第62回「カットイン」

「カットイン」…サイドから中央へ切り込むドリブル。あるいは、サイドから中央へ入ってボールを受ける動きのこと。フットサルでは、ゴールを取るためにかなり重要なプレーになっている。


右サイドでは左利きの選手が
左サイドでは右利きがカットイン

ピッチの両サイドから、中央へドリブルで入り込んで相手をかわし、シュートを打つ。あるいはサイドからマークを外して中央のスペースへ動き、そこで味方からのパスを受けてシュートを打つ。「カットイン」は、フットサルで非常によく見られるプレーだ。「ピボ当て」などと同じく、攻撃時にパス回しからシュートへ入るためのスイッチのようなものである。

カットインは、左サイドから中の場合は右利きの選手。逆に右サイドから中の場合は左利きの選手が行ったほうが、都合がいい。例えば左サイドから中へ入る場合、右足でボールを持てば相手から遠いほうの足にボールを置ける。つまり、右利きの選手のほうが左からのカットインには都合がいいということになる。さらに、その流れから右足でシュートも打ちやすい。

サッカーの世界では、まったく同じ理由で、メッシやロッベンに代表されるように、特に左利きのアタッカーを右サイドに配置してカットインを狙わせる、いわゆる「サイドに逆足の選手を置く形」がここ数年話題になっている。ただ、サッカーではこの件が戦略的なものとして語られているのに対して、フットサルでは一方のサイドに逆足の選手を置く、というか、そういうシチュエーションでカットインを狙っていくのは、これはもう必須項目として認知されているといっていいだろう。

それは、フットサルはやはりピッチが狭いために、わずか4、5メートルのカットインに成功すれば、そこはゴール正面だからだ。つまりシュートが入りやすい。逆にサイドから縦突破したほうが、ゴールへの角度が狭くなって、直接狙うシュートが入りにくいともいえるのである。


カットインのときこそ
足ワザが見たい!

そんな事情だから、守るほうもこのカットインに対しては大変な警戒をして対応してくる。直接マッチアップする選手は、基本絶対に中に入らせないようにディフェンスしてくるし、それをかいくぐって中に入れたとしても、中央のもう1人の相手がカバーリングで詰めてくることが多いから、シュートブロックされることも多い。

ちなみに、味方が前掛かりに攻めているときにこのパターンでシュートブロックされると、こぼれ球を拾われてカウンターを食らう危険もある。そうすると今度は、「カットインを怖がる」現象も出てきてしまうのでやっかいだ。

そうした中で、どうしたらカットインを成功させられるだろうか。トップレベルの選手を見ていると、中方向一辺倒ではなく、縦方向の突破もうまく使っているのが分かる。縦突破はゴールへの角度が狭まるので、攻める側としては追い込まれた感が強いかもしれない。だが、シュート性のクロスを入れて、味方にファー詰めなどでゴールを決めてもらうプレーができれば、この縦突破を相手が警戒してくることになる。こうして「どっちに抜いてくるんだ」と相手を迷わせることができれば、カットインの成功率も高まるというものだ。

もう一つ、これは観戦者側の希望だが、ここでこそ足ワザを見せてほしい。縦に行くのか、中に行くのか。それこそ相手を釣るための足ワザを仕掛ける絶好のチャンスだ。いつも楽しみにしている。それなのに、最近の選手はシンプルで淡白だし、それでいて突破できていなかったりする。あれではマッチアップして守るほうも張り合いがないのでは? このシーンを意識しないのは、フットサルの面白みの一つを削いでしまうことになると思う。

もちろん周囲のサポートも不可欠だ。特にカットインされたときにすぐにカバーリングで対応してくる、ゴール前にポジショニングする相手。この選手をいかに引っ張り出して、中央のスペースを空けるのかが大切になる。だからカットインからのゴールが決まったときは、周囲の敵味方の状況、ポジショニングがどうなっていたかにも注目するといいだろう。

また、カットインする位置も重要のような気がする。相手陣深くに入り込んでからのカットインは、ゴール前に敵味方が密集しているのでどうしても成功しにくいようだ。カットインからのシュートといえば、あのブラジルのスター・ファルカンが有名だが、そういえば彼がカットインする位置は、第2PKマークより手前のことが多くないか。

相手のカバーリングも利きにくく、スペースがある。マッチアップして守る側としても、このくらいの位置なら、中方向よりは縦に突破されるのを嫌がる傾向が強い。つまり、相手陣でも手前のほうがカットインしやすいのだ。もちろんこの位置からカットインを成功させるということは、第2PKマークより手前、つまり10メートル以上の距離から決められるシュート力も関係してくるわけだが、大いに参考にしたい部分ではある。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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