第15回「第2PK」

「第2PK」…前後半それぞれで、チームが5つのファウルをすると、6つめからは相手チームに壁なしのFKが与えられる。これが通称「第2PK」といわれるものだ。フットサルコートには、ゴールから10メートルの部分に第2ペナルティーマークがあるが、この10メートルのラインより手前で起こった相手ファウルに関しては、第2ペナルティーマークからFK。ラインより前で起こった相手ファウルに関しては、ファウルのポイントか第2ペナルティーマークを、FKを蹴る側が選べることになっている。多くの第2PKは第2ペナルティーマークから蹴られ、キッカーとGKの駆け引きが、見どころの一つになっている。

スライディング解禁で
第2PKが激増か!?

フットサルでのスライディング解禁(これはこれで機会があったら触れてみようと思います)、というかスライディングに関するルールがサッカーと全く同じになったということで、現在フットサルに関わる人が「一体どんなことになるんだろう」と、いろんな想像をめぐらせている。

その中の一つにあるのが、「第2PKが増えるんじゃないか」ということ。スライディング慣れして自然と危険なタックルが増えてきて、ファウルが多くなり、第2PKの機会も多く出てくるのではないか。

すると、この第2PKを確実に決める、あるいはしっかり守るというプレーが、今よりさらに大切になってくる可能性がある。

ただ、逆に第2PKが抑止力になって、「何でもかんでもスライディングで止めて」というプレーはそのうち出てこなくなるのではと予想もできるのだが……。

第2PKは、バスケットボールでいえばフリースローなどから発想されたルールなのだろうが、フットサルの場合はGKも守っている状況だし、フリースローのようには簡単に得点にならない。

それに当初は第2ペナルティーマークが、ゴールから12メートルの地点にあった。これは前身競技の一つであるサロンフットボールからの流れだと思われるが、12メートルの地点からだと、さすがにゴールを決めるのはなかなか難しかった。

ところが、2000年のルール改正で、第2ペナルティーマークが、ゴールから10メートルの地点と2メートルゴールに近くなったのである。すると、シュートが結構決まるようになった。そこで競技フットサルとしては、第2PKを相手に与えないようなファウルマネジメントをするようになり、仮に前後半の早い段階でファウルが貯まったりすると、それ以上反則はできないと、チームの戦いぶりが慎重になったりして、メンタルや戦術面にも影響を及ぼすようになったのだ。

GKの対策
キッカーの対策

GKも対策を練るようになった。第2ペナルティーマークが12メートルの地点にあったときは、ほとんどのGKはゴールライン上に構え、蹴られたシュートに対してブロックにいく対応が多かった。ただ、マークが10メートルの地点になってからは、ゴールライン上に構えている対応だと、シュートへの反応が間に合わなかったのである。

そこでGKたちは、「前に出る」ようになった。第2PKは壁なしの「FK」なので、蹴られる位置から5メートル以上離れていれば、どこに構えていてもいいのだ。第2ペナルティーマークは、ゴールから10メートルの地点。そしてペナルティーエリアはゴールから6メートルの位置にラインがあるので、GKはペナルティーエリアから1メートル内側のところまでは、出ていていい。

そこであらかじめこの位置に両手を広げて構え、キッカーにプレッシャーを与えつつ、体のどこかにシュートを当てて防ごうとするGKが出てきたのだ。あるいはやや後方から前に出ていく形で、FKが蹴られた瞬間は5メートル地点にいようとする対応。つまり、キッカーのタイミングに合わせて思い切って前に出ることで、少しでもキッカーに近い位置でシュートコースを狭められる対応をするGKも出てきた。

これにより、キッカーのほうはまた成功率を下げてしまうことになるのだが、そんなGKたちの対応をものともせず、「第2PKキッカーの職人」といわれているのが、Fリーグ・ペスカドーラ町田の横江怜だ。彼は第2PKからのゴールが、他の選手に比べて圧倒的に多いことで知られている。

元々、日本人選手の中でもとりわけ強いキックができる選手で、ミドルシュートからのゴールも多い。したがって、横江は第2PKを「7割の力でコントロールして蹴る」という。7割でも十分な強さとスピードが出るからだ。

キックはコントロールの利くインサイドキックが多いと思う。助走はセンターサークル横あたりからと、かなり長め。そこからGKをよく見て、空いているコースに強いシュートを正確に流し込むのだ。

もちろんGKのほうも足を広げたり、手を動かしたりといろいろ対策するのだが、横江はそうした足の上とか、手の届かないところといった、「ボール一個分」のコントロールにこだわって、日々練習しているのだという。

そしてGKのほうにも、「第2PK職人」が出てきた。こちらは名古屋オーシャンズの定永久男だ。彼は現状、名古屋が第2PKを取られたときのみ、ピッチに出てくる。そして結構止める。ホームゲームでは彼の登場に合わせて、「必殺仕事人」のテーマが会場に流れるくらいだ。

実は横江対定永の第2PK対決が、結構見ものなのである。昨季は優勝を争った名古屋と町田だが、勝負どころの直接対決で、定永が横江の第2PKを見事ブロックする場面があった。

今季はちょうど先週に町田対名古屋のゲームがあり、前半終了間際、町田に第2PKのチャンスが訪れた。2人の今季初対決は、横江に軍配。左の高めのコースをきれいに突いて決めている。

2人の対決はまだまだ続くだろう。冒頭に書いたように、仮に今後第2PKの機会がさらに増えるのであれば、別の場所でも、この先印象に残るような名対決がたくさん出てくるのかもしれない。

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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