第34回「日本代表戦」

「日本代表戦」…フットサル日本代表の国際Aマッチが、国内で行われるようになったのは、2004年から。以降、毎年開催され、フットサルファンの楽しみの一つとなった。6月11日、14日にはフットサルチェコ代表を迎えての国際親善試合2連戦が行われる。


2004年の対アルゼンチンが
国内初の日本代表戦

2000年に、あと一歩のところで世界選手権行きを逃したフットサル日本代表は、以降、4年後の次の世界選手権出場に向けて、徐々に強化の度合いを強めていった。

しかし、その活動は国内での合宿と、海外遠征ばかり。1年に1度行われていたAFCフットサル選手権も、03年に日本で開催する予定だったが、当時のSARSの影響で開催を返上していた。そのため、国内での日本代表戦はなかなか見られないまま時が過ぎた。

そして、世界選手権行きの出場権争いも兼ねていた、2004年のAFCフットサル選手権で準優勝し、日本は遂に世界への切符を手にした。台湾で行われる、そのフットサル世界選手権(現FIFAフットサルワールドカップ)前の壮行試合として、アルゼンチン代表を迎えて行われたのが、国内初の日本代表戦である。

世界選手権ではベスト4に入るだろうといわれていた(実際に4位だった)強豪のアルゼンチンに対し、初戦は1−2で落とした日本だったが、続く第2戦では3−1で勝利し、コンパクトな駒沢体育館を熱狂の渦に巻き込んだ。

以降、日本代表戦は毎年国内で行われるようになった。08年までは直後に行われるAFCフットサル選手権の壮行試合として、毎年強豪チームを呼んで2試合を戦うのがパターンになっていた。また、07年には晴れて関西でAFCフットサル選手権を開催し、国内のファンに宿敵イランとの戦いを初めて見せている。

04年11月13日 幕張イベントホール 日本●1−2アルゼンチン 観客3433人
04年11月14日 駒沢体育館     日本○3−1アルゼンチン 観客2518人
05年5月8日 代々木第一体育館   日本△1−1ウクライナ  観客3288人
05年5月10日 代々木第一体育館  日本△1−1ウクライナ  観客2763人
06年5月3日 大阪市中央体育館   日本●1−6ブラジル   観客5627人
06年5月5日 代々木第一体育館   日本●0−3ブラジル   観客8749人
07年5月3日 ワールド記念ホール  日本●2−4アルゼンチン 観客2309人
07年5月5日 大阪市中央体育館   日本○1−0アルゼンチン 観客2735人

AFCフットサル選手権2007
07年5月13日 大阪市中央体育館  日本○16−0フィリピン  観客1522人
07年5月14日 大阪市中央体育館  日本○8−0香港     観客633人
07年5月15日 大阪市中央体育館  日本○6−2タジキスタン 観客850人
07年5月17日 大阪市中央体育館  日本○9−6タイ     観客1102人
07年5月18日 大阪市中央体育館  日本○1−0キルギス   観客1486人
07年5月19日 大阪市中央体育館  日本●1−4イラン    観客5289人

08年5月1日 ワールド記念ホール  日本●0−3ウクライナ  観客2281人
08年5月4日 代々木第一体育館   日本○2−1ウクライナ  観客4885人
09年9月23日 大洋薬品オーシャンアリーナ 日本△1−1イタリア  観客2022人
09年9月24日 大阪市中央体育館  日本●3−4イタリア   観客2776人
10年5月12日 代々木第一体育館  日本●4−7ロシア    観客3184人
10年5月15日 グリーンアリーナ神戸 日本●1−5ロシア   観客2005人

何といっても盛り上がったのは、06年のブラジル戦だった。世界ナンバーワンフットサルプレーヤーであるファルカンをひと目見ようと、多くの観客が会場に足を運んだ。彼の1プレー1プレーを、みんながまさに固唾を呑んで見守った感じだった。

上り調子で迎える
今回の対チェコ2連戦

他の来日チームも、日本と互角以上の相手ばかり。それだけに対戦成績は決していいものではない。日本は日本で、いつもアジアでの戦いを前にした調整段階。毎年強豪との2連戦で国際試合の皮膚感覚を取り戻し、大会に臨む。そんな感じだった。

とはいえ、国内のトッププレーヤーが集まった日本代表と強豪との対戦は、やはり日本の他の試合とは違ってハイレベルで、いつも見ごたえのあるゲームになっている。

2度来日したアルゼンチン代表の名物監督であるララニャガ氏は、「アルゼンチンはフットサルが誕生してから、国内で代表戦というものをやったことがない」とコメントしていたものだ。国内でフットサルの代表戦が見られるのは、実はとても幸せなことなのだ。

ミゲル・ロドリゴ監督になってからは、国内で4試合の代表戦が行われている。が、結果は1分3敗で、まだ勝利した姿を見せていない。それでもミゲル監督は、前任のサッポ監督時代からメンバーの世代交代を進め、世界最先端の高度な組織戦術をチームに植え付け、少しずつ進歩を見せている。

今月頭に行われた中国での国際大会では、ブラジルに0−3というスコア。イランには2−2で引き分け、ルーマニアには3−2、中国には3−0で勝利した。実りある遠征になり、上り調子で今回のチェコとの2連戦を迎えられることになる。

チェコは日本と同じく、04年、08年と連続でワールドカップに出場している。また、2010年1月にハンガリーで行われたヨーロッパ選手権では、準々決勝で日本が1分1敗だったイタリアにPK戦の末勝利し、最終的に3位に輝いた。今回はそのときの主力メンバーも来日予定だ。

そうした骨のある相手に、今の日本がどんな戦いぶりを見せてくれるのか。非常に楽しみである。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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