第19回「フットサルシューズ」

「フットサルシューズ」…フットサルをプレーするための専用のシューズ。1994年のフットサル誕生から15年以上が経ち、現在日本では多種多様なシューズが販売されるようになった。

上履き系シューズが
もてはやされた

1994年に誕生したフットサルは、90年代の半ば過ぎから日本でも徐々に盛り上がり始めた。僕も民間フットサルコートで行われる大会によく出場したが、人工芝のピッチでは最初サッカーのトレーニングシューズ(底にゴムの小さいイボイボがたくさんついているやつ)を履いていたのを思い出す。

これとは違い、当時の先達が履いていたシューズは、いわゆる「上履き系」といわれていたものだ。学校で履く上履きや体育館履きのような布で作られていて、ツマ先の部分がゴムでコーティングされている。底はゴムで平らなのだが、シューズを横に切るような溝が何本か入っているものだった。

手でひねったりすると、グニャグニャに曲がってしまう柔らかいこのシューズ。「フットサルは足裏とトーキックを使う」という特徴は当時から非常に意識されていて、この上履き系シューズだと素足感覚でボールを足裏で扱いやすいし、ツマ先も保護されているので、トーキックも思い切り蹴れたのである。

おそらくこれは、フットサルの前身競技サロンフットボールから流れてきていたものだと思われる。フットサルよりもっと小さくて重みのあるボールを使っていたサロンフットボールでは、足裏とツマ先の使用頻度がさらに高かったのだ。

僕自身もすぐにブラジルからの輸入物の一足を買って履いていた。足裏にボールが吸い付く感覚、ツマ先を傷めずに蹴れるトーキックはとても心地よかった。でも、一方で甲を伸ばしにくく、インステップキックなどはとても蹴りにくかった。また靴底が薄いので、やはり足の疲労が半端ではなかった記憶がある。

そのうち各メーカーから、サッカーのトレーニングシューズを軽量化するような感じで、皮製で耐久性があり、平らなゴム底をつけたフットサル専用シューズが少しずつ出てくるようになる。

体育館で行われる試合の際は、床が汚れないよう、靴底が飴色の「ノンマンキーング製品」のものでないと使用できないことから、この手の専用シューズの需要も少しずつ伸びていったのだと思う。

それとシュートの際のキックの変化。サロンフットボール時代からフットサルになってボールが大きくなり、それまでのトーキックメインから、より正確に強いボールが蹴れるインステップキックでのシュートを蹴りたいプレーヤーが増えてきた。フットサルボールの4号球なら、実はインステップでもボールが蹴りやすかったのだ。そういう先達からの分析を聞いたことがある。

こうして上履き系シューズから、主流は一気にトレーニングシューズ系のフットサルシューズへ変わっていったのだった。


トップサラのブレークから
多種多様の時代へ

そんな流れの中、2001年にアディダスが「トップサラ」という、フットサルシューズを売り出し、これが爆発的に売れたことから、各社がさらにフットサルシューズに力を入れることになる。

トップサラは世界に例を見ない日本のフットサルブームを受けて、日本国内で開発されたシューズだったという。それまでのトレーニングシューズの応用ではなく、完全にフットサル用として作られたもので、フィット感や操作性、靴底のグリップなど、さまざまな面に工夫が施されていた。

そしてさまざまなカラーバージョンが出されたことで、プレーヤーのみならず、フットサルをしない一般にも売れたことで有名だ。ちょうどローカットのスニーカーがブレークした時代。スポーツ店だけでなく、一般の靴屋さんでもトップサラが売られていた。多くの女性が普段履きとしてカラフルなトップサラを履き、街を歩く姿があちこちで見られたのだった。

その後、フットサルシューズは、床用と人工芝用という、日本ならではの進化を見せる。民間フットサルコートで、人工芝に毛足の長いスポーツターフを採用するところが多くなってきたからだ。さすがに底が平らのシューズは滑りすぎる。そこで軽量でイボのついている、人工芝用のフットサルシューズもたくさん売られるようになった。一時は平らな底にイボもついている兼用のものも見かけたが、今は自分の用途に合わせて使い分けて履くのが当たり前の様子だ。

今回はこのコラムを書くに当たって、何店かのスポーツショップを回ってみた。フットサルシューズはサッカースパイクと並んで同じくらいの展示面積を獲得していた。さまざまなニーズに合わせて、さまざまなシューズが売られていて、かなりの壮観である。

ショップによっても違うだろうが、今の購入層の主流は、競技志向のプレーヤーのようである。そのため彼らに好まれる、アシックスやミズノなどの日本発祥メーカーのフットサルシューズが目立っている。やはり柔らかい印象で日本人の足に合ってフィット感が他に比べてよく、底のクッション性もいいようだ。

値段もちょっと前までは5000円前後がほとんどだったと思うが、今はFリーガー使用モデルなどが1万円を超える値段で販売されていて、ちょっと驚いた。

これに対して、底がもっと薄くなっていて、足裏での操作性を重視しているものや、型崩れしにくく、履いていくうちにその人の足に馴染んでいくようなやや固めのシューズなど、
各社特徴を持ったシューズを出しているようだった。

一方で初心者や、ボールを蹴る頻度が少ない人というのは、見た目重視で、カラフルでおしゃれなデザインのものを買っていくのだという。

そして最近の注目は、Fリーグ名古屋オーシャンズのリカルジーニョを広告塔に起用して、ド派手な色のフットサルシューズを発表したナイキである。靴底が飴色でないのに「ノンマーキング」となっていて、大丈夫か? とも思うのだが、ファッション性が高く、今度のプレーヤーの足元を華やかにしてくれることだろう。



プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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