第45回「カウンター」

「カウンター」…カウンターアタックの略。速攻。相手ボールを奪った瞬間、相手の守備が整わないうちに速く攻める戦術をいう。フットサルのゲームでもしばしば見られるシーンだ。

ロングカウンターと
ショートカウンター

フットサルでもサッカーでも、ゴールがいちばん入りやすいのは、実はカウンターのシーンだ。それは相手が戻り切れず守備体勢が整わないうちに、空いているスペースを突いて素早く攻め込むため、数的有利を作りやすく決定的なシーンが生まれるからだ。

それだけ得点が決まる可能性が高いのだから、プレーする人はカウンターを意識しなければいけないし、見る者としてはカウンターに関わる場面は見逃せないシーンでもある。

フットサルのカウンターは、大きく分けて3つある。

一つは「ロングカウンター」といわれるもの。自陣に引いて守った状態で、相手は前掛かって攻めている状態。このときボールを奪ったり、相手がシュートを外したりしてマイボールになった瞬間、カウンターを繰り出す。

前方には大きくスペースが空いている。戻り切れない相手の裏へ入って、誰かがボールを受けられれば、一気にチャンスになる。そして、このボールを受けた選手をフォローするために、味方が目の前の相手を追い越して長い距離を走るといったところが特徴だ。最終的には2対1、あるいは3対2などの有的有利の状況を素早く作って、攻めることが多くなる。

ゴールが決まる場面は、やはりスピーディーで鮮やか。フットサルでも華のあるシーンといえるだろう。

一方、「ショートカウンター」といわれるのは、守備側の前線の選手が、相手陣に入っていく感じで前へ前へと出ていってボールを奪い、そのままシュートしたり、1、2本のパスで手数をかけずにシュートに持ち込むもの。

前プレやハーフから前へのディフェンスをしくチームが狙う、得点の形の一つだ。ボールを奪われたほうのチームに目が行き、「あーあ」となることが多いシーンでもあるのだが、ここはボールを奪ったほうの、積極的なディフェンスの形。狙いすましたインターセプトだったり、組織的に相手を追い詰めていく部分に注目すると面白いと思う。

これに加えて、最近では「クロスカウンター」というシーンも注目されている。いわゆる「カウンター返し」ともいわれている場面だが、ロングカウンターを狙いにいったところで、技術的なミスや判断ミスが起きたり、数的不利の状況でもカウンターを受けた側がうまく守ったりして、ボールを奪い返した状況だ。

カウンターを決めようと前方へ向かっている選手が数人いる中、途中でボールが奪えると、今度は逆に数的有利になってカウンターを仕掛けることができるのである。つまり、ロングカウンターは、途中でボールを奪われずに攻め切らないと危ないのだ。したがって、攻め切れないとなったときに、どういう判断、プレーをするのかも重要になってくるのだ。

数的有利を作ったつもりが、相手の戻りも早くて数的同数になってしまった。あるいは相手にうまくコースを消されて、決定的なラストパスが出せそうもない。こうしたときに、無理めでもいいからシュートに持ち込んで、1回攻撃を切って切り替えるのか。あるいは1回止まって、つなぎ直して攻めようとするのか。

そうした部分の違いからも、そのチームの色を見ることができるだろう。


カウンターは必須項目だが
それ1本やりでもいけない

「あそこはカウンターのチームだね」「相手はカウンターを狙ってきた」などといわれるのは、概ねロングカウンターのことを指している。

しっかり引いて守って、ロングカウンターを狙う手法は、ワンデー大会などでは王道だろう。特に前線に1人、攻撃面で「デキる」選手がいれば、その人の能力を生かしてプレーしたほうが勝ちやすい。

ところが、もうちょっと高いレベルへ行くと、ボールを回せるチームが相手に現れる。ここでボールを奪おうと思っても奪えなかったりで、思ったようなディフェンスができないと、ロングカウンター1本やりのチームは苦しい。

相手にボールを持たれるので、カウンターを繰り出す機会自体が減ってしまう上に、守備面で振り回されて、いざカウンターというときに疲れてしまって、精度が落ちるところがあるからだ。特に正規のプレーイングタイムなど、長い時間でやると、その傾向はますます強くなる。

そこでボールを奪える守備を目指そうとか、自分たちもボールを回して攻められるようになろうとする。ここが一つの脱皮点だ。

さらに話を進めると、今度はボールを回して攻めることに偏りすぎてしまい、カウンターができなくなってしまうチームも出てくる。

ここまでカウンター戦術を巡ってのチームの進化を書いてきたが、チーム作りってつくづく難しく、また面白いと思う。

冒頭に述べたように、カウンターはいちばん点が入りやすいのだから、それは忘れてはいけない項目。というか、カウンターができないチームは、今のフットサルではゴールを奪えない。ただ、カウンターそれだけでは、高いレベルでコンスタントに勝てないのもまた事実なのである。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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