第63回「ファーストセット」

「ファーストセット」…フットサルの試合で、先発でピッチに立つメンバーのセットは、交代してまた出てくるときも、同じメンバーでプレーすることが多い。これをファーストセットと呼ぶ。


成績のいいチームは
メンバー固定が多い

フットサルの記録を見ると、選手の名前の横に○や△などの表示がついている。○はその試合の先発メンバーを表し、△は交代で出場した選手。何もないのは、メンバー入りしながらピッチに立たなかった選手である。

○をつけられた5人の先発メンバー。これがそのチームのファーストセットといわれるものだ。まあ、ゴレイロは滅多に交代しないから、ゴレイロを除いた4人のフィールドプレーヤー(FP)をそう呼ぶことのほうが多い。

「セット」に関しては、このコラムの第8回で一度書かせてもらっている。これまでは「レギュラーのファーストセット+サブメンバー」という感覚が濃かったのが、Fリーグが始まってセカンドセットの陣容も各チーム充実。チームの総合力で戦う感覚に変化してきているという内容だった。

時は経ち、Fリーグも6シーズン目を迎えた。そしてここにきてセットに改めて注目したときに感じるのは、ファーストセットの重要性なのだ。

以前の「レギュラー」感覚とは違うと思うが、チームの中でも特にレベルが高い攻守の人材をファーストセットにそろえて、相手のファーストセットに対して真っ向勝負を挑んでいる。ゴールを奪い、失点を防いで、試合の流れを引き寄せる働きが、今、ファーストセットに強く求められている。各チームの守備力が向上している中で、先制点がゲーム展開を大きく左右することが影響しているのかもしれない。

したがって、ファーストセットの出来がいいと、チームの成績も安定してくる。するとセットの顔ぶれも同じメンバーになってくるという傾向がある。

名古屋だったら森岡薫、リカルジーニョ、ラファエル サカイ、北原亘というメンバーだ。森岡が日本国籍を取得したことで組めるようなこのセットにファーストに変わってから、名古屋の戦い方はここにきてぐっと安定してきた。

同じく府中も、星龍太、完山徹一、山田ラファエル ユウゴ、小山剛史という顔ぶれになってから、連勝し始めた。

神戸の場合は、鈴村拓也、西谷良介、江藤正博、原田浩平というメンバー。西谷がケガをしたここ数試合は、セカンドセット(ファーストの次に出てくる4人)から稲田瑞穂を持ってきて事なきを得た。

ファーストセットの出来のよさは、セカンドセットのプレーにも好影響を与える。ファーストで点を奪ってリードできれば、セカンドにはそのリードを絶対に維持しようという気持ちが沸いて、より集中したプレーができるようなのだ。またファーストのパフォーマンスが計算できれば、セカンドの戦いぶりにちょっと変化を加えてみたり、あるいはファーストの一部を代えて攻撃的に出たり、守備的に出たりと、監督のさい配としても、やりがいが出てくるだろう。

今のところ、成績上位のチームには、ファーストセットのメンバーが固定され、いいプレーができているところが多い。


誰が出てくるかわからない
カメレオンタイプの魅力

ところがファーストセットで主導権を握れないと、大変なことになる。5連敗中の北海道は室田翔伍、祐希の兄弟に、鈴木裕太郎、水上玄太という、昨季途中からの不動のメンバー。今季はコンビネーションが熟成され、序盤は各試合で猛威を振るった。ところが最近では研究されたのかパフォーマンスが悪く、それが連敗の結果に大きく影響してしまっている。セットの回復を待つか。メンバーのてこ入れを図るか。監督は頭の痛いところだろう。

一方でメンバーの固定にこだわらず、毎試合のようにファーストセットの顔ぶれを変えてくるチームもある。大阪、大分、浦安などがこのタイプだ。この3チームを見て、ぱっと思い浮かぶところがある。それは3チームとも長い年月をかけて、チームのスタイルが確立されているところなのである。

だから、これらのチームとしては「誰が出ても同じことができる」という感覚なのだと思う。したがって、メンバー選出にはコンディションのよさなんかが結構考慮されている。ファーストセットの顔ぶれが変わった理由として、「(新たに入った選手は)1週間の練習で、すごく調子がよかった」なんていうコメントが監督から返ってくるのだ。

加えてこの「カメレオンタイプ」ともいうべきファーストセットの起用をしてくるチームは、相手によってメンバーを変えてくることも多い。「メンバー固定」タイプが相撲でいうなら立ち合いでガツンと当たって、そこから状況に応じた戦いをする形だとすれば、「カメレオンタイプ」は立ち合いから変化して相手を惑わし、先手を取ろうという感じだろうか。

いずれにしても、立ち上がりからゲームの主導権を握りたいことに変わりはない。そういう意味でもフットサルのゲームの序盤の攻防というのは、非常に見ごたえがあるのだ。

毎試合のメンバー表に注目してみてください。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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