第19回「スライディングタックル」

「スライディングタックル」…相手がボールを持っているところに、滑りながら飛び込んで、ボールを奪ったり蹴り出したりするプレー。これまでフットサルではファウルとなり、禁止されていたプレーだったが、今年のルール改正で正当なものはOKとなり、大きな話題となっている。

スライディングタックルが
この10月からOKに

 接触プレーにしばりがあり、安全にプレーできることから、「初心者や女性にも気軽に楽しめる」というのが、当初のフットサルの売りだった。

Jリーグブームやワールドカップでの日本の活躍でサッカーブームが起こり、自分たちもサッカーをプレーしたくなったが、グラウンドや人数の確保が難しく、「あそこまで激しくプレーしたり、走ったりできない」という引け目から、なかなか実際にプレーするには敷居が高かったところ。

そこで多くの人々が飛びついたのが、気軽にサッカーの疑似体験ができるフットサルであり、これが日本でこの競技に火がついた大きな理由でもある。

しかし、よく考えれば、フットサルのあの狭くてスペースのないピッチの中で、接触が起こらないはずがない。特に競技フットサルでは、真剣になればなるほど、球際のプレーはどんどん激しくなっていった。

 そのせいか、当初は禁止されていたスタンディングのチャージやタックルはいつのまにか解禁となり、最後のとりでだったスライディングタックルもOKとなったのである。

もっとも、これはサッカーと同じルール解釈になったということだ。そのチャージやタックルが「不用意に」「無謀に」「過剰な力で」行われたと審判に判断された場合は、きっちりファウルとなる。

 ただ、競技フットサルの関係者たちにも、スライディングタックルの解禁にはさすがに戸惑いが大きかったようだ。自分たちの普段プレーしている経験から、感覚的に危険を感じたからである。

 そんな中、日本サッカー協会からは、各地域や都道府県主催の試合については10月中には施行するよう通達が出て、Fリーグでも10月16日の第10節から、新ルールが採用されることになった。

スライディングブロックから
スライディングタックルになる影響

 これまでもスライディング自体はファウルだったわけではない。ボールを持っている(支配下においている)相手の足元へ行く、「スライディングタックル」がファウルだったわけで、例えば相手に接触しないところで、相手のパスやシュートコースに滑っていってボールを跳ね返すといった、「スライディングブロック」はもちろん問題がなかった。

 このスライディングブロックは、スライディングタックルができないために編み出されたようなワザで、ディフェンスのプレーとしては頻繁に使われてきたものだ。

 ただ、「スライディングはディフェンスの最後の手段」といわれ、身を投げ出すいわば捨て身のプレーだ。これを相手にかわされてしまうと、そこから体勢を立て直して連続してディフェンスにいくのは難しい。そのうえ、フットサルのスライディングブロックの場合は、相手から離れたところで滑るため、これを相手に見切られると、簡単に逆を取られてかわされることもある。

例えば攻撃側がシュート体勢に入ったところで、守備側がスタンディングでの対応が間に合いそうもなく、スライディングでシュートコースにブロックに行く。だが、これを察知したシューターは、キックフェイントからボールをストップさせたり、逆方向に切り返したりするのだ。

キレのあるシューターのフェイントの前で、スライディングした守備側の選手が「ザザァー」とむなしく通り過ぎ、空いたコースから改めてシュートが放たれる。攻撃側から見ると、とてもかっこよく見えるシーンだった。

 ところが、今後この手のプレーが、スライディングタックルの解禁よって見られなくなるかもしれない。

 守備側としては、スライディングタックルの代用としてスライディングブロックをしていたわけで、狭いピッチの中で相手の足元に飛び込むことは、これまでも十分に可能だったのだ。

足元に飛び込まれたら、よけるコースがなくなってくるので、攻撃側はかわすのに苦労するだろう。フットサルには5ファウルのルールがあるので、何でもかんでも滑るわけにはいかないだろうが、コツさえつかめば、今後守備側は捨て身のスライディングで、相手の攻撃を防げることが多くなるのではないだろうか。

 これは現状でいえば、日本が国際試合などでレベルの高い相手と戦うには、有利なことなのかもしれない。というのも、これまでの日本は強い相手に対して、最後にどうしても捨て身のスライディングブロックによる守備が多くなり、それでもかわされるシーンがよく見られたからだ。

 もっとも、これはあくまでも捨て身の手段なので、格上の相手でも滑らないで守れるようにレベルアップすることを、忘れてはいけないのだが。

 さて、攻撃側としては、今後このスライディングタックルをかわすプレーというのが、かなり難しくなるはずだ。これをかわすには、相手の届かないところにボールを早めに動かし直して、足元に飛び込んでくる相手の体はジャンプしてよけるような、そんなスーパープレーになるだろうか。

 それはぜひとも見てみたい。



プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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