第1回 「足裏」
足裏…足の裏。フットサルで、トラップやドリブル時のボールタッチで、頻繁に使われる部位。
これまで多くのフットサルの選手に話を聞く機会をいただいたが、その人のプロフィールを知るためにも、各選手がフットサルを始めたころの話を聞くのが定番になっている。ほとんどの人がサッカー選手から転向する中、始めたころのフットサルの印象として「やはり、サッカーとは全然違いますよね。足裏をよく使ったり……」といった感想が、必ず出てくる。
足裏はプレー面でも観戦面でも、最も気になり、最も目につくフットサルの特徴だ。そして、「なぜ、足裏なのか」ということについては、ちょっとしたウンチクの歴史がある。
フットサルはコートが狭いので、自分をマークしてくる相手の距離が近い。そんな中でトラップの際にボールを足元から離すと、すぐにつつかれたり奪われたりしてしまう。
そこで、足裏で体からボールを離さずに止める。そうすれば仮に相手が寄せてきても、体を入れてキープでき、ボールを奪われない。また、足裏でずっとボールに触れている状態なので、足元を見ずにボールの位置が分かるから、その分顔を上げて状況を確認でき、次のプレーがしやすくなる。
最初のころは、フットサルの先達からそう教わったものだ。
加えて、自分の体験としては、あの足の下にボールがピタッと吸い付くように止まってくれる感覚が、何とも心地よかった。だからフットサルを始めてからすぐに、足裏を受け入れ、多用することができた。それに、後ろへ抜けないように、ツマ先を立てて足裏でボールを受ける面を作り、ストップさせる行為。これはサッカー経験のない初心者にとっても、インサイドでボールをコントロールするより簡単だと思ったものだ。
ここから足裏に対する解釈は、少しずつ進化することになる。まず、何が何でも足裏でコントロールしなければいけないという、「足裏至上主義」と、それをバカにして足裏を無理にでも使わない、「足裏排斥主義」の対立。
これは、プレーの主戦場が人工芝なのか、床なのかでも、感想が違うのではないかと思われる。人工芝のピッチでは、インサイドでもボールが止まりやすく、それほど足裏の必要性を感じることがなかったりするのだ。これに対して体育館の床などでは、足裏以外のコントロールだと、ボールが妙に滑ったり、逆に引っかかったりで、大変折り合いが悪いことが多い。
まあ、ゲーム中では当然、インサイドなどでスペースにボールを運ぶトラップをする場面も多々あるので、足元に止めるケースやボールを運ぶケースで、コントロールの部位を臨機応変に使い分ければいいだけの話だった。でも、一般レベルでは結構な議論になることもあったのだ。
時が経ち、競技レベルを中心にフットサルが高速化してくると、もはや「足裏じゃなければ、ボールが止まらない」という言葉がよく聞かれるようになった。パスを受けるときに、常に動きが伴うケースが非常に大きくなったのだ。マークを一瞬外して速く動きながら、すごく速いパスを受け、正確にコントロールしながら意図した場所へ動く。
パス回しの中でこうしたプレーが求められ始めたとき、インサイドコントロールの難しさは、もう極まってしまった。
「その場に止まることをせず、動きながらボールを止め、パスを出していく。その連続の中で、サッカーならスペースがあり、ワンプレーの動く距離も長いので、インサイドでコントロールする。だけど、フットサルは同じことをもっと短い距離感でやらないといけない。その調整機能として、足裏があるんです」
そう教えてくれたのは、現在、ペスカドーラ町田でプレーしている甲斐修侍だった。彼はフットサルが高速化する、かなり前にこうした解釈を述べていて、その分析力の高さにはいつも驚かされる。
Fリーグが始まり、足裏の技術はまたさらにレベルアップしている。僕が見ていて感心するのは、走り込みながら受けるボールを横や斜めにコントロールするプレーだ。
動きながらでも、ボールを体の正面にコントロールしたり、真後ろにコントロールしながらターンして後ろを向くというのは、結構できるものだ。ただ、足裏でボールの勢いを吸収しつつ、体の横や斜めに運んでいくコントロールは、正確性の面などで非常に難しいと思う。
例えば、左前の前線の選手がマークを外して、中央のスペースに下りてきて、後方からの速いパスを引き出し、斜めにコントロールしながら、そのまま下りてきたのとは逆サイドの右前へ抜けていこうとするプレー。そんなプレーをイメージしてほしい。そのダイナミックな動きと、繊細な技術に、「これは自分にはできないな」と素直に尊敬してしまうのだ。
今回はコントロール面のみの話だが、ドリブル面でも足裏技術は多様化。今後さらに進化しそうな気配でもある。フットサルの代名詞でもある「足裏」。次のプレー機会、観戦機会に今一度意識してみるのはどうだろう?
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