第7回 「ゴレイロ」

「ゴレイロ」…ゴールキーパーのこと。もちろんGK(ゴールキーパー)で通用するのだが、これまで本場ブラジルから多くのものを吸収してきた日本のフットサル界では、向こうの呼び名で「ゴレイロ」と呼ぶ人、表記するメディアが多い。まあ、サッカーとの区別を図る、ちょっとしたカッコつけでしょう。

日本の競技フットサル界の選手は、サッカーからの転向がほとんどだ。これまでいろんな競技フットサル選手に話を聞かせてもらったが、多くの選手が最初はサッカーとフットサルの違いに戸惑い、楽しくなり、のめり込んでいったと語る。

そして、ゴールキーパー(GK)の場合は、フィールドプレーヤー(FP)以上に大きな変化を感じるようだ。「GK」と「ゴレイロ」では、プレーの根本的な考えが違うようなのである。

スタンドから見ているだけでも、GKとゴレイロのプレーはまるで別物だ。いちばん目立つのは、ゴレイロはシュートを防ぐときに、上体が起きてピンと立っていることが多い点。サッカーのように球際に寝ながら飛び込むとか、横っ飛びでシュートをキャッチするような考えがフットサルにはない。

フットサルはゴールが小さいだけに、ゴール前に立っているだけで、ある程度のシュートコースを防げることになる。低く構えすぎたり、飛び込んで寝てしまったほうが、シュートコースが空いてしまうのだ。

ただ、狭いコースを狙ってくるシュートは、至近距離から打たれ、とても速い。キャッチは不可能と考えたほうがよく、下手に取ろうとしてこぼしてしまうと、相手に詰められてゴールされる危険もある。

そこで、フットサルのゴレイロでは、上体を起こして体全体で大きな「カベ」を作り、体のどこかにシュートを当ててブロックするという発想が出てきているようなのだ。ゴレイロはGKに比べて、シュートを足ではじくシーンが多いのもそのため。

だからフットサルで横っ飛びしているようなゴレイロを見ると、本格派は「ふふん」と鼻で笑うのである。

もっとも、先日見たサッカー番組では、GKの最新事情として、ドイツではもっと足を使ってシュートを防ごうとするトレーニングが、始まっていることが紹介されていた。

ハンドボールのGKから来ている発想なのだとか。このあたりも、最近ピッチのいろんな状況で見られるフットサルとサッカーの同化が、今後進んでいくのかもしれない。

もう一つ、ゴレイロといえば、「フットサルはゴレイロがゲームの50パーセントを決める」という格言である。先日、全日本フットサル選手権で大活躍し、FリーグでもMVPに輝いた、シュライカー大阪のイゴールを思い出せば納得だろう。

お互いのゴールが近く、シュートチャンスが生まれやすいフットサルで、ゴレイロがいかに決定的なピンチを防いでチームに貢献できるかは、とても重要だ。

加えて攻撃面。フットサルではゴレイロがチームの攻撃に加われるシーンがとても多い。これが、見ていても、プレーする立場からしても、楽しみな部分になっている。先の格言も、ゴレイロの攻撃面での貢献があってこそのものだろう。

ゴレイロの攻撃の代表的なものが、ペナルティーエリアを飛び出して味方の攻撃に加わる、パワープレーだ。自分が加わって5人でパスを回すことで、FP4人で対応する相手に対して数的優位を作って攻める。シュートチャンスが作りやすいといわれ、戦術が整備されてきた現在は、フットサルを特徴づけるプレーのひとつにもなっている。

またスローでも、相手ゴール前の味方に直接ボールを投げて、得点をアシストするプレーが可能だ。その昔、スローはノーバウンドでハーフラインを越えてはいけない制限があったが、現行のルールになったことで、スロー面でもそれまでに比べてゴレイロが攻撃面でできる要素が増えたのである。

ゴレイロは非常に多彩なプレーが要求される、魅力的なポジションだ。今後、子供たちにもっとフットサルが知られるようになってきたら、攻守両面で活躍できるゴレイロは、かなりの人気ポジションになるかもしれない。

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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