2つの顔を持つチーム

  だいぶ遅くなってしまったが、6月27日に関東リーグ開幕節を見に行ってきた。会場の東久留米スポーツセンターに足を踏み入れてビックリ。ココは2階席の片面だけにスタンドがついているのだが、まさしく立錐の余地もないほど埋まっていたのだ。

 Fリーグができて2年が経って、主力選手が毎年流出しているにも関わらず、関東リーグにこれだけの人が集まっているのは予想外だった。この日は東久留米をホームタウンするカフリンガ東久留米のホームゲームデーだ。

 カフリンガが出てくるのは最終戦の4試合目。試合開始前、スタンドはTシャツとバルーンスティックでカフリンガカラーの赤に染まって、ホームの応援ムードができあがっていた。「カ〜フリンガ♪」コールが会場内に響き渡る。

 そんな雰囲気の中、本日のメインゲーム、昨季1部準優勝のカフリンガvs昇格チーム・アルティスタ埼玉のゲームはキックオフした。試合前はホームのカフリンガの有利を予想していたのが、ゲームがスタートすると僕の目はアルティスタのフットサルに釘付けになってしまった。

 アルティスタが今まで見たこともないような新しいフットサルをしていた……わけではない。そうではなく、彼らのゲームプランが面白かったのだ。まるで1チームの中に2つのチームがあるような感じなのである。1stセットは5番の新井健吾を中心にパスを回しまくるセット、2ndセットは10番の加藤貴行の突破力を生かすセットとハッキリとカラーが分かれている。

 “新井セット”はパス回しがとにかくうまい。カフリンガが前からプレスをかけてきてもひょうひょうと回し続ける。彼らがこれだけパスを回せるのは無理に“狙わない”からだと思う。ゴールにつながるような勝負パスを狙わずにボールを保持することに専念している。わかりやすくいえば、“鳥かご”みたいなパス回しだ。

 ただし、“新井セット”には怖さがあまり感じられない。そこで出てくるのが次の“加藤セット”だ。

 “加藤セット”はドリブラー・加藤の突破力を全面に押し出した、“新井セット”と正反対のスタイルだ。加藤という選手は初めて見たが、左足の細かいタッチと爆発的な加速力を生かしたドリブルは、関東リーグでは異次元クラス。個人的には、今すぐにFリーグに飛び込んでも十分にできるような気がする。

 アルティスタのゲームプランはこうだった。新井を中心にのらりくらりプレスをかわして相手を疲れさせてから、加藤のように縦に仕掛ける選手でテンポを変えて点を取りに行く。先制点をゲットできれば、カフリンガは前から来るしかないので、またパスを回して、裏のスペースが空いたところをドリブルで突く。この日はこの狙いが見事にハマった。

 正反対の2つのスタイルが同居するアルティスタは、元々、新井たちの「高西FC」と加藤たちの「ロクFC」が合併してできたのだという。

「埼玉で強いチームを作りたかった。ロクは自分たちにないものを持っている。パス回しだけじゃ崩せない。ないものねだりをした結果です」と元高西の新井が合併の理由を明かしたように、「組織」と「個」の戦い方に行き詰まりを感じていた埼玉の2つの強豪が1つになったことで、強力なチームが生まれた。

 前後半で1点ずつを取って、開幕戦で昨季の準優勝チームを破るというサプライズを起こしたアルティスタ。7月11日には第2節で2連覇中の王者・フウガと当たるが、2試合連続で勝てばもうサプライズとは呼べないだろう。


プロフィール
北健一郎
1982年7月6日、北海道旭川市出身。稲葉洸太郎、高橋健介、フウガの中心メンバーたちと同じ“82年組”のライター。いつの日か彼らの仲間に入れてもらうこと夢見ている。
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