第31回「ピボ・アラ」「アラ・フィクソ」

「ピボ・アラ」「アラ・フィクソ」…フットサルの数あるポジションの中から、さらに選手のプレーの特徴・役割までを示すための呼称の一例。フットサルへの理解が数倍深くなる、覚えるのにオススメな用語だ。


選手の役割を示す
呼称の典型

フットサルのポジションというのは、後ろから前へ1−2−1と選手が並ぶ、ダイヤモンド型のフォーメーションの中で、最後尾の「1」をフィクソ、真ん中の「2」をアラ、最前線の「1」がピボとして、説明されることが多い。

これは、日本が黎明期から多くの影響を受けているフットサル大国・ブラジルでの呼び名が、そのまま用いられている形。したがって、GKもゴレイロと呼ぶのが、フットサルに肩入れしている人たちのこだわりだ。

とはいえ、現在サッカーに関わっている人たちから、多くのフットサルファンを生み出したいということを考えて、簡単に置き換えさせてもらうと、フィクソはDF、アラはMF、ピボはFWである。

しかし、競技フットサルのシステムは、ダイヤモンド型ひとつだけではない。前2人後ろ2人とボックス型に選手を配置したものや、後ろの2人がやや中央に絞り、前の2人がタッチライン際に広がって位置し、4人がフラットに近い状態に並んだ台形の形から、前後左右に流動的に動いてパスを回していく、クワトロというシステムなんかもある。

こうしたフットサルのシステムの発展の中で、ポジションというものがわかりにくくなってしまった面がある。ボックスのシステムのチームで、後ろ2人がフィクソ(DF)で、前2人がピボ(FW)かというと、必ずしもそうではなく、アラ(MF)が前や後ろを務めることがある。クワトロが流動的にパスを回すアラ(MF)の集団かといえばそうではなく、中にはフィクソ(DF)やピボ(FW)の選手も混ざっているのが常だ。

そこで、大きなくくりではフィクソ、アラ、ピボなのだが、その中でも選手の特徴や役割をよりハッキリさせる呼称が出てきた。そうすることで、今ピッチに出ている4人が、どんな選手の組み合わせになっているのかを、注目しようとする流れが出てきたのである。その呼称の典型が「ピボ・アラ」であり「アラ・フィクソ」なのだ。

多岐に渡る選手の
タイプに注目すると面白い

この度、フットサル日本代表のミゲル・ロドリゴ監督が、「フットサル戦術パーフェクトバイブル」(カンゼン)という本を出した。この中で、各ポジションのタイプ別の呼称と役割が詳しく説明されている。

「ピボ・アラ」はチームのパス回しに参加しながら、ピンポイントでピボの位置に入ってプレーするタイプ。ピボというと、体も強く、前線にどしっと構えて縦パスを受け、味方にリターンしたり、自ら持ち込んでシュートするイメージがある。この典型的なピボは、ミゲル本の中では「ピボ・ドミナンテ」と呼んでいるが、実はこうしたフィジカルにもテクニックにも優れた選手は、あまり存在しないのが現状だ。現代フットサルのピボの主流なタイプは、チームの流動的なパス回しの中で、素早さやテクニックを生かして瞬間的にピボの仕事をする、「ピボ・アラ」タイプである。

「アラ・フィクソ」は、基本的には攻守に幅広く貢献するアラのプレーをしながらも、特に守備時にはフィクソと同等の守備力を発揮して、チームを安定させるタイプとされる。サッカーでいえば、守備力に優れたボランチといったところだろうか。

ここで再度。誤解しやすいので書いておくが、「ピボ・アラ」であり「アラ・フィクソ」という、ポジション(場所)があるわけではないという点だ。こうした呼称はあくまでも選手のタイプである。だから、繰り返しになるが、例えば、ひし形のシステムでも、「ピボ・アラ」がアラに入ってプレーすることもあるし、「アラ・フィクソ」が最後尾で守備中心にプレーしている時間帯もある。

ちなみにミゲル本には、ほかにもいろいろな呼称が紹介されている。特にプレーの種類が多岐に渡るアラなどは、ドリブルを中心に攻撃的なプレーが得意な「アラ・オフェンシボ」。パス回しの中心になって、ピボに入れる縦パスやラストパスを得意とする「アラ・パッサドール」。自らの動きによって味方を助け、チームのバランスを取る「アラ・タクティコ」などとわかれていて面白い。興味のある方は、ぜひ読んでみるといいだろう。

各チームはこうしたタイプの違う選手が混在している集団であり、監督は選手の特徴を組み合わせたセット、選手起用を駆使して、ゲームを組み立てていく。あの選手はどのポジションの選手で、どんな特徴を持っていて、どんな役割をチームで担っているのか。そんな点に注目すれば、フットサルのより深い部分が見えてくるはずだ。

さて、最後に。Fリーグなどをはじめとするフットサルの公式試合のメンバー表には、選手のポジションが「FP(フィールドプレーヤー)」と「GK」でしか表記されていない。これは着ているユニホームを見ればわかるわけで、これからフットサルに親しんでもらえる人たちをコツコツと増やそうとしているのに、かなり不親切ではないだろうか。

サッカー的にFW、MF、DF、GKだっていい。各チームに協力してもらって、4つのポジションわけで表記し、見る人に理解を深めてもらうべきだろう。

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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