第4回 「ファー詰め」

ファー詰め…ゴール前の場面で、味方のシュート、あるいはパスに対して、ファーサイドのポスト際に詰めて、ボールをゴールに押し込むプレー。フットサルの特性を利用する中で生まれた、独特のゴールシーンだ。

ファー詰めは、フットサルの特徴が凝縮された、独特のプレーだと思う。

例えば、右サイドから味方がシュートチャンスを迎えたとする。そうしたら、味方の1人は必ず相手ゴールのファーポスト際(この場合は左のポスト)へポジショニングするのが、フットサルの攻撃の鉄則だ。

幅3メートル、高さ2メートルと、小さいフットサルゴールは、GKが前に立ちはだかると、それだけで空いているシュートコースが狭くなってしまう。

そこでシュートチャンスを迎えた選手は、ゴールにシュートすると見せかけて、ファーサイドのゴール枠を外したコースへ、相手GKに触られないような速いパスを出す(このパスを「シュートパス」ということが多い)。

そして、予めファーポスト際にポジショニングしていたり、あるいはそのコースへ走り込んだ味方選手が、構えている相手GKの横、あるいは斜め後ろから、がら空きのゴールへボールを流し込むのだ。

サッカーの場合、このファー詰めはオフサイドになってしまうプレーだ。しかし、フットサルにはオフサイドがない。それだけに、予め相手の裏へ回って構えていてもいいし、相手より先に走り込んでシュートパスに合わせていい。

下手くそだけど、フットサルを楽しんでいるエンジョイレベル。より高いレベルを目指して真剣に取り組んでいる競技レベル。どのレベルにおいても、このファー詰めは、非常に効果的だ。

エンジョイレベルであれば、このファー詰めの鉄則を知っているだけでも、ワンデイ大会などでかなり得点力が違ってくるはず。

またチームに初心者を入れたり、女性を加えたミックスなどをやるときも、その人たちになるべく最前線でのファー詰めを徹底してもらい、その初心者や女性に得点の喜びを知ってもらうという手もある。

Fリーグなどのレベルでは、さすがに相当に余裕があるときでないと、予めファーポスト際に構えていられることはない。ポジショニングしていてもすぐに相手にマークされて、シュートパスが入ってくるコースを消されてしまうからだ。

そのため、シュートパスの瞬間に飛び出していって、走り込んでボールに合わせるというダイナミックなシーンが多く見られる。速いシュートパスに間に合うかどうかギリギリのことが多いから、思い切り足を伸ばしたスライディングで飛び込むこともしばしば。

たまにシュートパスのコントロールが狂って、相手GKにキャッチされているのに、その奥で味方選手がザザーっとスライディングしていることがある。一見何を関係ないところで滑っているのかと思われがちだが、これはパスが来るかどうかともかく、そのタイミングで飛び込まないと間に合わないからスライディングしたというシーンなのだ。

この「スライディングファー詰め」は、ペスカドーラ町田の7番、金山友紀の十八番だった。スピード豊かな金山が、同じ町田の5番、甲斐修侍のシュートパスに飛び込んでいって合わせる。町田の前身チーム、カスカヴェウで多くのゴールを生んだ、有名な黄金パターンだった。

Fリーグがスタートしてからは、以前ほどの頻度でファー詰めが決まっていないように見える。まずはディフェンス側の対応がよくなった。例えばスライディングファー詰めに対抗して、シュートパスをスライディングでブロックするようなプレーが見られるようになった。

また相手GKも、ファー詰めを予測してシュートパスをブロックするような対応が見られる。ただこれはGKが早く動きすぎると、その読みを外してシューターがシュートパスからニアサイドへのシュートに切り替えるやり返しもある。このあたりの駆け引きも面白い。

もう一つは、選手たちのシュート力が向上して、「シュートパス→ファー詰め→ゴール」という手段を選ばずに、多少遠目からでも直接ゴールを狙うシーンが増えていることもあるだろう。

しかし、Fリーグよりもっとレベルが高い相手の場合、そのシュートは簡単には入らないと考えたほうがいい。分かりやすいところでいえば、シュライカー大阪のスーパーGKイゴールとか。今、開催されている全日本フットサル選手権では、1次リーグ3試合で無失点を記録している。

そんなGKには、やはりファー詰めが有効だと思うのだ。GKと2対1で勝負し、手数をかけてゴールをこじ開ける。日本人に合っていて、僕は結構好きなのである。

 

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
目次へ