第38回「Fリーグ」

「Fリーグ」…2007年にスタートした、国内最高峰のフットサルの全国リーグ。マイナースポーツの苦労を味わいながらも、さまざまな面で少しずつ成長し、今季5シーズン目を迎えた。


10チームの3回戦制
名古屋が突出した強さ

2007年9月23日、東京の代々木第一体育館で、賑々しくスタートしたFリーグ。2000年以降、フットサル場などでプレーを楽しむ、プレーヤー人口がどんどん増えていったこと。そして競技志向でプレーするいわゆる「競技フットサル」も盛んになった。また、そのトップであるフットサル日本代表の活躍などもあって、それまで存在していなかった全国リーグ設立の機運はどんどん高まっていった。

当時行われていた全国大会は、トーナメント戦を主体にしたオープン大会の全日本フットサル選手権。各地域リーグの上位チームが集まって行われる地域チャンピオンズリーグ。そして、各都道府県の選抜チームが戦う全国選抜フットサル大会など。短期の大会しか存在していなかった。そこでフットサルのさらなる普及と、競技面のレベルアップを目指し、フットサル界は全国リーグのスタートに踏み切った。

サッカーのJリーグが培ってきたノウハウが存分に活用され、参加チームも母体となったチームの実力のみならず、各本拠地の日本全体におけるバランスも考慮された。地名+愛称のチーム名が採用されるなど、従来の競技フットサルとは一線を画して、非常にフレッシュな印象を与えた。8チームでスタートした初年度、そして翌2008年シーズンは、ホーム&アウェイ+セントラル開催での対戦の3回戦制だった。セントラル開催は地方で多く開催し、フットサルのさらなる全国的な普及を狙った。

3季目の2009年シーズンからは、さらに2チームが加わって10チームとなった。だが、3回戦制は維持されたが、セントラル開催での試合数が少なくなり、同一カードの対戦でホーム2試合&アウェイ1試合の不公平が生じるなどの問題が出ている。また、他チームに比べると極端に豊富な資金力と圧倒的な練習環境を持つ名古屋オーシャンズが、リーグスタート以来4連覇を達成。その無類の強さと他チームの不甲斐なさもあって、リーグ全体が面白みに欠けるという指摘が増えている。

当初は各ゲーム2000人という指標が出されていた観客数も、だんだん目減りしてきて、今では1000人台前半という数字が定番だ。そうした中で、プレー側も見る側もモチベーションが下がる消化試合をなくそうと、「下部リーグとの入れ替え制度を何とか整えられないものか」。レギュラシーズンの後にプレーオフをやって、リーグのクライマックスを作るべきでは?」といった、意見、提案が盛んに言われている状況である。


レベルは右肩上がりも
ほとんどの選手はアマチュア

突出した強さを持つ名古屋は、監督・選手たちが完全にプロ契約でフットサルのプレーに専念できる環境にあるチームだが、実はこうしたチームはリーグの中で名古屋しかいない。他は一部の選手のみプロ契約の状態だったり、チームから斡旋された仕事をしている選手。まったく普通に仕事をしながら、プレーしている選手たちなどが混在している。つまり、リーグのほとんどはアマチュアの選手たちだ。

もちろん、一部のプロ選手たちも今はいい生活ができるかもしれないが、引退後の世界というのはほとんど確立されていない。それだけに、30歳あたりを基準に選手たちも自分の身の振り方を考えるようである。責任が増えてきた仕事をしっかりとこなすために、Fリーグを去る選手もいるし、実力はFリーグレベルでも生活のことを考えて地域リーグに留まっている選手もいる。取材していると、本当に実力トップの選手たちが、Fリーグに集まっているわけではないと感じることがある。

それでもFリーグスタート時に比べると、ゲームのレベルは随分と上がっている。最初8チームが全国に散りばめられたとき、当時関東や関西に集中していたトップ選手たちは、地方も含めたFリーグチームに移籍することをリーグ側は期待した。ところが、先述した状態のように移籍先できちんと生活できるかどうかがわからない状態が多く、そうした選手の移動はそれほど激しくはなかった。

そこで、フットボーラーとしての実力は高いものの、フットサルのベースがないまま、いきなりFリーグの世界に入ってきた選手も多く見られたのだ。だが、今ではそうした「Fリーグ世代」と呼ばれる選手たちの中からも、日本代表選手が出てくるようになってきている。毎週毎週厳しい戦いをしてしのぎを削る、リーグ戦の効果は絶大だ。また、名古屋を去る選手たちが他チームへ移籍し、移籍先のチームをレベルアップさせるという、「シャワー効果」みたいなものもある。

リーグ展開は「ストップ・ザ・名古屋」が長いことテーマになっている。どのチームにも名古屋戦にはいつも以上の気合いで、ひと泡吹かせようとプレーするのだ。ところが、絶対王者といわれる名古屋に逆にこっぴどくやり返されることがほとんど。さらにその敗戦を引きずって、翌節からのゲームに影響が出てしまうなど、「名古屋ショック」で順位を落とすチームが目立っていた。そこで最近は、名古屋戦も頑張るが、リーグ全体で調子の波を作らないように戦うことが各チームテーマになっているようである。

その結果となって表れているのが、守備面の整備と安定だろう。これはここまで少しずつ改正されてきているルールの影響で守りやすくなった面も強いと思うが、各チームがディフェンス面に力を入れることで、本来「点の取り合い」が特徴とされるフットサルで、ロースコアのゲームが多くなってきたのだ。

お客さんにはいろいろなタイプがいる。点の取り合いから、スコアメイキングになってきたリーグを、「戦術的にレベルが上がって面白い」ととる人もいれば、「これじゃあ、サッカーと同じでつまらない」と意見する人もいる。またそうした、スタンド上でゲームを俯瞰して楽しみたい人がいる一方で、逆にピッチ上に近いアリーナレベルでゲームを見ることで、年々スピードアップするゲーム展開の迫力に魅力を感じている人たちもいる。それに、Jリーグと同じように、チーム自体が好きになって勝ち負けに一喜一憂するファン層も確実に増えてきている。

すべてこれまでの選手たち、チームスタッフの努力の成果だ。各チームはこれからもそうしたいろいろな観客のことを意識しながら、よりたくさんのお客さんに会場に足を運んでもらい、「見るフットサル」をどう楽しんでもらうかという努力を続けるべきだろう。

2000人のお客さんが体育館に押しかけていて、毎試合ものすごく盛り上がったとする。しかし、その観客数では多分チームは潤わないのだ。その先、毎試合2000人に訴えられますよということで、スポンサーをつけていかないと、選手たちはプロしての生活ができないし、運営が成り立たない性質のリーグなのだ。

厳しいことには間違いない。チーム、選手たちは十分にそのことをわかっている。その上で今季はどんな姿を見せてくれるのか。5シーズン目のFリーグを楽しみながら追っていきたい。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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