やればできる、マルキーニョス

 これまた古い話になるが、6月19日、町田とブラジルのチーム、A.A.B.B(アーベーベー)のプレマッチを町田市立総合体育館に見に行ってきた。この試合の個人的注目ポイントは、町田移籍後初登場となるマルキーニョスだった。

 個人的には、Fリーグでナンバーワンの外国人選手はマルキーニョスだと思っている。それには「本気を出せば」という注釈がつくのだが。日本に来てから3シーズンが過ぎたが、マルキーニョスが1シーズンを通じて本気を出したことはなかったように思う。悪い言い方をすれば日本をナメていたというか。

 バズーカ砲のような左足シュートや、強い体を生かしたボールキープ力、球種の豊富なパスなど攻撃センスは文句のつけようがない。だが、彼の弱点だったのが攻撃から守備への切り替えの遅さだ。名古屋時代、相手ボールになったときにマルキーニョスが素早く守備に移らなかったことが要因で失点したのは1度や2度ではない。

 だから、マルキーニョスが町田に行くことが発表されたとき、期待と同じぐらい不安の気持ちがあった。名古屋よりも町田のほうが周りの選手のレベルは正直落ちる。その中に入ったら、ますます“王様プレー”に拍車がかかってしまうのではないか、と。そうなってしまえば、町田にとってマルキーニョスの存在は諸刃の剣になってしまうのではないか、と――。

 ところが、アーベーベー戦のマルキーニョスは僕の知っているマルキーニョスではなかった。守備時には献身的に汗を流して、体を張ってディフェンスし、チームのために全力でプレーをする。突然変異の理由は明らかだった。サボリ癖のあるこの男を、サボれないポジションに置いたからだ。

 この試合のマルキーニョスのポジションは、ピヴォでもなくアラでもなくフィクソだった。ジュニオール監督は「滝田(学)がブラジル留学中で、(藤井)健太がケガをしていてフィクソがいなかったから」と語ったが、“苦肉の策”のはずのこの起用は予想以上の収穫になったのではないだろうか。

 結果的にマルキーニョスのフィクソ起用は「アリ」だった。体が強いのでハードなマークができるし、パスカットの読みも悪くない。パスがうまいのでボール回しの中継点にもなれるし、スキあらば得意のミドルシュートも打てる。何よりも、相手ボールになったときに「自分がフィクソだ」という意識が働くので、サボる回数が激減したことが大きい。

 フットサルにおいてフィクソは点が取れないポジションではない。実際に昨シーズンのFリーグでは浦安の小宮山友祐が15ゴールを叩き出している。マークの厳しいピヴォやアラよりも、後ろから上がっていくフィクソはフリーになりやすい。シュート本数は減っても、決定率は上がる可能性がある。

 試合後、マルキーニョスのフィクソ起用について聞かれたジュニオール監督は「今日は非常に機能していたので、フィクソ起用も増えていくだろう」と手応えを感じた様子。守備ができて、パスをさばけて、点も取れる――マルキーニョスのコンバートがハマれば、Fリーグ最強フィクソが誕生するかもしれない。

プロフィール
北健一郎
1982年7月6日、北海道旭川市出身。稲葉洸太郎、高橋健介、フウガの中心メンバーたちと同じ“82年組”のライター。いつの日か彼らの仲間に入れてもらうこと夢見ている。
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