第39回「Fリーグ準会員」

「Fリーグ準会員」…ついにFリーグでも、サッカーJリーグと同じような感じで、準会員制度がスタート。将来のFリーグ入りを目指し、一定の基準を満たしたクラブを「Fリーグ準会員加盟クラブ」に認定。そこからFリーグの入会基準を満たした上で、Fリーグ入りが認められる段取りになった。


準会員でクラブマネジメントを鍛え
Fリーグ入りを目指す

8月24日(水)に、Fリーグから「Fリーグ準会員加盟制度」が発表された。これまでハッキリしていなかった、Fリーグへの新規チーム参入のガイダンスが示されたことになる。今年は8月29日(月)から10月11日(火)まで公募を受け付け、その後さまざまな審査や承認を経て、来年2012年1月に準会員クラブが決まる予定だ。

準会員加盟の主な条件は、今季の地域リーグに所属していることや、クラブの運営が公益法人、特定非営利活動法人、または発行済株式総数の過半数を日本国籍を有するものが保有する株式会社であること。ホームタウンの支援体制が整っていて、アリーナ(体育館)を確保できることなど。加盟金として年間50万円を支払うことになっている。

2012年度は準会員加盟クラブで、「準会員加盟リーグ」を実施。これは地域リーグや全日本選手権などを戦いながら、空いている日程の部分を利用して集中的に開催するようなイメージだそう。だから、この「準会員加盟リーグ」で上位に入ればFリーグ入り決定ということではない。Fリーグ側としては、準会員加盟クラブの実力に関しては心配していない。むしろこのリーグを通して試合運営ほか、クラブのマネジメント力を鍛えてもらう場にしようと考えているようだ。

準会員からFリーグの入会基準としては、ここまでのFリーグチームに課せられているものとほとんど変わりはない。だが、今回の発表でその入会基準のより明確な内容が出されたのが大きいのと、注目してほしいのは、Fリーグ入会を目指すクラブは、クラブ経営の規模として、入会前年度に年間1500万円程度、入会年度に年間5000万円程度の事業収入を挙げることが望ましいと示されていることだ。これ、もしかしたら、既存のFリーグクラブの面々にも耳の痛い話なのかもしれない。

まず、「入会年度に年間5000万円」のほう。これはチケット収入がメインになるだろうと思われる。ただ、1枚2000円のチケットを2000人(ホームアリーナの原則として設定されている収容人数が2000人以上)が買ってくれたとして、年間のホームゲーム12試合で4800万円。現在のリーグは1試合1000人も入ればいいほうだから、かなり高い設定ということになる。これはチケット収入以外のスポンサー収入やグッズ売り上げ、またスクール事業での収入アップにも力を入れていかないと厳しいということだ。

それと、「入会前年度に年間1500万円」という件。入会前年度は当然、チケット収入は期待できないので、これは入会前に前述したチケット収入以外の部分で、そのくらいの稼ぎを出しなさいということだ。リーグに問い合わせたところでは、Fリーグ準会員という肩書きをスポンサー集めに利用してほしいという。

こうしたさまざまな条件をクリアした上で、早ければ2013年度のリーグから、新しいFリーグチームを見られる可能性がある。


選手たちにとって
魅力あるリーグにしてほしい

今回の発表では、Fリーグの将来像として、2016年度までにFリーグを16チームのリーグにするのが理想であるとされた。準会員クラブを増やしていきながら、見合ったクラブをFリーグに引き上げる。その間、Fリーグと準会員加盟リーグの入れ替え制は当分の間導入しないとのこと。その代わり、リーグを盛り上げる点で、リーグ戦を終えた後にチャンピオンチームを決めるプレーオフの導入については、「実現する方向で動いている」という旨が、大仁邦彌FリーグCOOから明言された。

リーグ側としては、今回の拡大路線の発表で、何にしろFリーグの試合数を増やして、各チームの収入が増える舞台設定をしたいようである。とはいえ、前回のコラムでも書いたように、今のFリーガーたちはほとんどが他に仕事を持つアマチュアの選手たち。試合数を増やすといっても、例えば平日などに設定されてしまうと、チームによっては選手がうまく揃わないなんていう情けない状況も出てきかねない。

そして、前述の設定の収入をあげたられたところで、じゃあ、選手たちをプロとして雇えるレベルではないわけだ。名古屋オーシャンズのように、強力なスポンサーをつけるか、あるいは湘南ベルマーレのように職の提供というサポートを企業から受けるような形を増やしていかないと、この先いくら枠が増えたところで、Fリーグ入りに二の足を踏む選手があるかもしれないと考えたほうがいい。

今、フットサルのルールはどんどんサッカーに近づいていき、小さいころからフットサルを経験するフットボーラーはかなり増えている。フットサルのミニサッカー化は顕著なのだが、それがいいか悪いかは別にして、この傾向であるならば近い将来、Fリーグが大人のフットボーラーのプレーの場の選択肢として考慮される日が来る。Jリーグには手が届いが、なるべくレベルの高い場でフットボールをプレーしたい。そういう層だ。サッカーとフットサル間の、選手のスムーズな移動も今後増えてくるのではないか。

そんなときに、Fリーグが魅力あるプレー環境なのかどうか。JFLと比べてどうなのか。あるいはJ2の給料の安いクラブと比べてどうなのか。選手たちがプレーしたいのは名古屋のような環境、あるいはそれに準ずる環境のクラブなのだ。

まあ、何はともあれ、来年の頭に準会員クラブとしてどんな顔ぶれが出てくるかのを楽しみにしたい。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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