第6回 「ミニサッカー」

「ミニサッカー」…大意は「サッカースタイルのフットサル」。洗練されていないフットサルというネガティブな意味や、サッカーのいい部分を取り入れたフットサルというポジティブな意味など、いろいろなケースで使われてきた。日本の競技フットサル発展の歴史の、キーワードだ。


最近あまり聞かれなくなったのかもしれないが、「ミニサッカー」は、日本フットサルの流れを知るうえでは、大切なキーワードだ。

その昔、競技フットサルが盛り上がり始めたころの話だ。

フットサルならではの技術や動き、戦術などを駆使してプレーする先駆者的なチームがあったのに対し、まだフットサル経験が浅く、洗練されていないチームのプレーを、「あそこのチームは、フットサルではなくミニサッカーだ」などとして、区別する見方があった。

日本の競技フットサルは、ほぼ100パーセントがサッカーから流れてきた選手たちである。そういうサッカー選手たちが、地元つながり、高校つながり、大学つながりといったくくりで、チームを作ってフットサル大会に出たりした。だから当然、狭いコートでサッカーをするわけだ。

フットサル経験の少ない「ミニサッカー」の悪い特徴は、とかく無駄が多いことだった。パス、ドリブル、シュートにサッカーレベルでリスクをかけてしまうプレーが多く、それがうまくいかずに簡単に相手ボールになったり、逆襲を食らったりする。体力まかせにボールを奪いに行き、パスワークで簡単にいなされて疲れてしまう。動きのコツが分からず、なかなかいいポジションでボールを受けられず、常に相手を背負う状態で、ボールキープに四苦八苦する。

逆に個々のレベルが結構高いチームで、すぐに狭いコートでのプレーを感覚的に体得したところ。こうしたチームは強いフットサルチームともわりと勝負になったりして、「フットサル風に洗練されない」という意味で、むしろ「ミニサッカー」に固執する部分があった。スピードを生かした、引いて守ってのカウンターを主体にし、ダイレクトパスを駆使した崩しを狙う。攻守の切り替えを徹底したのも、この手のチームの特徴だろう。

こうして、いろいろな成功体験、失敗体験を経て、各チームの方向性が定まっていったところがある。県リーグクラスのローカルレベルでは、もしかしたら、こういう現象がまだ続いているのかもしれない。

時を経ていく中で、中途半端なミニサッカーチームはフットサルチームにこっぴどくやられて、フットサルをイチからはじめることになったり、ハイレベルなミニサッカーチームが、フットサルチームをやっつけたり、やられたりして、お互いがその対策を練ったりしていった。そうして、フットサルチームにもミニサッカーチームにも、お互いのいい部分が取り入れられるようになり、対戦するときの免疫もできてきた。

長らくプレーしてきたサッカーで、自然と身についた癖やスタイル。要は、フットサルになったときに、これらとどう向き合うのかが、個々の選手、各チームにとって、大事なことだったのだ。

Fリーグが始まると、各チームがっつりフットサルになった。中にはサッカー上がりの選手が、いきなりFリーガーにというケースもあった。しかし、豊富な練習量と情報、周囲の環境が、あっという間に彼らをフットサルプレーヤーに育ててしまった。

いつの間にか「ミニサッカー」は、僕の周りでは聞かれなくなった。

フットサル関係者にとって、次のターゲットはジュニア年代なのだろう。ここで競技フットサルと同じような流れが起きてほしいというのが、願いなのだと思う。

フットサルのプレーは、当然サッカーでもやるべきプレー。そこで程度の低いミニサッカーをやっていては、スモールコートの意味がない。フットサルをしっかりと体得し、将来、"スケールの大きなフットサル"であるサッカーで優位性を示すこと。そんな感じになることが、フットサル関係者の理想なんじゃないだろうか。

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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