第21回「AFCフットサルクラブ選手権」

「AFCフットサルクラブ選手権」…2009年よりスタートした、アジアのフットサルクラブ選手権。第1回大会はイランで開催され、日本からは前年のFリーグチャンピオンである名古屋オーシャンズが出場。3位になった。このたび2012年からの毎年開催についての議論が行われたという。

AFCフットサル選手権との
1年おき開催から、毎年開催を検討

これまでAFC(アジアサッカー連盟)主催のフットサル大会は、代表チームの大会がメインで、男子のAFCフットサル選手権は、1999年から2008年まで毎年開催されていた。

それが2009年からは、クラブチームの大会である「AFCフットサルクラブ選手権」を創設。以降、AFCフットサル選手権と1年おきに交互に開催していくということで、2008年の次のAFCフットサル選手権は今年2010年にウズベキスタンで開かれている。来年2011年のAFCフットサルクラブ選手権は、カタールで開催予定だ。

第1回AFCフットサルクラブ選手権は、2009年7月にイランで開催される予定だったが、政情不安で延期となり、実際には2010年の3月にイランのエスファハーンで開催された。

日本からは2008年度のFリーグチャンピオンである、名古屋オーシャンズが参加。地元イランの強豪フォーラド・マハン・セパハンとの同グループを2位で通過し、準決勝ではカタールのアル・サッドと対戦。日本にとっては無名のチームとの対戦と思われたが、アル・サッドの個人技を前に苦戦し4−7で敗戦。結局3位決定戦に回った名古屋は、ここでもPK戦の末タイのポート・オーソリティーを下し、初参加の大会を3位で終えた。

大会に参加した木暮賢一郎は、「チームとしての国際経験のなさが出てしまった」ことを嘆いていた。

さて、このAFCフットサルクラブ選手権が、2012年の第3回大会から毎年開催することが検討されているという。AFCフットサル委員会のメンバー全員が賛成を表明し、次回のミーティングで詳細が話し合われるそうだ。

名古屋だけがどんどん
強くなるサイクルになる?

国際大会が増えること自体は素晴らしいことで、参加するチームの競技力の強化につながるだろうという考えが出てくる。日本としてはこのAFCフットサルクラブ選手権の毎年開催を、うまく生かしたいところだ。

ここまでの日本の「国際競争力」という意味での競技フットサルの強化は、間違いなく日本代表の活動が主軸だった。AFCフットサルクラブ選手権の毎年開催で、日本代表チームの活動が減るのかどうかはちょっと想像がつかない。だが、今回のアジア内のフットサルクラブチームの活動を活発にしていこうという流れは、今後選手強化の主軸がクラブに移ることを意味する。

ただ、日本の場合、「どうせ毎年名古屋が参加することになるんでしょ」という声が聞こえなくもない。Fリーグの絶対王者として君臨し、チーム結成時からアジア、そして世界を目指している名古屋にとっては、今回のニュースは大歓迎のはず。ぜひとも毎年参加したいと考えているだろうし、実際そうなると思われる。

名古屋にとっては「そんなこと知ったことではない」わけなのだが、結局名古屋だけがどんどん強化されるサイクルになるのではないか。

だから、名古屋以外のFリーグ各チームにとっては、身が引き締まる思いをしてほしい、今回のニュースなのである。

名古屋にはアジアの頂点に何度も立ってもらって、将来この大会に日本から複数チームが参加できるようになる流れを作ってほしいなと思う。

ただ、名古屋にとっても問題がある。外国人枠だ。

第1回大会で、日本では無敵を誇る名古屋が3位に終わったのは、もちろん意外なこととして関係者には受け止められた。しかし、名古屋にも苦しい事情があって、この大会は外国人枠が2人だったのである。したがって、森岡薫とラファエル サカイはプレーしたが、シジネイとウィルソンの2人は参加できなかった。

日本ではメンバーに4人、ピッチ内では2人までというルールだから、この枠を目一杯生かしていた名古屋にとって、ギャップはかなり大きなものだっただろう。

このあたりも今後どう折り合いをつけていくのかも、話し合わなければいけない項目だ。

何にしろ、Fリーグ各チームにとっては、毎年高い目標ができるのはいいこと。これを機により一層、国内での競争を活発にしてもらいたい。



プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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