第36回「ナメる」

「ナメる」…足裏を使って、ボールを転がす動作。「転がす」ではなく「ナメる」と表現する部分に、フットサル的なこだわりがある。


「ナメる」は、ボール位置を
ちょっとズラすイメージ

フットサル界では、足裏でボールを転がす動作を、よく「ナメる」という。足裏での巧みなボールの転がし方を、「ナメ技」なんて言葉で、専門誌で取り上げられることもあるくらいで、これはこだわりの表現なんだろうと思う。

サッカーでも同じように、足裏でボールを転がすシーンというのはある。でもやはり、フットサルでは「ナメる」という言葉を使ったほうが、しっくりくるのだ。

「転がす」というと、足からボールが離れるイメージがあるのだが、「ナメる」というとボールを転がした後でもまだ足裏でボールを触っていたり、あるいは足元にボールを置いているイメージがないだろうか。

つまり「ナメる」とは、足元の自分の支配下にあるボールの置き場所を、足裏でちょっとズラすイメージなんだと思う。

ズラす理由はいろいろ考えられるだろう。足元に飛び込んできた相手の足をちょっとかわしたいとき。前方の味方にパスを出したいが、目の前の相手がじゃまになっているときなど。

素早さが求められるフットサルで、次のプレーまでに2メートルも3メートルも移動しているわけにいかない。ちょっとだけボール位置をズラして、すぐに次のプレーをしたいのだ。そんな流れで、ボールをひと転がししてからすぐ次のプレーといった「ナメる」ワザが出てきたのではないだろうか。

ナメてからすぐさま逆足でボールタッチし、飛び込んできた相手をかわす。同じ足で連続してナメて、ボールを動かす方向を変えてかわすワザもある。また、横にナメてポイントをズラしたボールを、すぐさま逆足で蹴ってパスにする。

こうしてこの「ナメる」は、フットサルならではのワザになっているのである。


次のプレーのために
ボール状態を整える効果

ただ、サッカーの世界でも、最近はボールを「転がす」というより、「ナメる」と表現したほうがいいようなプレーに、出くわすことが多くなった。

例えば、C・ロナウド。彼があの複雑な足さばきのフェイントを仕掛けるとき、大体が足元にボールを置いたまま、「ナメる」プレーをスイッチにしているのだ。

横にひとナメしてから、そのボールを連続シザーズする。横にひとナメしたボールをすぐさまクライフターンで切り返して方向転換など……。

別にこの「ナメる」部分を、インサイドでボールを「運ぶ」ようにしてもいいと思うのだが、C・ロナウドは「ナメる」。

それは足裏でのボールのひとナメが、自分とボールの位置関係やボールの転がり具合などを、いつも一定の状態にしてくれる作用があるのだ。ナメる前のボールというのは、意外と変な回転がかかっていたり、ちょっと弾んでいたりと、さまざま状態になっていたりする。

だがそこでナメることで、ボールが自分の足元でいつもの一定の状態に整ってくれれば、いつもの練習どおりのフェイントが仕掛けやすいのである。

翻ってフットサルでも、もう少しこの「ナメる」という動作を意識してプレーしたいところだ。自分の足元でプレーのポイントをズラす作業、フェイントを仕掛けるときのスイッチとしてナメを意識すれば、もっとうまくプレーできそうである。

だが、危険なのは、これはフットサルにある程度慣れた人でよく見かけるのだが、ボールを足裏でちょいちょいと「いじる」のがクセになってしまっている人。ナメるというか、いつでも足裏でキュキュッと一度ボールをいじってからでないと、次のプレーに移れない人を見かける。

当然、プレーというのは、周囲とのタイミングを合わせないといけないから、このいじりが余計な時間になって、次のプレーが遅れたり、味方とタイミングが合わなかったりすることが多くなるだろう。

この「ナメる」と「いじる」は、区別してプレーしたいものだ。

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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