Fで見たいあの3人

 4月28日、来季からFリーグに新規参戦する府中アスレティックFCが新体制を発表した。昨季、府中は関東リーグでは優勝したフウガに大きく離されての4位。全日本選手権も関東予選はおろか東京都予選で東京都2部のチームに敗れて、全国の舞台に立つことはできなかった。Fリーグで戦うためには戦力補強は必要不可欠といわれていた。

 今回発表された10人の中で新入団選手は3人。Fリーグから元浦安の小野大輔、元名古屋の小山剛史、元町田の宮田義人だ。プレスリリースには「最終的なFリーグ2009登録選手とは異なる可能性があります」という注釈文があった。登録選手10人というのは考えにくいから、ここに数人の選手が加わるのは間違いない。

 新入団3人のうち、小山、宮田はFリーグ開幕前まで府中でプレーしていた選手で、小野は府中でプレーしたことはないが府中市出身。地域密着型チームを掲げる府中が「府中にゆかりのある選手」にこだわっていることがわかるだろう。

 フットサルフリークなら思い出すのが「府中連合構想」だ。「府中連合」とは、Fリーグが初年度参入チームの募集を始めた2006年頃に、府中AFC、フトゥーロ、ファイルフォックスという府中で活動する関東リーグの3チームから主力選手を集めてチームを作ろうとしたこと。この話はさまざまな障害があって立ち消えになってしまったが、もしも実現していれば相当豪華な顔触れになっていたはずだ。

 府中が初年度参入で涙を飲んでから約3年。当時と状況はかなり変わったが、府中の中には「府中にゆかりのある選手を集める」という構想は根強くあるようだ。そういうことで、府中の獲得候補には何人かの噂があがっている。原稿執筆時点で発表はないが、僕は次のリリースに「上村信之介」と「渡辺英朗」の名前があることを強く願っている。

 フトゥーロの看板選手2人。“ミスターフットサル”と呼ばれる上村と、“左足の魔術師”の異名を取る渡辺という単体でも強烈な魅力を持つ彼らが、最高に輝きを放つのが小野と3人でピッチに立ったとき。針の穴を通すような上村のピヴォ当て、小野の足裏を巧みに使ったポストプレー、渡辺の意外性あるテクニックが奏でる美しいハーモニーは、初めてフットサルを見た人でも一発で虜にしてしまうような魅力があった。

 小野が2005年からイタリアに行ったことによって、魅惑のトライアングルは“解散”。Fリーグができてからも上村と渡辺は関東リーグで戦い続け、日本に復帰した小野が浦安に行ったことで3人によるプレーはずっと見られないかと思われた。だが、府中がFリーグ参入を果たし、小野が入団したことによって“復活”がにわかに現実味を帯びつつある。

「Fリーグで3人が共演するところを見たい!」

 これが今の僕の中にある正直な気持ちだ。もちろん3人が今のFリーグでフトゥーロの頃と同じようにプレーできる保証はない。むしろ難しい挑戦になる確率のほうが高い。Fリーグになって選手のフィジカルベースや戦術的要素がグッと上がった中で、かつてのように魅せるプレーをする時間や余裕が減っているのは確かである。

 それでも−−。僕はFリーグで信之介・ヒデ・小野のフトゥーロトリオを見たい。そして、Fリーグになってからフットサルファンになった人や、フットサルを見たことがない人にこそ見て欲しい。フットサルの最大の魅力である「スピード」「テクニック」「コンビネーション」、その全てが彼らのプレーにはつまっているから。





プロフィール
北健一郎
1982年7月6日、北海道旭川市出身。稲葉洸太郎、高橋健介、フウガの中心メンバーたちと同じ“82年組”のライター。いつの日か彼らの仲間に入れてもらうこと夢見ている。
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