第51回「プレーオフ」

「プレーオフ」…通常のリーグやトーナメント以外で、順位を決定したり、次ラウンドへ行くチームを決めたりする試合のこと。Fリーグでは来季2012シーズンから、上位3チームによるプレーオフで優勝を決めることが発表された。


Fリーグが6月の新シーズンから
上位3チームのプレーオフ導入

以前からリーグ活性化のために導入が期待されていた「プレーオフ」。Fリーグでも、今年6月にスタートする2012シーズンから、行われることが決まった。

次シーズンは、AFCフットサル選手権や、AFCフットサルクラブ選手権、そしてFIFAフットサルワールドカップが行われる関係上、「Fリーグ powered by ウイダーinゼリー 2012」は、通常より前倒しで6月16日(土)にスタート。通常どおり、参加10チームによる3回戦総当り制で、2013年の1月27日(日)に終了する予定だ。

その後、リーグ戦の上位3チームによるプレーオフが行われる。開催期間はリーグ戦が終了した翌週の2013年2月1日(金)から2月17日(日)と、3週に渡る。最初は「1次ラウンド」として、リーグ2位と3位が対戦。3連戦を行い、先に2勝したほうが勝ち抜きとなる。2位チームのアドバンテージとして、原則2位チームのホームアリーナですべての試合を行う。

次にリーグ1位チームと1次ラウンドの勝者が対戦する、「ファイナルラウンド」が行われる。先に3勝したほうが優勝というシステム。1位チームのアドバンテージとして、あらかじめ1勝が与えられるほか、すべての試合を原則1位チームのホームアリーナで行うことになっている。

先日終了した2011シーズンを例にすると、まず2位シュライカー大阪と3位デウソン神戸が、大阪のホーム大阪市中央体育館などで、2月1日(金)から3日(日)で、1次ラウンド3連戦を行う。ちなみに「2勝先勝」なので、2日(土)でこのラウンドが終わる可能性もある。

では大阪が2勝1敗で勝ち抜けたとしよう。すると、大洋薬品オーシャンアリーナで、名古屋オーシャンズと、翌週の9日(土)からファイナルラウンドだ。最大4試合が行われる計算なので、続く10日(日)と、翌週の16日(土)、17日(日)に行われる予定。3勝したほうが優勝なので、1勝のアドバンテージがある名古屋が2連勝すれば、10日(日)に優勝が決定する場合もある。


さまざまなプレーオフの形
一発勝負形式は避けられた

リーグ戦の上位チームにアドバンテージを与えながら、下位チームが上位チームに挑戦していく形で、同一カードを複数回行っていくこのプレーオフ方式。日本のプロ野球のリーグ戦後、日本シリーズ進出チームを決めるクライマックスシリーズなどで、この方法が採用されている。だが、僕は正直この形になるとは思わず、意外な印象を受けた。

というのも、Fリーグの各チームは、ホームアリーナの日程を確保するのが、非常に大変だと聞いていたからだ。自前のアリーナを持つ名古屋はともかく、他チームはホームゲームを開催するために、1年前から会場を押さえるという。だから、リーグ戦が終わるまで会場が確定しないこの形は、まったく考えていなかった。

むしろ、Fリーグ側があらかじめ代々木第一体育館などを押さえて、数チームを1カ所に集めたセントラル開催。上位チームをシードにした、トーナメント方式のプレーオフを行うのだろうと勝手に想像していた。また、こうしたクライマックスの作り方のほうが、メディア=特に一般への影響力が大きいテレビや新聞が、フットサルを取り上げやすくなるだろうなとも思った。

しかし、Fリーグの実行委員会では、一発勝負のトーナメント方式は、避けたい声が多かったという。長い期間苦労して戦って得た、リーグ戦での優劣の価値を、現場は重視しているのだ。それはもっともだろう。それでも、現状名古屋優勝がいつも半分決まっているような雰囲気の優勝争いだけでは、盛り上がりが少ないのも事実。それゆえのプレーオフ導入という流れである。

これまでのFリーグでも、3位までは表彰されて強化費が与えられるため、3位以内というのは少なからず各チームのモチベーションになっていた。だが、今度からは「3位以内に入れば優勝のチャンスがある」となる。これでFリーグは通常のリーグ戦の1試合1試合を、より魅力的なものにしたいと思っている。

2011シーズンでいえば、名古屋と大阪が抜け出た感があった後の3位争いだ。第3クール頭は、勝ち点30前後で大分、府中、神戸、浦安の4チームが固まり、そして当時勝ち点24の湘南あたりまで、「3位が見える」状況だった。こうしたチームのゲームを、消化試合的なものではなく、順位争いに必死になる、より激しいものにしたいのだ。

加えてプレーオフでは、厳しい日程で連戦を行うことになるので、それによる競技力向上も目論んでいる。勝負どころではいつも限られたメンバーで戦う傾向が強い名古屋にしても、連戦のプレーオフでは総合力で戦わないと難しいかもしれない。

一方で、実に多くの形があるプレーオフの中で、「同じグループ同士の中で、再度優勝決定戦を行う」この形式は、通常のリーグ戦が単なる順位決定戦の雰囲気に落ちがちで、盛り上がらないという指摘もある。

いずれにしても、6シーズン目にして改革をしてきた、来季のFリーグでどんな変化が見られるのかは楽しみなところ。Fリーグとしても試行錯誤しながら、いい形を見つけていきたいと思っているようなので、いろんなところで活発な意見交換があっていいと思う。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
目次へ