第61回「森岡薫」

「森岡薫」…もりおか・かおる。Fリーグ名古屋オーシャンズの屈強の点取り屋。これまでは生まれ育ったペルー籍だったが、この度日本国籍を取得。11月のフットサルワールドカップに向けて、日本代表での活躍が期待できると、フットサルファンがずっと注目していた件だった。


Fリーグ屈指の
トッププレーヤー

ペルー国籍だった森岡薫が、この度日本国籍を取得したとの発表が所属の名古屋オーシャンズからあり、多くのフットサル関係者が喜びの反応を示した。

森岡はFリーグ内でもかなり飛び抜けた力を持つ、トッププレーヤーである。実績も申し分ない。Fリーグ初年度にMVPを獲得するなど、毎年名古屋の優勝に貢献してきた。コンディションの波が大きく、得点は毎年15点前後に収まっていたが、昨シーズンは「僕に合っていた」というバルチ新フィジカルコーチの下でシーズン頭から絶好調。何と34ゴールを挙げて初の得点王を獲得。MVPとのダブル受賞となった。

相手と正対し、止まった状態から、ボールを素早く右へ持ち出して右足を振りぬく。それだけでゴールを決められる、異常なキレとパワーを持った選手である。そんなのだから彼にどんどんボールを預けてシュートを打たせて勝つという、「戦術森岡」なる言葉もあるくらい。最近は右足一辺倒ではなく、切り返しての左足。味方へのアシストも多く、どんどんプレーの幅を広げていたところだった。

精悍なルックスもあって、Fリーグを代表する人気選手である。

日本人の父。ペルー人の母だが、外見は日本人だ。だから、彼の活躍を見て、
「あの人は何で日本代表ではないの?」
「いや、彼はペルー国籍なんですよ」
「えっ、そうなの?」
そんなやり取りが僕の周りでも何度かあった。彼がいれば楽なんですけどねえ。フットサル関係者はみんなそう思っていたのだ。

「僕は名古屋の中で、他のブラジル選手らと出場枠を争う立場だった」。そう。見ているこちらは彼を日本人と見てしまうのだが、彼の立場は外国籍選手。うかうかしているとポジションを奪われる。その危機感が森岡をここまで成長させてきたのだった。

森岡の帰化の件は、日本代表のミゲル・ロドリゴ監督もかなり気にしていたことだった。森岡が代表チームに加わることになれば、これは日本にとってはかなりの追い風になるからだ。国際舞台でも火を吹いてくれるであろう、左右両足からのシュートに加えて、前線で相手に押し返されずに、体を張って高い位置でボールを受けられる、キープ力もある。それが他の日本代表選手にはないレベルにあるだけに、期待が大きいのだ。

6月のAFCフットサル選手権では、日本はゴレイロ川原永光に対して、フィールドプレーヤーが北原亘、木暮賢一郎、逸見勝利ラファエルにピボというセットで戦っていた。このピボに森岡が入れば、これはそのまんま名古屋オーシャンズである。コンビネーションの心配もいらないのだ。


短期間で
代表の戦術をこなせるか

ただ、もちろん課題がないわけではない。守備面だ。攻撃の終わり方が悪くて、ボールを取られてカウンターをもろに食らったり、無闇にボールに飛び込んでかわされることがある。名古屋がカウンターを受けて失点を食らうのは、森岡からというシーンも結構多いのである。

そして日本代表には、ミゲル監督が数年をかけて作り上げてきた、緻密な守備戦術がある。森岡が今の段階からこれをしっかり身につけられるのかどうかは、注目して見ておく必要があるだろう。

その他、名古屋でAFCフットサルクラブ選手権を戦っているとはいえ、国際舞台の経験不足は否めないところだ。

ただ、現在、木暮や小宮山友祐らと同じ1979年生まれの33歳だから、代表に選ばれれば今回が最初で最後のワールドカップということも大いにありうる。その点で本人も胸に期するところがあるだろうし、だからこそ今回の日本国籍取得を心待ちにしていた。

ぜひとも活躍してもらいたいものだ。

ところで、名古屋からの今回の発表と時期を同じくして、Fリーグからも「森岡選手の国籍がペルーから日本になった」との発表があった。前回のこのコラムで「外国籍枠」を紹介したが、森岡が日本人になったことは、名古屋に選手起用の柔軟性が増すことも意味する。

つまり、森岡、リカルジーニョ、ラファエル サカイ、逸見なんていうセットが可能になるわけだ。

いやー。エグイですね。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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