第22回「リカルジーニョ」

「リカルジーニョ」…リカルド・フェリペ・ダ・シルバ・ブラガ(Ricardo Filipe Da Silva Braga)。1985年9月3日生まれ、身長164僉体重68圈10代よりベンフィカでプレーし、UEFAフットサルカップ優勝(09−10シーズン)などに大きく貢献。ポルトガル代表の中心選手としても活躍し、UEFAフットサル選手権準優勝(2010年)などを獲得した。今季から名古屋オーシャンズでプレーし、持ち前の多彩なフェイントのほかにも、高レベルで模範的なプレーを披露。今や完全にFリーグの顔になっている。


フットサルの枠を越えて
ブレーク寸前の状況

日本のフットサル界が、いよいよリカルジーニョ一色に染まってきた。本日12月10日の報知新聞では、1ページ全体を使って彼の特集記事を掲載。少し前には白夜書房の専門誌フットサルナビから、DVD付きのプレー集「リカルジーニョ フットサル 神技バイブル」が書籍で発売され、大人気だという。

名古屋入り後初めての試合となった、オーシャンアリーナカップ決勝では、細かいフェイントがいくつも入った圧巻の反転シュートから、得意のヒールリフト、そしてFKで壁越しにチップループを決めるなどの大活躍で、見る者の度肝を抜いた。

その後、Fリーグの開幕戦でこそ気負いからか精彩を欠いたものの、以降は毎試合ウキウキするような多彩なフェイント数種類を保障しつつ、数々のゴールに絡み、現在出場16試合中14試合で得点を挙げている。

そのプレー振りを一目見ようと、特に名古屋のアウェイゲームにはたくさんの観戦者が集まり、訪れる各会場の入場者数記録を次々と破る人気ぶりだ。そして試合後、各所で膨大な数のサイン、写真撮影を求められるのだが、本人は嫌な顔一つせず、時間の許す限りそれに応じ(ときには1時間近くにも及ぶ)、それでも時間になってサイン、撮影できなかったファンには、最後に丁寧に謝る姿も。

ユーモアあふれるコメント、茶目っ気たっぷりの表情も好感が持てる、"超"のつくナイスガイである。

そして、つい先日のゲームでは、それまで見たこともない大技を披露した。相手ゴール前でGKを背にしてボールを受けると、距離を詰めてくるであろうGKの動きを見越して、両足で挟んだボールを後ろ向きのまま後方に跳ね上げたのだ。

ボールは、GKの頭上をふわりと越えたループシュートになり、ゴール! 「しゃちほこシュート」(当サイト・北谷さん命名)が見事に決まり、その話題は日本中を駆け巡った。

Jリーグが終了し、日本のサッカー界に大きな話題がない中、Fリーグは2月まで続く。今は、フットサル界として改めてリカルジーニョを前面に押し出して、業界を盛り上げるチャンスである。

いや、巷ではもう、フットサル界の枠を越えて、ブレークしそうな雰囲気なのかもしれない。


フェイントベースのスタイルと
高速ギアでのプレー

リカルジーニョのプレーには、1試合を見るだけでもたくさんの見どころがある。初めて見る人でもわかりやすいスゴさは、当然多彩なフェイントの数々だ。よくもまあ、あんなにゴチャゴチャとボールがいじれるものだと思うのだが、彼のフェイントについてお伝えしなければいけないのは、彼が常々コメントしているように、

「すべてのフェイントに意味がある」

ということ。つまり、ただの「見せ技」は一つのもないのだという。

勝負が決まっている。あるいは時間帯、状況などによって、繰り出せる余裕がある。そんなときにちょこちょこっとボールをいじってみせて、歓声が挙がるような「見せ技」は、フットサルに限らず、サッカーにおいても、よく見られるプレーだ。

でも、そういう見せ技をやる選手は、勝負どころのシーンや、よりシリアスな場面では、意外とフェイントを繰り出さないものだ。トップレベルの選手でも、いざというときはなかなか仕掛けられないものなのである。

だが、リカルジーニョは根本的に違う。勝負どころや、シリアスな場面でこそ、ビックリするようなフェイントを繰り出す。他の選手のように、焦ってシンプルにスピードやパワーに頼って失敗するのではなく、相手の逆を取ったり、裏をかいたりするフェイントで解決しようとする姿勢が、体に染みついているのだ。

だからこそ、毎試合数種類のフェイントを見られることが保障されているのである。

もう一つはスピード感だ。いざというときにスピードに頼らないのだが、全体的には速い。パス、ドリブル、走り、判断。それらのベースが速いので、各シーンで相手の先手を取れている面はある。

車のギアに例えるならば、他のFリーグチームは1速から3速くらいのスピードの幅でプレーしているが、リカルジーニョは通常が4速くらいの感覚だ。彼がピッチに入ると、名古屋のパス回し、プレースピードが急に上がるのがハッキリとわかる。

で、本人が燃えてくると、ときどき5速くらいになることがある。でも、これは名古屋の周りの選手たちがまだついていけていない……。

名古屋のチームメイトは、彼のフォア・ザ・チームの姿勢の素晴らしさをよく口にする。

警戒して引いて守る相手を押し込んで攻めることが多い名古屋は、カウンターを受けることがよくあるが、そんなとき、いつもいち早く戻るのがリカルジーニョだ。うまいからってスカしてないのである。

ディフェンスも、特に前線でのボール奪取などは非常にうまくて、競技フットサルの選手などは参考になる部分が多いと思う。

模範的かつ魅力的なプレーヤー、リカルジーニョ。

みなさん、リカルジーニョを通して、日本でフットサルをもっと盛り上げていきましょう。「フットサルって何が面白いの? 何が魅力なの?」と聞かれたら、もう迷わず答えられるはずです。

「じゃあ、リカルジーニョを見に行こう!」と。


プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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