第3回 「全日本フットサル選手権」


全日本フットサル選手権…今年で15回目を迎える、フットサル日本一を決めるオープン大会。フットサル界では「全日本選手権」とか、「全日本」といわれる。今年は都道府県そして地域の予選を勝ち抜いたチームと、Fリーグチームを加えた合計24チームが、3月5日より行われる本大会に出場。優勝を争う。


Fリーグ誕生前。全日本フットサル選手権は、長い間競技フットサルプレーヤーの「絶対的な目標」であり続けた。

何といっても、年に1度しかない、日本一決定戦だったのだ。

ご存知のように、2001年からは「フットサル地域チャンピオンズリーグ」という、各地域の上位チームを集めた全国大会も行われている。しかし、より古くからあった全日本選手権のほうに、関係者の注目、観客も集まった。

それだけに、ここでの勝った負けたは、普段のリーグ戦以上のインパクトや影響を、フットサル界に与えるようなのだ。それは今も感じる傾向で、それだけに、選手たちはものすごく必死なのである。プレー中の喜怒哀楽は、常に普段の5割増し。1プレーが切れるごとに何かしらのリアクションが起こるテンションの高さは、ちょっと半端ではない。

トップレベルの選手たちは、この大会での活躍にすべてを注いでいた。仕事や家庭、いろいろなものを犠牲にしなければ、トップレベルでプレーできない。そんな、まさに情熱だけでやっていた自分の「熱さ」を、多くの人に認めてもらう絶好の機会なのだ。

しかし、大会は一発勝負のトーナメント形式中心だ。ゆえに弱者が思い切ってその力をぶつけ、強者は慎重になって受け身になる。予選レベルからのジャイアントキリングも少なくない。「○○が○○に勝った!」「○○が負けた!」。そんな情報が素早く駆け回るのも、この大会の面白さだ。

また、大会の歴史を振り返ると、競技フットサルの普及度合いが見て取れる。

大会がスタートした当初は、参加チームのほとんどがサッカーチームだった。競技フットサルチームの出場は、関東や関西などごくわずか。そしてそのわずかなチームの中の1つだったFIRE FOXが優勝する時代だった。少ない出場枠を争って、競技フットサルチームがしのぎを削っていた東京都予選や、関東予選のほうが確実に熱かった。

だが、全国の舞台で競技フットサルチームの洗礼を受けた後に、全国各地から徐々にフットサルに本格的に取り組むチームが、本大会に出てくるようになる。さすがに最初は「本気」のチーム自体が少なく、毎回同じチームが全国に出てくる地域もあったが、最近では出場チームが毎回違うなど、予選が熱くなっている地域もだいぶ多くなってきた。

Fリーグが始まってからは、Fリーグ勢と地域リーグ勢の格差が見られるようになってきた。やはり、戦力やフィジカル面、戦い方の引き出しの多さといったところで、プレー環境が整っているFリーグ勢が有利である。

一方で地域のチームには、「Fリーグチームに相手に自分がどれくらいやれるのか」という、力試しの傾向が強くなってきている。それだけに昨年、ガチンコで勝ちにいって、見事な優勝を遂げたFUGAの活躍が、余計に際立って見える。

その昨年の決勝後、「異常に悔しい」と語った、名古屋・木暮賢一郎のコメントが印象的だった。「今日に関してはFUGAが強かったし、称えたい。多くの人に夢も与えたでしょう。ただ、日本のフットサルが世界との差を縮めるためには、気持ち一つで勝てるようなサプライズがあってはならない。強いチームは強いといわれるよう、内容も結果も出せるようにしたい」。強烈な負け惜しみなのだが、そんなインパクトあるコメントが出てくるのも、全日本ならでは。

優勝するチームには、端から見ていてうらやましくなるほどの、チームの一体感がある。勝って泣き、負けて泣く。悲喜こもごもの、あの興奮度合いが、僕は大好きだ。

さて、今年の大会は、昨年の決勝を戦った2チームが本大会に出場しない。優勝したFUGAは関東予選で惜しくも敗れた。既に全日本ならではの事件は起きているのだ。また、準優勝だった名古屋は、アジアクラブ選手権出場のため欠場する。

両者の再決戦を見たかったファンはかなり残念だろうが、その分、今回は未だかつてない混戦の展開が予想されている。

いつものように、きっと「今年は○○な大会だった」というような、印象的な出来事が起こるに違いない。それが全日本フットサル選手権だ。

プロフィール
菊地芳樹(きくち・よしき)
1971年7月22日生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、学研に入社。サッカー雑誌、ゴルフ雑誌の編集記者を経てフリーに。現在は、サッカー雑誌「ストライカーDX」の編集スタッフとして働きつつ、他雑誌にもフットサルを中心に原稿を書いている。フットサルは90年代半ばより興味を持って取材し始め、これまで各媒体に原稿を書き、実用書も多く手がけてきた。フットサルの永続的な普及・発展に貢献したく、初心者からリピーター・マニアへの橋渡し役としての立ち位置を意識しています。
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