結果を出すことができていない。

浦安に関わる人間の誰もが口をそろえるのが「ケンゴはいい子」という言葉である。そうなのだ。諸江はとにかく“いい子”なのだ。人当たりが良く、気を使うことができて、優しい。ただし、それがフットサル選手としての彼の伸び悩みにつながっているような気がしてならない。

期待が大きい分、諸江を見ていると歯がゆくて仕方がない。ボールを持っても前を向かない……。勝負するべきところでパスに逃げてしまう……。若手の諸江に期待されるのはチームにとってカンフル剤となるような役割のはずだが、ミスをしないように無難にこなそうとするところがばかりが目につく。

世代交代を打ち出したセサル監督によって出場機会が格段に増えた今シーズンも、諸江のパフォーマンスは基本的には変わっていない。フウガから移籍してきた同年代の星翔太が、浦安でも日本代表でも主力選手になりつつある中で、プレデターに入団して4年目、Fリーグ3年目の諸江は“いい子”の殻を破れずにいる。

「フットサルのことを何にもわからなかった」というインディゴ時代に比べれば、諸江のフットサル選手としての幅は確実に広がっているのは確かだろう。だが、それによって失われてしまった「怖さ」や「思い切り」を取り戻さなければ、諸江は普通の選手で終わってしまう可能性は高い。

僕が諸江に求めたいのは、良い意味でわがままになること。パス回しをこなすことや体を張って守備を頑張ることは、こういう言い方は失礼だが、他の選手でもできる。諸江だからこそできるオンリーワンのプレーを出していくことが、チームにとってのプラスアルファになるはずだし、僕はそれを見たい。

だから――「ケンゴよ、もっともっと、わがままになれ!」。

プロフィール
北健一郎
1982年7月6日、北海道旭川市出身。稲葉洸太郎、高橋健介、フウガの中心メンバーたちと同じ“82年組”のライター。いつの日か彼らの仲間に入れてもらうこと夢見ている。
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